忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

P4主花【君の壊れる音(15)】

【シャドウ陽介視点】本体たちから遠く離れた場所。
シャドウ陽介は、とある人物を探していたが……。

時間かかり過ぎてホントすみません;
今回で色々なことが分かる…そんな回。




拍手[1回]



真っ黒な空間の中、白い支柱に支えられた円形の建造物。
白い大理石の様な石で出来たエクステリア。
ここは自分が誰が何者なのかと問われる場所。

静まり返ったその場所にいたのは
花村陽介のシャドウだった。

冷たい感触の柱に手で触れて
辺りを見回し落胆し唸る。

『まだ出て来てねーのかよ……なんでっ…』

イライラしてどうしようもない。
奥歯をギリギリと音を立てて噛みしめると
一つの疑問が浮かんだ。

『にしても……』

あのシャドウ……完全に偽物だった。
偽物のくせに散々引っ掻き回してくれやがって!

『鳴上の本体に害が及べば、シャドウとして何か反応するんじゃないかって
 思ってやったのにっ…ああーーくそっ! これじゃ全然っ意味ねーじゃん!』

元より計画とか細かいことは得意なワケじゃないけれど、
こんなにも裏目裏目に出て、何の成果も得られないとは…。

『デカい声で告白までさせられて…………なんなんだよ、もう~~~』

大真面目に芝居も打って…
(まぁ、キレて戦ったのは半分?本気だったけど…)
それさえ自分の本体にひっくり返されて。

『くそ…くそ……っ…全部あいつが引きこもってんのが悪い!』

そもそもアレ聞いてたんじゃねーの?
それでも出てこないなんて…。

イラついて髪をかき上げると途端、上から声がした。
俺は真上を見上げ、目を痛いくらいに見開く。
聞き覚えのある声、これは……。

『あいつ、あっちにいるのか……っ!?』

上へと声を上げると走り出す。
すると手を伸ばし落ちるような、駆け上がる様な
そんなどちらとも分からない不確かな感覚が体を包んだ。

『な?! なんだこれ……っ』

深くて重たい霧が体を覆う。

その途端、向かっていた方向とは全く別の場所へと
無理やりに落とされた。








『だっ…いてぇーケツ割れたぁぁーー! って、どこだココ!?』

尻から落ちたその場所。

硬い地面に赤い空は先程通り……
辺りを見回すけれど、目的の人はいなかった。

しかし、鼻孔へと突如侵入してきた血の匂いに
目をしかめそちらへと目をやると、
赤く染まったその場に鳴上悠の“本体”が倒れていた。

『お、おい! 大丈夫か!?』
「う…………陽介…のシャドウか…」
『ああ、どーなってんだ?』

腹部を何か鋭利なもので深く貫かれてかなりの出血をしている。
俺が駆け寄り、彼の体を起こしてやると
傷口が痛々しく裂け口を晒していた。

十分致命傷であるソレは、どうやらペルソナを召喚しているせいで
ギリギリのところで鳴上の命を保っているようだった。

でも、肝心の力は使えない……か。

それはそうだ、今は中身がいないのだから。

ただよくもまぁ、この状態から“いないはず”の
力を呼び出し延命に使おうとしたと感心する。

こういう底力みたいなのがコイツの強さだよなー……。
ホント、やっぱお前はスゲー……。

その姿が誇らしくてちょっとニヤついてしまうけれど、
それをなんとか隠し、俺はわざと不貞腐れた声色で言った。

『悪ぃが、ディアしか出来ねえから。傷が塞がる程度の回復だからな?』
「ああ、それで十分だ……っ…ありがとう」

咄嗟にディアで回復を試みる俺に
鳴上は柔らかい笑顔で呑気にも礼を言ってくるから
こそばゆくて声を上げた。

『へっ…礼なんて言ってる暇あんのかよ?』

その様子だと只ならぬ状況になっているのだろう? と
ワザとらしく皮肉まじりに言ってやったら、普段見せたことも無い
焦った表情で奥歯を噛みしめる鳴上がいた。

「ああ、早く陽介の所へといかないと…っ…嫌な予感がする」
「え?」

俺の本体? そう言えばここにいない……。
俺はハっとして鳴上を見ると、鳴上は奥歯を噛みしめ
その目は怖気が走るほど怒りがほとばしっている。
鳴上は静かだが、怒気の篭った声で唸ると言った。

「シャドウにやられた……陽介が連れて行かれた……」
『シャドウ? ああ……あの偽物か…』
「偽物?…偽物だったのか…そうか、まぁなんでもいい……」
『え? な、なんでもいいって??』
「ただじゃおかない……必ず…」
『ちょ、ちょっと鳴上さーん…お、落ち着いて下さーい……っ』

憤怒の形相。
それはいつものスっとした様子からは
想像も出来ないほどに恐ろしくて。
俺は自分へと向けられている怒気でないのに
その恐ろしさに思わず後ずさりする。

ああ…怖い怖い…こういうタイプは怒ると怖い。
冷や汗が大量に噴出するのを背筋に感じつつ
俺は脳内で独り言ちる。

ただじゃおかない…か…
それは俺が探しているアイツにも言ってやりたい。


ずっと探していたんだ。

鳴上悠の本体の様子がおかしいと
俺の本体が感じ取っていたころから
急にヤツの気配が遠くなっていた。

そしてこの騒ぎが始まった時からだ、
完全に気配がかき消えてしまったのは。

先程やっと探し出せたと思い、
俺は、まっすぐヤツの元へと進んでた筈だった。
なのに…………。

アイツ、俺を拒否りやがった! 一発ぶん殴ってやる!

