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【我慢上手な君へ】

りせ視点主花。主人公との約束を反故にしてまで
バイトに勤しむ陽介にりせは?

後半から(りせちの語りが終わってから)視点が
相棒同士に切り替わりますがご容赦を;


我慢

ケロリーマジック

手を繋ぐ


こんな感じで、
いってらっしゃいませ(*´∀`*)ノ

拍手[4回]















私の好きな人は、私じゃない人を好きで。
でも私じゃない人の傍で笑ってる笑顔が
私が知ってるその人の中じゃ、一番好きで。

私じゃない人を思ってる
その表情や仕草が、優しくてとても好きで。




「悠センパイ!」


大好きな背中に向かって大きく声を上げて呼び掛ける。
私の声が空に高く響いてセンパイの元へ届くと
その大きな体がゆっくりをこちらを向いた。

私を見て柔らかく微笑む表情に
ふわってなる自分がいるのを自覚する。

これは恋なのかな? うん! きっと恋に違いない!

そんな風に決めつけつつ、そんな不確かな感情で
ふわふわとするのが楽しくて、近頃の私はとても浮かれていた。
踊る様な跳ねる様な、軽い足取りで悠センパイへと近寄ると、
その長身が作るの影へとワザと入り込んで彼を見上げ上目使いで言った。

「センパイ、今日こそ一緒に帰ろ!」

「あ、りせ…悪い、先約があって。」

「ええええ!!! 今日も?!」

思わず声を上げてしまう私を見て苦笑い。
なのに…確かに申し訳なさそうなのに、
それ以上に嬉しそうな表情。

その表情を見ただけで先約の相手なんて分かりきってる。
私が心の中で『ズルい!』と叫ぶのと同時に
私の背後から誰かが声を掛けてきた。

「悠ー!」

「陽介」

多分というか、絶対だろう。
先約の相手…花村センパイが悠センパイに向けて
駆け寄ってきた。


「悠、悪い…今日の約束さ、急遽バイトでダメになっちまって…」

「え…あ、そうか…いいよ、また今度」

花村センパイからの言葉に明らかに落胆したようなセンパイの背中。
でも表情はいつもの笑顔だったから、上手く花村センパイは騙されたみたいで…
私はそれ自体が面白くない。



「ホント、悪ぃ…必ず埋め合わせすっから」

「気にするな陽介、またでいいから」

「おう、じゃあな」

悠センパイの言葉に、申し訳なさそうにしながら手を振りつつその場を去る。

あまりに呆気ないそのやり取りに、私は悠センパイの予定が空いたことよりも
花村センパイが悠センパイを袖にしたことに腹を立ててしまう。

「センパイ! 我慢上手過ぎ! 嫌なら嫌って言わないと!」

「りせ?」

私の言葉にビックリした表情でこちらを振り向く悠センパイは
やっぱり少し元気が無くて…。
そんな顔して、寂しくないなんて言わせない。
だって背中がすっごく寂しそう。
いつもナビしてるのは伊達じゃないんだから!

「まさか、嫌われたくないからとか?!」

「違うよ、りせ。そういうんじゃないんだ」

慌てた様子で私の言葉を否定する悠センパイからの言葉に
私が明らかに不貞腐れた表情で見ていると
それに苦笑いしつつ言う。

「待ってるとさ、凄い笑顔で帰ってきてくれるから待ってるのも悪くないかなって…」

「ま、待ってても帰って来てくれるとは限らないよ!」

「りせ………」

「誰かに取られちゃうかもだよ!」

私、何を言っているんだろう?
自然と口をついて出た言葉に自分がビックリしてしまって
思わず息を飲みこんでしまう。
当の悠センパイは私の言葉に目を丸くして驚いた顔をすると、
ふと何かに思い当たったように小さく笑う。

「それは考えて無かったな…気をつけないと」

「そ、そうだよ! 取られてからじゃ遅いんだから!」

私はホント、何を言っているんだろう?
二人がダメになった方が私にとっては好都合のはずなのに。
頭の中では分かっているはずなのに。
口から言葉を紡ぐ為の本能って器官は、私の打算とは
正反対の方向へとセンパイをナビしようとしている。

「花村センパイってぼんやりしてるトコあるんだから、ここは押してかないと!」

「そうだな…ありがとう、りせ」

悠センパイの目を細めて笑うクセ。
それは私のすごく好きな仕草の一つで…
それを見られたことに喜びたいのに…でもなんか釈然としなくて。
私は自分の中の矛盾と色々な感情に唸った。

