Polaris
【音を聞かせて】
ちょっと切ないかな?
ギター
夕闇
放課後
鳴上くんがメロメロです(笑)
いってらっしゃいませ♪
八十神高校、2年2組の教室。
今の時間帯は放課後といっていいくらいの時間。
窓からオレンジ色の採光が差し込む中、
聞こえてくるのは生徒の話し声ではなく
ギターの音色だった。
どこかで聞いたような曲。
曲名や歌詞を思い出せはしないけれど、
切なくて、でもとても心地よくて
暖かい感触がした。
「陽介…上手いな」
「え?マジ?やった!嬉しいな、お前に褒められると」
「そうか?」
特技の話しになって、花村が軽音部からギターを借りた。
自分のものではない為、少しだけ弾き辛そうだったが、
本当に特技だったのだろう、直ぐに慣れて
弦楽器特有の切なくも軽やかな旋律が
二人きりの教室に響く。
心の琴線に触れるというやつだ…
そう思う。
「嬉しいって…いっつもお前には勝てないからさー」
そういって少し悔しそうにするけれど、
勝ててないなんて気のせいだよ、陽介。
俺が一番わかってる。
楽しそうに奏でる姿が眩しくて
上手く目が開けられない。
それでも見ていたくて、
俺は必死で陽介を見つめた。
…ああ………渇望するってこういうことか。
「♪~♪♪~♪~~」
陽介が爪弾く弦の響きが
震えるくらい愛しくて仕方ない。
なんかもう、全てを奪いたくなるよ…陽介。
楽しそうに指が弦を走って
俺の知らない音を奏でてる。
乾きを覚えるくらいに
ソレは俺にとって愛しくて堪らなかった。
その音色に俺の足元はふわふわと心許なくなって、
いっそこのままお前の一部になって溶け込みたいくらいに
乱されて、満たされた。
「悠は?」
「うーん…音楽か…授業以外ではないな」
「へーお前上手そうなのにな」
そう言って目を細めて笑う。
太陽みたいだ。
その姿に更に目が離せなくなって、
誤魔化すように机に頬杖をついた。
そんな俺が気になったのか、
様子を伺うように聞いてくる。
「悠?…そうしてて楽しいか?」
「ああ…楽しいよ」
お前といればどこだって楽しい。
息をするのも面倒なくらい幸せで仕方ない。
「そっか……」
「ん?」
「お前が楽しいなら、俺も楽しいかも…」
「…………………」
陽介…それは反則だ。
切ない音色が全部掻き消されるくらいに、
俺の中身は動揺した。
それをなんとか誤魔化して
音色に耳を傾けるけれど、
俺はどこか気もそぞろで。
ああ…もう…仕方ないな。
そう、心の中で呟いて立ち上がる。
少しだけ離れた所に座っていた陽介の傍へと
ゆっくりと距離を詰め、そのまま陽介の背中へと
もたれ掛かるように腰掛けた。
「へ?な、なに??」
「陽介の補給」
「は!?い、いつも一緒にいるだろ!」
「ダメ…たまに足りない時あるから…
満たされるまで付き合って。」
「み、満たされる?????」
そんなことを笑顔で囁いたら
陽介はそれ以上動かなくなった。
「続き…弾いて、陽介」
甘えるような俺の様子を感じて、
陽介は花が咲く様に笑うと言った。
「っ…バカ…しかたねえな…」
そう言ってまた弾き出した。
ひとつ、ふたつ、みっつ…音に合わせて呼吸をする。
数える音色が俺を深くまどろませた。
「陽介は優しいな…付け入りたくなるよ」
「ば、バカ!!調子乗んな!!」
陽介が真っ赤になって叫ぶと、
俺はこれ以上ないくらいに
自然と柔らかく笑ってしまう。
ああ、やっぱり…俺はお前にこれ以上無いくらい
依存しきってしまっているんだな。
だめだよな…陽介…。
「好きだよ…陽介」
「へ?!」
俺から囁かれた言葉に、
陽介が弾かれるように飛び上がった。
「い、いまなんか言ったか?」
「二度は言わない」
「マジで?」
「マジで」
俺がにやりと笑うと、
陽介は少しだけふて腐れた表情で
座り直した。
「ちぇ…」
「……………」
本当に、お前は可愛い。
再び陽介が指を滑らせ
ふて腐れながらも、続きを弾いてくれた。
よっつ、いつつ、むっつ、やっつ…
俺の呼吸とお前の音が溶け込む。
それは心地よすぎて目が眩む感覚。
もう数えるのも惜しいくらいに。
外を見ると、夕闇が迫ってきていて
不思議な感覚を覚えた。
ずっとこうしていたいよ。
陽介。
陽介から与えられる
背中のぬくもりが嬉しい。
ゆっくり俺は目を閉じた。
どうか今夜は夢でもお前に逢えますように。
Fin
だらだら長くてすみません;;
こういうの好きでついつい書いちゃう;;;
私の中では陽介が弾くのは
DEPAPEPEの『半月』とかイメージなんですが(苦笑)
皆様はお好きな曲をどうぞ♪
楽しんで頂けましたら倖い。