『俺が言ってやりてーっつの! くそ……っ』
「どうした?」
『な、なんでもねぇ……』

こんな回りくどい手を使ってまで
探していたというのに、また消えてしまったのだ。

いや、今回は消えたというより、
逃げられたというのに近いが……。
え? いや…もしかして最初から逃げられていたのか??

俺は混乱しつつも握りこぶしを作り
奥歯をギリギリと噛みしめていると、
目の前の鳴上が突然噴き出し笑い始めた。

『な、なにがおかしい!』
「いや、陽介もまったく同じことしそうだな…って」
『そ、そりゃ……』

お互いに『花村陽介』なんだし、当たりまえじゃんか……。
何言ってんだ?コイツ……こういう変なとこで余裕なのが
ホント、コイツらしいとゆーか…。

「やっぱり、陽介はすごいよ……」
『は? なに言ってくれちゃってんの、お前?』

その突然の言葉に、俺が理解出来ない目つきで彼を見ると、
鳴上は苦笑しながらも自らに言い聞かせるみたいに声を出す。

「自分の中の否定したい部分を受け入れるって怖いことだ」
『そ、そりゃ……それに、あの時の本体…花村陽介にはお前がいたじゃん?』
「いたけど……そういうのって自分の中の強さもあるんだと思うんだ」
『そ、そっか??』

いまでも消し去りたいくらいの
あの時の記憶にはコイツが隣にいてくれて
まっすぐ手を引いてくれた思い出が強い。

心強かったんだ…正直言って。


いまだって自分の中の強さなんて、全然見つけられなくて
迷ってばかりで、どうしようもない。

毎日が苦しくて、毎日が大変で。
毎日うまくいかなくて、凹んで・怒って・自己嫌悪して。
まるで果てしない迷路の様に、ぐるぐると堂々巡りで。

最終的に後悔ばかりが襲って来て、
何度も自分を嫌いになる。

俺達はそんな感情から生まれた存在だから、
つらいとか苦しいとか悲しいとか、そんな感情で全部が出来ている。

でもだからこそ、それはやっぱり嫌で嫌で仕方ないのだ。

「俺には無い強さだ……」
『そ、そんなことねーだろっ』
「ある。だから、やっぱりすごいお前は……」
『ほ、褒めんな……お前に褒められると、なんかソワソワする…っ』
「はは……だからさ、きっと逃げているんだよ。あいつは」
『え?』
「ここまで来て往生際が悪い、すごくみっともない……アレが俺の本音とはね」

そう言って吐き捨てた姿が
いま逃げているアイツにダブって見えた。
本人なんだからダブって見えるのは
仕方ないんだけど……。

『お、おま……バカ!』
「痛っ……」

こうして俺達を導いてくれたお前が
そんなんでどうするんだ?
俺は鳴上の額を軽く小突くと、視線を合わせる。

『みっともなくて当たり前。アレはお前の本音なんだろ?』
「陽介……?」
『俺だってこんな俺は嫌だけど、他ならぬお前が
 頑張ってくれちゃったからこうしてここにいるんじゃんか』
「……」
『こうしていられるのはお前のおかげなんだし……だったらみっともないお前も、
 俺の為に頑張ってくれちゃったカッコいいお前も、お前の一部なんだし……っ』
「うん……」

俺達はつらいとか苦しいとか悲しいとか、
そんな感情で全部が出来ている。

嫌で嫌で仕方ないけれど、けれど……それを否定してしまったら
自分の全部も否定しなくてはならない。

楽しいとか、嬉しいとか、そういう喜ばしい感情と
それらは表裏一体であったから。

『だ、だから……俺はそーいうお前が好……って、何笑ってんだ!?
 おま……お、俺の話ちゃんと聞いてましたか??』
「聞いてた……すごく頭に響きました。」
『ぐ……う、ううぅぅ……なんか超ハズい……っ』
「はいはい、続けて続けて~~」
『だーー! っるっせー!』

ニヤニヤしながら嬉しそうに続きを促す鳴上。
ちぇ…なんだよ急に、調子取り戻しやがって!