このまま花村センパイを誰かに取られて、落胆したセンパイを…なんて
イマドキの女子高生からしたらなんでもないことだろうに。

なぜか私はそれを良しと出来ないみたい。
なんだか、今大切にしているこの『ふわふわ』した
優しい感情が汚されるみたいで嫌だったから。

私は釈然としない感情が渦巻く中、
悠センパイと途中まで下校して、そのまま帰宅した。






「花村センパイは、悠センパイとバイトとどっちが大事なの?!」

「うお?! なな、なに?! り、りせ??」

夕方…商店街の丸久豆腐前。
通りかかったバイト帰りの花村センパイの姿をみつけて
私は思わず叫んでしまった。

バイト疲れもあるけれど楽しそうに歩く花村センパイを見て
先程の悠センパイの様子が目に浮かんで…
なんだか一方的に悠センパイだけが我慢させられているみたいで
私の方が我慢ならない。

悠センパイの寂しそうな背中、あんなのダメだよ…

花村センパイは突然の私の襲来に驚きつつも、
瞳を大きく見開いて眉根を寄せつつ返答する。

「は? そんなん悠の方が大事に決まってるじゃねーか」

「じゃ、じゃあなんでさっき…っ」

私が不満そうに唸ると、花村センパイはなんとなく事情を察してくれたのか
少し困った様に頭を掻きながら言った。

「うーん…じゃあさ、俺が悠を優先してバイトをサボったとして…
            それって悠が喜ぶ形ですか? ってこと。」

「え…そ、それは…」

「悠がホントの意味で喜ばないならそれって意味ねーし…そんなんじゃ俺もヤだし」

「うー…」

そりゃ、そんなの悠センパイが喜ぶワケないの分かってるもん!
でもね、あんな寂しそうなセンパイは
私の方が悲しくて見ていられないから。

私の考えていることなんて全然分かっていないハズなのに、
花村センパイは何かを理解した様に苦笑いすると、
一転、珍しく真剣なまなざしで私を見て言った。

「そんなんじゃ、アイツの傍にいられないし…」

「…花村センパイ?」

「…俺は……悠が誇れるような俺でありたい。俺にとって悠が自慢の相棒であるように」

「花村センパイ…」

「アイツにはすげー色々世話になってるし…
 それはホント、感謝してる……だからいつか何か出来たらって」

「う、うん…」

そんな花村センパイだけじゃないもの…。
私だって悠センパイにたくさん助けてもらったし!
こうしていられるのもセンパイのおかげだし!

だから…尚のコト、悠センパイには幸せでいて欲しい。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
花村センパイは噛みしめるみたいに目を細める。

「でもそれだけじゃなくて…なんかこう…もっと違うものも返してやりたい」

「違うもの?」

「そう…違うもの。もっとアイツが喜ぶような。そういう…俺だけが贈れるようなすげーヤツ」

「…うん」

「俺なんかじゃ、アイツから貰ったものの10分の1も返せないかもしれねーけど、
 でもきっとアイツなら俺が返した分、キッチリ受け取ってくれる…俺の気持ちごと全部」

「………それは『好きだよ』って気持ちってこと?」

「ばばば…っ…それは…っ…その………」

私がストレートに聞くと
途端真っ赤に花村センパイの頬は染まった。
文字通り目を点にして私を見ると、
歯をカタカタ乾いた音で合わせながら聞いてきた。

「わ、わかってたのか? いつごろ?」

「私がそういうの分からないとでも思ったの? 最初からだよ」

「う……そ、そっか…さ、流石のナビ…あはは…っ」

「………」

さらに真っ赤に染まる様子に
なんだか私の方が恥ずかしくなってくる。
花村センパイは数秒間、言いあぐねているような表情で
うんうん唸ると、何かを決心したのか絞り出すみたいに言った。

「そ、そーいうのも含めて…俺の全部、渡してやりたい」

「花村センパイ……」

「はは…悠が欲しいって言ってくれるなら…だけどな」

「そ…そんなの…っ」

そんなの悠センパイがいらないなんて言うわけないじゃん!
馬鹿! 馬鹿! 二人とも大馬鹿よ!

