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【君の壊れる音(14)】

【陽介視点】
鳴上から引き離され、別の場所へと連れ去られた花村。
鳴上のシャドウが語る内容とは? 

時間かかってて&短くてスミマセン;





拍手[2回]









「一緒に?」
『そう、一緒にここにいられれば何も苦しいことはないよ?』
「苦しいこと?」

連れて来られた空間。
先程いた場所とさほど変わらない様子ではあったけれど、
なぜだか一層の息苦しさを感じる。

辺りを気にする俺を咎めるわけでもなく、
半歩下がった位置で彼はまるで演説でも歌う様に
俺へと語り掛けて来る。

『悲しいこともないし、別れたりすることもない 』
「……」
『陽介が心配してることは全部ないんだ。』

甘言だと、思った。
この感覚を俺は知ってる。

分かったように甘いことを吐きながら、
実は全部を狙ってきている。

標的の欲しいものや、望んだ形を熟知していて、
それが簡単には叶わないことを知っていながら
まるで全部を肯定するように、空々しく歌って見せるんだ。

欲しいだろう? あげるよって。
だから、お前の全部を頂戴って。

欲しいモノは天を仰いだって落ちてくるわけでもなく、
奇跡を願ったって何もしなければ叶わないのに。

『だからずっと一緒にいよう?』
「……」

なのに、いつも流されるまま流されて、
甘くて深い沼の底を覗き込み
そこへと手を伸ばすことを止められない。

本当に欲しいものだから、やめられない。
ホント、良くできたシステムだ。


「はは……それって死ぬってことじゃんか」
『あー…まぁ、近いかもね……』
「苦しいこと……ね」

沼の底。
沈んでみれば分かる。

そこには何もない。
充実で満たされることも、幸福も
喜びや楽しみさえもない。

ただ、自ら望んで深く沈んだ姿が、
みすぼらしく映し出されるだけ。

沈む前の苦しみが、懐かしく羨ましくて
あの苦しみの日々が喜びに溢れていたように思い出され
どうしようもなくそこへと戻りたくなるだけなんだ。

だって、その苦しみと喜びとやらに溢れた雑多な世界こそが
俺の本当の居場所だったんだから。



「お前、誰だ?」
『何を言ってるんだ? 鳴上悠のシャドウだよ?』
「いや、悠はそんなこと言わねーんだよ」

「おかしいと思ったんだ」と俺が呟くと
シャドウは手を広げてこちらを見ながら苦笑する。

「……そうかな? でも俺はシャドウだから」
「言わない。絶対に……俺が本当に欲しい言葉なんて、悠は絶対言ってくれない」
『そうなのか? ずいぶん酷いヤツだな……』
「……そーかもな…」