でもそんな様子がちょっとだけ嬉しかったせいか、
俺は気を取り直し最後まで言葉にした。

『だ、だーかーら! そんなお前も俺は…す、好きだから…っ…
 他ならぬ俺が、そんなお前を肯定してやっから…』
「うん……」
『だから、ちゃんと迎えにいこう? お前を』
「ああ……そうだな。他ならぬ、陽介の為にもな」
『お、おう……分かってくれたならよかった…うぅぅ…やっぱハズい……っ』

俺が気恥ずかしさと、いたたまれなさに身悶えしていると、
鳴上悠は俺の隣でゆっくりと顔を上げ先程とは違うすがすがしい表情で
目を見開き突然前を指差した。

「多分、アレで行けるハズだ」
『え?』

指差した先には、空間のひずみの様なものが見えていた。
ひずみの周り、黒い泡の様なものが見える。
それはよく見ると細かいシャドウの集まりだった。

あそこに入ろうというのか?
あの得体のしれない穴に?

俺は見た目だけでもダメ
(シャドウの集まりがGに似てる……)
そうな穴を見て悲鳴に似た声を上げる。

『お、おいおい! 冗談だろ!?
 あんなどこに繋がってるかわかんねー先なんて…っ』
「さっき、陽介とシャドウが入って行ったんだ、だから大丈夫だ」
『だ、大丈夫って……っ』

だからって今だって同じ場所に繋がってるとは限らないだろ?
それにこの先に何があるか分からないのに…。

俺が止めようと必死になって体を抑えているのに
それを振り切る様に立ち上がり前へと出た鳴上の本体は、
見たことも無い様なギラギラとした目で俺を見て言った。

「あの先に陽介がいる、恐らくあいつも……早くいかないと」
『わ、わかった……』

俺は鳴上の体を支え、ひずみ近くまで近寄ると
恐る恐る手を伸ばす。

『じゃ、じゃあ、行くぞ??』
「ああ……」

二人同時に手を伸ばし
ひずみへと触れると一気に引っ張られる。

勢いよく吸い込まれる様な感覚の後、
俺の視界は白く染まった。






赤い空の下。
鳴上悠のシャドウは
瞳孔の奥を妖しく光らせ声を出す。

『陽介だけはダメだって言っただろう?』

響いた声は確かに悠の声なのに、
その瞳は見つめただけで取り殺されてしまいそうで。

恐怖そのものの気配に似た、目を背けてしまいたくなるほどの
不吉な金色の輝きに俺は息を飲んだ。

『く………お、お前も同じシャドウなのに……っ』
『同じ? そうか、お前にはそう見えるか』

ニヤリと笑う。
その笑みに一瞬シャドウが怯んだ隙を狙って、
何の躊躇もなく、刺した刀に更に力を入れると
鈍い音を立てて鍔元まで突き刺した。

『ガ……!?』
『ダメだ。陽介に手を出すのだけはダメだ。
 言っただろう? ちゃんと約束したのに……悪い子だ』

そう言って睨み付ける姿は
溢れるほどの悦びと狂気を孕んでいて。

偽シャドウから血の代わりにながれる
黒い影を体全体で浴びながら狂った様に笑う。

『淡い夢みて外に出たいって
 気持ちは分からないでもないけれど……陽介はダメだよ』
「そ、外に出たい?」

外? どういうことだ?
俺が驚き悠のシャドウへと問いかけると、
優しくて冷たい笑顔の悠のシャドウが笑いながら答えてくれる。

『うん、クマを見て外に出られるかもって思ったんだって。馬鹿だよね』
「それって……」
『本当に笑ってしまう……俺たちだってここから出ることなんて出来ないのに」
「え……?」

俺が言葉を出せずにいると、、
笑ったまま悠のシャドウが続けて言った。

『コイツらってたくさんのシャドウの集まりらしいよ……
 ここは暗くて悲しくて冷たくて辛いばかりだから逃げたいんだって』
「暗くて悲しくて冷たくて辛い…………」
『どこに逃げても同じなのにね……最初の最初に自分自身から逃げたくせに』
「っ……」
『自分から逃げておいて、本当に酷い話だ……』
「……悠?」
『本当に酷い……』

そう言って俯いた悠のシャドウ。
その仕草を、俺はどこかで見た気がした。

あれは、確か……。

思考が彷徨う直前、俺の背後から
聞き覚えのある声が聞こえて来た。

『お、俺は出られたぞ!』
「じ、ジライヤ…っ…それに、悠!?」
「陽介……っ!」

暗闇を抜けて飛び出してきた姿を見て、
俺は思わずその名前を叫んだ。






to the next…

PR

ペルソナ関連検索サイト様★


ペルソナ・サーチ!

MEGATEN WEB SEARCH

公式サイト


コミックマーケット公式サイト

赤ブーブー通信社公式ウェブサイト

『Persona4 the ANIMATION』


TVアニメ「ペルソナ4」

pixiv


pixiv

プロフィール

HN:
欟村縹(つきむらはなだ)
HP:
性別:
非公開
趣味:
萌え
自己紹介:
とりあえず、色々ダメな人。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

バーコード

ブログ内検索

カウンター

ASP