「う、うー! もう!」

「な、なんだよ…りせ、どうした?」

「もう! 二人とも分かり合い過ぎ! もっと我儘言ったらいいのに!」

「な、なんだそれ??」

悠センパイは花村センパイの事情を分かってて、
花村センパイは花村センパイなりに悠センパイを大切に思ってて…
全然分かり合えてないと思ってしまっていた私が馬鹿みたい。


許せるってすごいことだから…
相手を大切にしたいって、相手を認めてるってことだから。

誰より近くにお互いを感じているから
許せるんだと思うから。

私はまだそんな出会いを出来てないから、それが悔しくて仕方ない。
ジリジリする感情を上手く収められなくて、思わず花村センパイの腕を両手で取り
そのまま乱暴に振り回しつつ、感情のままに唸った。


「そ、そんな悠長なこと言ってるんじゃ、私…センパイのこと…っ」


耐えられなくて半ばヤケで私が叫んだ途端、背後に誰かが立っている気配がした。
見覚えのある長身の影…それはもちろん悠センパイで
でもその表情はいつもと違った。

「悠? え? なんで?」

「悠センパイ…?」

「見つけた…陽介、迎えに来た」

「悠? 迎えって…」

その長身は私の横をすり抜けると花村センパイへと迷わず突き進み、
その細めの腕を取り、花村センパイと私の間へと入った。
途端、私と花村センパイを繋いでいた手はあっけなく離れる。

よく見てみると悠センパイの呼吸は若干荒くて、
白いこめかみからは汗が伝い落ちていた。

息が上がってる…悠センパイが?

困惑した私がその様子を伺っていると
悠センパイは花村センパイへと言った。

「りせに言われたんだ、押していけって」

「え…悠? りせに何を??」

「悠センパイ?」

「……戻ってくるとは限らないしな…陽介は特に」

「は? 悠? おい、ちょ…っ」

突然の出現に驚く花村センパイと同じく
驚いたままの私の前に立って、悠センパイはいつもの良く通る声を
少しだけ低くして私へと言った。

「りせ…陽介はダメだ」

「え? …悠センパイ? え? え?」

「陽介だけはダメだ…いくらりせでもダメだ」

「ちょ…悠! バカ! ちげーって! おま…っ…」

「ダメなものはダメなんだ…悪いが諦めてくれないか? りせ」

真剣な顔つきで私へと詰め寄る悠センパイ。
それはまるでダンジョンの中で見る様な
真剣な顔つきだったから、私は思わず何を言われたのか分からなくて、
思考も言葉も止まってしまう。

「だああぁー! ちげーって、悠!
 りせはそういうこと言いたいんじゃなくって…っ」

「え? 陽介? りせ?」

「ちげーって! ぜんっぜん、ちげーっつーの! おま…バカかぁぁー!」

悠センパイが言いたいことと、今の状況を察した花村センパイが
慌ててことの顛末を説明すると途端、悠センパイは頬を紅潮させ目見開いて硬直する。
そして焦った様子で私へと盛大に謝ってきた。

「わ、悪い、りせ…俺が勘違いをしていたみたいで…」

「う、ううん…」

「い、いや…悠もりせも悪くねーだろ。元はと言えば俺がさ……あはは…っ」

「そ、そーだよ! 花村センパイが悠センパイとの約束ドタキャンしたりするから!」

「だーー! 悪かった! 悪かったって!」

「もう………」

私が花村センパイと?? そんなワケないじゃない!
あんまりな展開に私が溜息を吐くと
バツが悪そうにしつつも、悠センパイが笑いかけてくれた。

「りせ、ありがとう」

「う…感謝されちゃうと…」

「心配してくれたんだな…大丈夫だ、りせ」

私が空回りしたことで混乱した場にいたたまれない気持ちでいると
悠センパイは優しい表情で私の頭を撫でてくれる。
それがとても優しくて私の大好きな笑顔だったから嬉しくて思わず微笑むと
調子を取り戻したのか、悠センパイは一転ニヤリと意地悪い笑顔で私に囁いた。

「大丈夫だ…陽介って夜になると力いっぱいメールと電話で謝ってくるから」

「え? そうなの??」

「だああぁぁぁー! それ外で言うなあああ!」

「だから大丈夫だよ、りせ」

「ふーん」

「ううう…このドS……」

何を思い出したのか、嬉しそうにニヤニヤする悠センパイと
こっちも何を思い出したのか、真っ赤な顔して地団駄を踏む花村センパイ。

「お、俺だってなぁ…俺だって…ううぅぅ…」

「ごめん、陽介…全部分かってるから」

「ふーん…」

そうか…実は花村センパイも『我慢』をしていたんだと
私は今更に気づいた。

花村センパイの我慢は悠センパイへと直結してて、
悠センパイの我慢は花村センパイの為で。

このお互いに我慢上手な二人は、全くタイプが違う様で
それでいて意外と似ているのだと悟った。

なんだかぴったりな二人に
どうしたって叶わないという悔しい思いと同時に
小さな疑問が浮かぶ。

でもそれって、花村センパイは達成感あるけど
悠センパイは待たされたまんまじゃない!?