手を引いてくれた、あの日のことを俺はいまでも忘れていない。
隣に立って笑ってくれた喜びを俺は忘れられないどころか
何度も何度も思い出す。

どんなことがあってもこれからずっと、
悠との日々を忘れることはないだろう。

揺らぐ決心を支える為に、もう絶対に沈まないと、
思いを唱え続ける様に俺はあの姿を思い出し繰り返す。

悠の姿に俺は支えられてる。
悠が悠でいてくれるから立っていられる。

「俺がすげー望んでて、どんなに欲しがったとしても
 悠はそんなこと言わねーの……そーいうヤツなんだよ。」
「……」

俺の言葉を聞いて何を思ったのか
先程まで饒舌だったのがピタリと止んだ。
俺は眼前のシャドウを見据えたまま声を絞り出す。

「悠は俺の先ことちゃんと考えてくれてるから、
 一時の迷いが生んだ様な、身勝手な幸せで俺を縛ろうなんてしない」

どんなに自分が苦しかったとしてもだ。

今ならわかる。
だからアイツはあの時、あんなことを言ったんだ。
『望んだ答えは貰えない』なんて。


「俺はそんな悠が好きだから一緒にいたいんだ……っ」

望む答えも、夢見る未来も
全部叶えるのはやっぱり難しい。

でも、甘い沼の底に手を伸ばせば、
天になんて永遠に届かないんだ。

だからこそ、悠は淡い期待や不確かな状態で
俺を縛ろうとなんてしない。

自分がどんなに苦しくったって、
どんなに望んでたって悠は絶対そうする。

それが悠の優しさとか生き方ってヤツで。
俺はやっぱりそこがいいから好きになったんだって。

「だから、俺が望んでる様な欲望だらけのだらしない答えなんか、
 例えシャドウだって悠がくれるわけねーんだよ!」
「…………」

俺が笑顔で過ごせる日々や未来を
悠は守りたくて自分を隠していて。

俺の方は、悠に向けてずっと抱えてた感情が
何を示すのかわからないまま、
無意識に悠を追いかけてた。

そんな俺達の気持ちと時間の全部を否定するみたいな
目の前の存在が、悠の姿をして当たり前の様に笑っているから
俺は怒りで振り切れそうになる。


「お前誰だ!? 悠の姿をしたお前誰だなんだ!
 その姿、俺の許可なく勝手に使いやがって! 一発ぶん殴ってやる!」

ギリギリと合わせた歯列が軋む音が聞こえる。
目の前の悠の姿をした何かがニヤリと不気味に微笑むと、
呆れた様な声色で俺の神経を撫でた。

『交渉決裂か……大人しくしていれば、好きな夢の中で取り殺してあげたのに』
「っるせーー! お前が悠じゃねーならカンケーねーんだ!」

そうだ、コイツ倒して早く悠の所に帰らないと。
きっともうすぐペルソナが使えるようになる。

俺は握った苦無を腰だめに構えると、
目の前の対象を睨み付けた。

『まぁ、このままキミを殺してしまえばそれでいいのか……』
「やれるもんなら、やってみろ…!」

そういうと、シャドウの手の平から火球が飛び出し
俺の眼前へと降り注ぐ。

まだペルソナを召喚出来ない俺は必死で逃げ回り
反撃のチャンスをうかがうけれど、攻撃の手が緩むことは無い。

「くそ……っ…ジライヤっ…出てこいって!」

転がる様に逃げ回ると、まるで生きているかのように
火球が追いかけて来て俺を襲ってくる。

「うわっ……熱っ……って、くそーー!」

相変わらずしつこく追いかけて来る。
全速力で逃げるけれど、追いかけて来る火球に
襟足の毛先がチリチリと燃えた匂いがした。

「どうああああっ……しつけーっつーの!」
『よく逃げる……な』

降り注ぐ火球に行く手を塞がれ立ち止った時だった。
後方からぬるりと這い寄る様な気配がする。

『……キミ、やっぱり早いね。でもダメだな』
「く…っ…」

いつの間に追いつかれたのか。
逃げ道を塞がれ、さらに火球にも追いつかれた俺が
直撃を食らうと恐怖し、目を閉じた瞬間だった。

『いや、違う。お前だ……お前のそれがダメだ』
「え? なに!?」
『がっ……!?』

シャドウに向けて刀が突き立てられ
ソレが肩口から貫通する。

シャドウの後ろにもう一人。

同じ悠の姿をした人影が立って、
手に構えた刀でシャドウの肩口を突き刺していた。

『キミは……っ』
『アレの痛む様子が見たくて少し見ていたけれど……これはダメだ』
「悠のシャドウ? ふ、二人目ぇ!?」

目の前に現れた二人目の悠のシャドウ?は、
怖気が走るほどの綺麗な笑顔で俺へと微笑んだ。

新たに表れたシャドウは、自らが刺したシャドウから溢れる
黒い液体を浴びて衣服が黒く染まっていくのを嬉しそうに眺めるている。

声も出ないほど狼狽えてしまっている俺を観ると
まるでいつもそうしているかのように口を開いた。

『さあ、いこうか?』


ああ……こっちが本物だ。

これが本物の悠のシャドウだと、
何の確証も証もないのに、俺は俺の中にある
本能だけでそれを感じ取った。




to the next…


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