Polaris
【君の声で僕を幸福にして】
雑貨屋さんでの出来事。
犬とかとかとか…(笑)
雑貨屋には可愛いものがいっぱいですvvv
そんなこんなで…(苦笑)
いってらっしゃいませvvv
(*´∀`*)ノ
「あ…陽介、ちょっと待ってて」
「ん?なんだよ?」
まだまだ暑い、夏の昼下がり。
避暑と言ったら聞こえはいいけど、
クーラー求めて二人で入ったジュネスで
雑貨屋を見つけた。
どう見ても女子が好きそうな、
ファンシーなアレ。
おおよそ、俺達男二人には
縁が無さそうな場所に悠が足を止めた。
見ると、悠の視線の先には
手のひらよりも更に小さな座布団に座った…
柴犬?豆柴?が居た。
なんか陶器?で出来たヤツ。
しかもオレンジ色。
興味深そうにそれを凝視すると、
俺へと向き直り、笑顔で聞いてきた。
「これ、どうだろう?陽介」
「え?これ?お前こんな趣味あったの?
あ!菜々子ちゃんへのお土産か!」
「いや、俺が欲しいんだけど…ダメかな?」
いや…ダメかな?って言われても。
そう問われてみて、再度目を落とす。
柴犬…犬だ。どう見ても。
そしてオレンジ色。
なんかもう特別塗ってみました!って感じの。
ちょっとタレ目がちで。
赤い座布団に座って、
愛嬌たっぷりな顔でこっちを見てる。
一体、どこが気に入ったんだ?
「特に、この物欲しそうな顔がいい……」
「…も、ものほしそう…………????」
物欲しそう???????
え?なにそれ???
疑問符が頭を駆け巡る俺を置き去りにして、
こいつは一つ落とすように呟いた。
「欲を言えば、ヘッドホンとかついてたら尚いいんだけど…」
「へ????へっどほん…??????」
犬にヘッドホン?オレンジ色の犬…ヘッドホン…
何やらいやな予感がして、辺りを見回すと、
雑貨屋にはお馴染みの手鏡が
色々なデザインで置いてあった。
そして、それを覗き見ると、写っているのは、
紛れも無く…オレンジ色の服を着て、オレンジ色の
ヘッドホンをつけた、タレ目がちの『俺』…
「ちょ!ダメダメ!!」
「え?」
悠は沢山並んだ犬の瀬戸物の中で
お気に入りの一つを選び出し手に取ると、
レジへと歩いて行こうとしていた。
それを俺は必死で止める。
「お前、多分、家に帰ってお手製で
ヘッドホンとかつける気だろ?!」
「あ…それもいいんじゃないかな…うん」
うん…じゃない!
そんないい笑顔で、うんとか言うな!
「で、名前を“ようすけ”とかつけて、
毎朝『おはよう』とか言っちゃう気だろ?!」
「凄いな…陽介。なんで分かったんだ?」
「いやあああああああぁぁぁぁぁ…」
脱力する瞬間。
毎朝、「ようすけ」と名づけられた
犬の瀬戸物に向って、悠がおはようって挨拶する…
多分…間違いなく…きっと…そうする。
しかも毎日欠かさず…
きっと俺でもそうする…
い、いやそうじゃなくて…!!
と、とにかく!!
だめだ…なんか凄くだめだ…
「と、とにかくダメ!」
「…可愛いのに…………」
ぼそりと呟く。
心底残念そうに。
「そ、そんなにその犬の瀬戸物に
挨拶をしたいなら…俺にすればいいじゃねえか!」
「え?いいのか?」
すごい嬉しそうな悠の顔。
すごいやっちまった感の俺。
「明日から毎朝モーニングコールするから。
楽しみにしててくれ、陽介」
「ううううううううう…あ、ありがとうぅぅぅ…」
嫌じゃないんだ…でも
毎朝、あの甘ったるい声で
『おはよう陽介』とか言われちゃうんだろ?!
すごく…とっても…かなーり…
心臓に悪い。
まぁ…正直、嬉しいっつーか…
でもちょっと恥ずかしいっつーか…
色々複雑。
「ゆ、悠…やっぱさ、毎朝は大変だろ?だからさ…」
「じゃあ、やっぱりコレ買おう」
「それはダメぇぇーーーーーーーーーーーーー!」
慌てて俺は再度悠の手を掴み止める。
だって、「ようすけ」とか呼びながら
コイツを撫で撫でしちゃうんだろ??
それはダメ…絶対ダメ…
だって…そりゃ…その…
『陽介』って俺の名前で
悠から呼ばれるのは俺だけでありたいっつーか…
俺だけじゃないと嫌っつーか…
いやいや!ちょっと落ち着け!俺!
女子高生かっつーの!
とかなんとか、色々色々葛藤していたら、
幸せそうな悠と視線が合う。
そしてニヤリと悪い笑み。
くううううう…ま、また負けた…
「うううぅぅ…か、帰ろうか?悠…」
半ば強引に悠の手を取り、
雑貨屋から引き離す。
その途端、してやったりの笑顔に変わった悠の表情が、
俺には酷く甘く危険に見えた。
「も、モーニングコール忘れんなよ…!」
嬉しそうな悠の横顔を覗き見ながら、
俺は悔し紛れにそう叫んだ。
・
・
・
・
・
・
・
翌朝
花村家:陽介の自室。
♪~♪♪♪~~~
は?!ま、まさか…
『おはよう、陽介』
『朝だ…起きて』
予想通りの展開に、
俺は自室のベッドの上で悶える。
起きます!起きます!
起きるからあああぁぁぁぁーーーーー!
様子を伺っているのか、悠の呼吸まで
聞こえてきて、なぜだかジタバタしてしまう。
俺は嬉しさと恥ずかしさとが
入り混じった複雑な気持ちのまま
なんとか朝の挨拶を返した。
「お、おはよう、悠」
『おはよう、陽介』
俺が挨拶を返すと、
悠も返してきて電話越しに
嬉しそうに笑う気配がした。
その気配につられて
俺も笑う。
カーテンで閉じられた窓から外を覗き見ると
綺麗な青い空が見えた。
「いい天気だな…」
そうだなって、悠も笑う。
お前のその気配が嬉しくて
俺もにやにやしてしまう。
その…結構…いいかもな…も、モーニングコールってのも。
そう思いながらまた青い空を見る。
なんだか手が届きそうだ。
電話の向こうでは
悠が他愛もない話ししながら
また優しく笑う気配がした。
俺、お前のそれ、すげー好きなんだよな…
とか思っちゃったりしたのは
恥ずかしくて、ぜってー言えねーけど…。
今日も暑いからジュネスに行こうか?
それともこれからどこかで落ち合って
遅めの朝食でも一緒に摂ろうか?
なんて話しながらも、また優しく笑う悠を感じて、
俺もまるで合わさるみたいに優しく笑いながら
嬉しくて飛び上がるみたいにベッドから出た。
Fin
お疲れ様でございました!
二作目!なんか人目がある雑貨屋で
なんの話ししてるんだかーーーーー(笑)
陽介には「俺は犬じゃない!」と
ツッこんで欲しかった…(笑)
(やれよ;;)
今回は私が単純に浪川さんの『陽介』って発音が
エロいなーーーと思ったからネタ…;;;;;;
※201210116;修正しました。
楽しんで頂けたら倖い。