……なーんか、納得いかない。



私はひとつ思い浮かんで店の奥の冷蔵庫へ。
確か冷蔵庫には、以前サンプルで貰った『アレ』が奥にしまってある。

扉を開けると記憶の通り“ケロリーマジック”が二本入っていて、
触れるとソレは丁度飲みごろな位に冷たく冷えていた。

「はい、コレあげる」

「ん? くれるのか?」

「おお! これってりせがやってたCMのヤツじゃん! マジで? サンキュー!」

私が手渡したケロリーマジックを受け取り
無邪気に喜ぶ花村センパイへと私は一喝する。

「もう! 花村センパイ全然分かってない! 我慢なんて無理・嫌い・シンド過ぎ…! なの!」
 
「お、おう…?」

「りせ?」

私の言葉に二人が顔を見合わせてきょとんとする。
CMに合わせてなんとなくニュアンス伝わったらいいなーなんて、思った私が馬鹿でした…。

だからちゃんと言うことにした。
お互いがお互いのことしか見えてない、相性ピッタリなこの二人に
それでも見えてないこともあるかもしれないから
ちゃんと頑張れってエールみたいなナビで。

「我慢って必要かもだけど…お互い辛いならそれこそ意味無いと思うから…」

「りせ…」

「お、おう…」

たまにはお互いにたくさん我儘言って、ちょっとはケンカとかして。
それでもって、誰よりも幸せになるといい。
相性ピッタリで、お互いに我慢上手なこの二人が
誰よりも誰よりも幸せになるといい。

「だ、だからちゃんと見ててあげてね! 悠センパイのこととか、あと自分のことも…」

「あー…そうか…ははっ…そーいうことか」

「りせ……」

気恥ずかしさで唸る私の頭を、
花村センパイの節くれだった手がポンポンと叩いた。

「ああ、まかしとけって!」

「ホント? もしダメだったら私が悠センパイ取っちゃうんだから…っ」

寂しい寂しいって言ってる背中に飛びついて奪っちゃうんだから…!
私がそう脅す? と、途端少し表情を硬くした花村センパイが
珍しくぴしゃりと言い放った。

「それはダメ…悠だけはダメだ」

「え?? 花村センパイ?」

「陽介?」

いつもの陽気な表情とは全く違う、今度は花村センパイからの
強い口調に悠センパイまでもが驚いて動きを止めた。

「りせには悪ぃけど悠だけはダメだ………悠、行こう」 

「~~~!! そんな風に言うならちゃんと…っ」

「ちゃんと見てっし! ぜってー離さねーから…っ!」

「陽介…」

そう言うと悠センパイに捕まれていたハズの手で、
そのまま悠センパイの手を掴むと
グイグイと引っ張る様にして悠センパイを連れて
この場を去って行った。

強引に引っ張られているはずの悠センパイの背中が幸せそうで、
引っ張っている当人もどことなく幸せそうだったから、私はなんだか
それに中てられたみたいで唸った。


「……バカ…ホント、バカ」

だったら私は、悠センパイがちゃんと幸せになれるか見ててやるんだから。

本当は私が一番好きな笑顔が一番輝く場所を、
私自身がナビ出来たら良かったんだけど
それは私じゃなかったから。

「あーあ…失恋しちゃったなぁ……」

失恋なんて悲しい言葉なのに、泣くとか悲しむとかじゃなくて
二人のこれからが楽しみで…そして心配で。
去ってゆく背中を横目で見ながらその幸いを出来るだけナビ出来たら…
なんて思ってしまった。
きっと二人なら大丈夫だろうけど。

「でもあんまり花村センパイが酷い時は
 悠センパイにお願いして、沖奈でも連れて行ってもらおうかなー」

そんなことを呟きながら暖簾をくぐると
風が吹いて暖簾をゆっくりと、そして大きく揺らした。

「ガルかな? ふふ…心配しなくても邪魔なんてしないのに」

私はそう呟くと、もう一度二人の背中を追う。
その仲睦まじい様子に、あの時の寂しげな様子なんて微塵も感じなくて、
同時にそれに嬉しくなる自分に気づいて、
二人の背中へと自然と微笑みかけた。


