忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【紙の上の常識】

テスト期間中ー 直斗視点です。

初めて見る

レシピ

難しい

な、感じで。
いってらっしゃいませ。

拍手[3回]





 

放課後の図書室。
見覚えのある人影へと、僕は声を掛けた。


「鳴上先輩?」


「ああ…直斗か」


穏やかに笑う。
その姿に思わずぼんやりと
その長身を見上げた。

多分、元々が穏やかな人なんだと思う。

誰にも揺らされない。
誰にも干渉されない。

どこに進む時だって、
まるでその先にある色々な出来事に
寄り添うみたいに歩いて行く。

そんなイメージがあった。

表情を崩す所をあまり見ない。

淡々とした様子でいることを
見ることが多いからだろうか?

戦闘時の鋭い様子とは打って変わって
普段は年相応とはかけ離れた程の落ち着きがあって
その穏やかな様子に憧れる女生徒が多いのも判る気がした。

今も図書室内の女生徒の視線を集めつつも、
それをかわすみたいに涼しげな様子で本を探している。

 


「勉強ですか?テストが近いですしね」


「あ…いや、今日は少し探し物」


見ると手には数冊、料理関係の本を抱えていて
僕からの質問に少しだけ気恥ずかしそうに答えた。

料理の本?先輩が??
しかも、この本はどれも料理の基本レシピばかりだ。

確かこの人は料理が得意だったはず…
何度か手製弁当を頂いたことがあったから覚えている。

男子高校生とは思えないほど
それは見事な出来栄えで、
恥ずかしくも夢中で食べてしまった。

そう考えていると、ふと
表紙の文字に目が行く…


「肉じゃが…ですか?」


「あ……と、その………」


珍しく目を泳がせる…いつもは見る事が出来ないその姿に
僕は言いようのない程の探究心がこみ上げてきた。

彼がここまでになる理由が知りたい。

 

 

「先輩、これは?」


「ええと……だめだな、隠し事って…意識すると…」


「先輩の場合、普通にしていれば判らないんですけどね」


「それが一番難しい」


苦笑いする先輩の様子を見て
年相応の柔らかさを感じて僕も
思わずつられて笑う。

その頬が少しだけ赤いのが見えた。


聞くと、どうやら前回失敗した様なので
再チャレンジして相手を喜ばせたいのだそうだ。

と、いうことは……。

 


「花村先輩……ですか?」


「あ………と…そこまで判るのか…
  この間、あまり箸が進まなかったみたいだから…」


再び苦笑い。

やっぱりと言うかなんというか。

理由は簡単だ、彼がここまで表情を変える理由に
花村先輩しか思い当たらなかったから。

直感と言えば、非科学的で
どうしようもないけれど、
何度か屋上で二人きりで昼食を摂っていたのを
見たことがあった。

根拠と言えば、たったそれだけ。
あまりに簡単に突き止められてしまって
少しだけ残念だけれど……。

 

「ん……やっぱり名探偵だな、直斗は」


「そうでしょうか?」


首に手をやり、焦る様な困った様なその様子に
僕は少しだけ意地悪く笑いながらも考える。

ただの見知った事柄から想像したに過ぎない結果だ。
でも、それだけでも充分気になる内容だった。

『どうやら失敗した様』とはあまりにおかしな表現だと…。

基本的に料理は相手に出す前には、
多少なりとも味見するものだろう。

 

まぁ…一部例外は置いておいて…………


なのに『どうやら』とは…?????
少なくとも先輩が味見をした時点では
なんら問題ない出来であったのだろうことは想像が出来る。

だったらなぜ………

 

 

 

「悠ーーーーーーーーーー!!」


「っ!!よ、陽介…?!」


そう考え込んでいると、
細身の人影が鳴上先輩に向けて
背後から抱きついた。

花村先輩だった。
静かだった図書室内の視線が
一気にこちらに集中する。


「ややや、やっと見つけたぁぁぁ!!一緒に勉強しねー?!
 一緒に勉強しねー?!つーか、一緒に勉強して下さい!お願いしますぅぅ!」


「わかった…わかったから…落ち着け、陽介」


鳴上先輩の背中に抱きついたまま号泣しそうな様子で
ジタバタとする花村先輩の頭を、
落ち着かせる様に優しく撫でながら深く溜息を吐く。

僕はその様子を見守りながらも、
一手を打ち出してみた。

 

「そういえば花村先輩、この間の
   鳴上先輩の“肉じゃが”いかがでした?」


「ちょ…な、直斗?!」


僕からの言葉に慌てる鳴上先輩を
目配せして制する。

こういう問題は早めに切り出すのに限る。

思い当たるフシ…『動機』が思い当たらないのであれば、
問題追求は犯人?へとするのが定石だから。

 


「え?2~3日前の弁当の?すげーうまかったけど?俺の好物だし??」


「え?………だ、大丈夫だったのか??」


「え??なんかおかしかったのか??」

 

お互いに目を合わせながら驚いた様子の二人。


美味しいのに…箸が進まなかった??
と、いうことは…気をそぞろにさせる理由があったから。

僕が現状の情報を追いながら二人を見比べていると、
鳴上先輩が花村先輩の表情を見ながら、
言い辛そうに目を逸らすと
恐る恐る次を切り出した。

 