私の好きな人は、私じゃない人を好きで。
でも私じゃない人の傍で笑ってる笑顔が
私が知ってるその人の中じゃ、一番好きで。

私じゃない人を思ってる
その表情や仕草が、優しくてとても好きで。

とてもとても好きで…大好きで。

ああ…だから私は、あの人が大切な人の傍で
幸せそうに『笑っている』姿が
とても『好き』だったんだと今更に気づいて。
これは一種の成就なんだと、苦笑い。


また明日ねセンパイたち…そんな言葉と
どうかお幸せに…なんて、らしくない言葉を贈って。

私はサッシの戸をカラカラと心地よい音を響かせながら閉めつつ
その幸せそうな姿を見送った。







りせに見送られたその後、丸久豆腐店から暫く歩いた誰もいない歩道で、
未だ鳴上と花村は無言で歩き続けていた。

「陽介、痛い」

「え? あ…悪ぃ」

鳴上が声を上げると、今の今まで夢中だったのか
たった今気づいた様な表情をした花村が焦って手を離した。

途端、花村は叱られた子犬の様にしゅんとして
トボトボと歩き始めるから、その背中を見て鳴上は苦笑い。

「まぁ、本当にそのままどこか行きそうだよな…陽介は特に」

「は? な、なんだよそれ…」

「…まぁ色々と考えてはいるんですよ、これでも」

苦笑いしつつ、先程まで繋がれていた手の
ぬくもりを思い出して密やかに笑う。
すると、何かに気づいたのか花村がボソリと言った。

「……で、迎えに来てくれちゃったわけか? 取られない為に? 悠…お前、バカだなー」

「…………馬鹿か?」

飽きれた様に言う花村の言葉に
鳴上は反射的にムっとするけれど、花村がそれに畳みかけるみたいに
続けざまに言った。

「バカですよ…俺がそんなにモテるわけねーだろ」

「陽介は自分がモテていることに、気づいていないだけだと思う」

「は? 何言ってるんデスカ、センセイ?? 俺がモテてるわきゃねーだろ!」

「まぁ…陽介はそれでいいか……」

「は? 悠??」

離された手に残ったぬくもりが消えないうちに
鳴上は再度、指を合わせる様にして花村と手を繋ぎ直した。

再び繋がれたぬくもりに花村が少しだけ驚くと、
鳴上は柔らかく微笑みながら言う。

「これがいい…この方が落ち着く」

「う…お、おう…」

なんだか照れ臭いのか、花村はあさっての方向へ向きながら
そのまま続けて歩き出す。

鳴上はその様子を見て溜息とも納得とも取れる様な呼吸で一つ置くと、
花村の手を目を細めて見ながら笑った。

「しっかり捕まえておかないとな? 陽介は特に」

「は? …っ…お前の方こそ…! つーか、心配なのは俺の方だっつーの…っ」

「……疑われているのか? 俺は」

「う、疑うとかじゃねー…その…っ…お前、モテっから…」

「うーん…でも繋ぎたいのは、この手だけなので。」

「う……お、おう」

繋いだ手と幸せと。
なんだか色々難しいものを託された気がしたけれど
お互いの気持ちが繋がっていれば大丈夫だと思う。

「このまま繋いでてもいいか?」

「お、おう……」

「陽介………」

「お、おう……」

「…っ…変な顔…っ」

「お、おう……?? は?! ば…おま…っ…サイテーだ!」

繋いだ手と繋がっている幸せと、それはきっと比例していて。
お互いの手だけじゃなくて、気持ちが繋がっていれば
どんなに離れていても大丈夫…そんな気がする。

「はいはい…好きだよ、陽介」

「ば…っ…誤魔化すな! つーか、そそそ、そーいうのは二人っきりん時でお願いしマス…っ」

「はいはい」

「“はい”は一回! おま…バカにしてんだろーっ」

どんなに遠くても、どんなに離れていてもきっと大丈夫。
お前とならきっと。


Fin






















私の中にりせちを探したんだけど…探せず仕舞い…;;;
可愛いりせちが書けなくてスミマセン;;ううう;;;;;;;

きっと私の中にりせちは居なかったんだ…そうに違いない;;うう;;

いつも遠慮なく会話してる二人ですが、意外とお互いのこととか、
お互いの為とかで我慢とか遠慮とかしてそうな…(苦笑)

もっとバババーン!と行けばいいクマよーー(エコー)

(笑)

楽しんで頂けたら幸い。
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