「その…あまり食べてなかったから…まずかったのかと…」


「ち、ちげーって!!んなわけねー!
 て、テストが気になってとゆーか…範囲が…その…わかんなくて…」


「「…範…囲…??」」

 

鳴上先輩も僕も、思わず同時に声に出る。

今日は金曜日で、テストは来週から…
それについて範囲が判らないという答え…

そもそも今更、範囲とは………


聞くと、範囲が発表された時、
半分眠ってしまっていて
聞いていなかったとのことだった。

あまりのことに僕だけではなくて、
鳴上先輩すらも言葉を失った。

 


「陽介……」


「は、はい…」


「今日から3日間、堂島家隔離決定!」


「な、なんで?!」


「なんでかは、お前が一番よく分かってるだろう?」


鳴上先輩にしては珍しく
声が低く沈殿しているような響き。
脱力するように肩を落として言った姿に
少しの疲労感を感じる。

 

「陽介…今日は甘やかさないからな」


「え…ええええええええ?!…ま、マジで???」


「マジで…」


「………………」


もう、いっそのこと、もの凄く厳しくしたらいい…
そう思ったのはとりあえず置いておいて。

 


「なんでもっと早く言わないんだ…」


「う…そ、そうですね………な、なんでかなーーー…あはは…」


「…………なんででしょうね…本当に」


「ふ、二人で言うなああぁぁぁっ!!」

 

半分涙目で叫ぶ、花村先輩。

そんな花村先輩からの叫びに
早くも心変わりしてしまったのか…
みるみるうちに落ち込み、怯える花村先輩の頭を
まるで子犬でも撫でるように優しく撫で上げて言った。

 

「ほら、行こう……今日の夕飯は、陽介が好きなもの作るから」


「え?!マジで?!やったーーーーーーーーー!行く!行きます!」


夕食メインじゃなくて、勉強だ…と
軽くたしなめられてもなんのその。

飛び上がるように喜ぶと、
花村先輩は鳴上先輩を急かせて
自らは先に図書室を飛び出して行った。

 

 

「先輩…言った先から甘やかすのはどうかと……」


「あ…まずい…つい………」


明らかに失敗したという風な表情で、
手を口に当てて呟く。

その顔色がみるみるうちに
赤く染まってゆくのが判る。

本当に、花村先輩のことになると
ころころと表情が変わるんだと関心する。

 


「陽介に厳しくするのは難しいな…」


「そうですか?」


「ああ…なんかこう……」


余程言い難いのか、色々と考えあぐねた様子で
雲を掴むような視線のまま、眉間に皺を寄せて考え込む。

そんな表情も今日、初めて見た。

 


「ふふ…」


「ん?直斗?」


「いえ……なんでも…ふふ」


その珍しく必死な様子に
思わず声を出して笑ってしまった。

今日は花村先輩のおかげで、
この人の色々な表情が見られた気がする。

 


「いいと思います…それで」


「んー…どうなんだろう…」


「人それぞれですよ」


人それぞれ…自分でも珍しく
曖昧な言葉で返す。

そう…彼らはこれでバランスが取れているのだろうから
いいだろう…と思ってしまう自分がいた。

それに、花村先輩と一緒の
鳴上先輩はとても幸せそうだから。
勿論、花村先輩も。

 

「じゃあ直斗、また来週」


「はい、また来週…あ、本は僕が返しておきますね?」


先輩の料理が
変わらず美味しいなら問題ない、
この本は必要ないだろう。

花村先輩はきっと、
今日も残さず食べてくれるだろうから。


僕からの言葉を受けて
意味を察してくれたのか
先輩は柔らかく笑うと僕へと
本を手渡した。

 

「悪い…頼んでもいいか?」


「ええ…その代わり頑張って」


僕の言葉に苦笑すると
鳴上先輩は花村先輩の後を追って
足早に図書室を出た。

 


「悠ーーー!」


「わかったから…今行く…陽介」


手を振る花村先輩へ向う
鳴上先輩の声が心なしか
柔らかく優しく聞こえた気がした。

 

「お二人とも…また来週」


僕は二人を見送りながら、
夕焼けに染まる図書室の片隅で
微笑みながら小さく呟いた。


Fin



 

とゆーわけで、テスト期間中の二人:直斗視点でしたー。
P4やってると、リアルに学生時代を思い出します(苦笑)
部活掛け持ちしてたなーとか、
好きな教科しか勉強してなかったなーとかとか…(苦笑)

楽しんで頂けたら倖い。
PR

ペルソナ関連検索サイト様★


ペルソナ・サーチ!

MEGATEN WEB SEARCH

公式サイト


コミックマーケット公式サイト

赤ブーブー通信社公式ウェブサイト

『Persona4 the ANIMATION』


TVアニメ「ペルソナ4」

pixiv


pixiv

プロフィール

HN:
欟村縹(つきむらはなだ)
HP:
性別:
非公開
趣味:
萌え
自己紹介:
とりあえず、色々ダメな人。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

バーコード

ブログ内検索

カウンター

ASP