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【名前を呼んで】

ED後話しですがネタバレて無い…ハズ;;

待ち合わせ

名前

時間

な、感じで。
いってらっしゃいませ。

拍手[8回]














とある春の日。

久しぶりに八十稲羽に帰ってきた鳴上は、
暖かい陽の光に目を細める。

連休を利用してこちらに帰って来て
仲間達と一緒に過ごそうということになった。


待ち合わせ場所の駅には相変わらず何もなくて、
言ってしまえば殺風景ではあったけれど
ここでみんなと別れた思い出がある為か
些か感傷的にさせる。

そんな風に辺りを見回していると、
見覚えのある人影が鳴上を出迎えた。

 

「陽介!」


「え…ええと…その…ひ、久しぶりだな………な、鳴上…」


「え?…」


花村からの開口一番。
それが鳴上を酷く動揺させた。
おかしくはない。鳴上が自分の苗字なのだし。

けれど。

 


「…………ただいま」


「お、おかえり」


花村から感じる余所余所しさが、
鳴上の心に深く刻むような皺を作る。

その後も二人、駅舎で
突っ立ったまま弾まない会話を
交わして話し続けるけれど、
違和感は拭えなくて。

それが一層、鳴上を不安にさせた。


「え、えっと…でさ、鳴上…と、とりあえず駅出るか?」


「ああ…」


何処に行くと行く先も決めずに
なんとなく駅を出る。

その後、何度か見咎めても、
なぜか視線を逸らす花村の態度に
鳴上は何かを悟った様に独り呟いた。

 

 

「あ…そうか…そう…か………」


「????」


気がついてしまえば、それが現実で。
鳴上はこめかみを貫くような衝撃に
瞬間的に息を殺した。

次を言う覚悟がなかなか決まらないまま、
鳴上は無理矢理に言葉を発した。

 

「悪かった…呼び方戻そう…花村」


「え?……」


余所余所しい態度に、戻ってしまった呼び名。
合わせてくれない視線に、気まずい会話。

それらを色々と繋ぎ合せれば分かるはずだった。

無意識にソレを無いものと思っていたのが
自分でも不思議な位だ。

お前を信じていたと言えば聞こえは良いけれど、
ただ依存していただけなのかもしれないな。


さっきの言葉はこの先を
区切る為の儀式みたいなもの。

呼び名を戻して、笑って過ごせるのなら
それに越したことは無い。

そうだ、簡単なコト。

お前が笑って居られるってコトは、何より一番重要なんだ。
少なくとも俺にとっては、何よりも。

 


「良かったな…好きな子出来たんだな…悪い…気づかなくて」


「え??おま…何言って???」


諦めるとか…憤るとかじゃなくて
なんかもっと体の力が抜けてゆく感じ。

その抜けていく力をなんとか押し込んで、
不自然な位、力を込めて歩くと
膝が心なしかガクガクと震えた。

今、力を抜いたらきっと
このまま座り込んで動けないと思う。

それくらい今、実はキツい。

 


「八高、結構レベル高いしな…どんな子って…いいか…そんなの」


「ちょ、ちょっと待てって!!何言ってんだ?お前は」


「だから…っ」


待てってなんだ?
お前から切り出したんだろう?

実際、立って歩くのもやっとなのに
食って掛かってくるお前を傷つけないように
何かを言わなくてはならないなんて。

お前はどこまで…

 

「だから…他に好きな子出来たんだろう?…だから…その……」


「え?ま、まさか…おまっ…!ば、バカかーー!!」


「え???」


鳴上の言葉を聞いて、本当に飛び上がる位
驚く花村の様子に、逆に鳴上が驚く。

お互いに見合った瞳が
お互いの言葉の真意を掴み兼ねて泳ぐ。

 

「お、おま…俺がどんだけ苦労して…っつーか…ああ!もうー!」


「??」


「んなわけねーだろ!何の為にみんなより
     早い時間に約束してココ来たと思ってんだ?!」


「え??早い?時間…??」


「あ…やべ…っ………………」

 

そういえば、待ち合わせの時間と場所を
指定してきたのは花村だった。

駅でこの時間に。

先程から待ち合わせをした場所なのに
なんでみんな居ないのか気になっては
いたけれど………

まさか、まさか…この相棒は……

 

 


「………………確認しておきたいんだけど」


「な、なんでしょうか?」


「……………今日はみんな何時集合?」


「……い、今から3時間後です…」


「………場所は?…………」


「………ジュ、ジュネスのフードコート………」


「……………」


「……………」

 

なんかもう…殴りたい。
こののほほんとした可愛い顔とか頭を。

で、この可愛い顔とか頭とか色々な所を
食べてしまいたい。

杞憂に杞憂を重ねた先程の時間を思い、
精神的にぐったりとしてしまう。

ああ…もう本当にコイツは…

すなわち、要約すると…

 

「だから、久しぶりだからお前とゆっくりしたいなーとか…色々と…」


「………………」


「だ、だってさ!みんないると色々とさ…な?……」

 

そんな可愛い表情で見上げられても…。

と、言うか…もじもじして…お前は女の子か?!
と突っ込みたいけど、実はもうそんな気力が無い。

ああ…なんだこれ…
陽介…お前のせいでどっと疲れたぞ…

項垂れる鳴上を前に
慌てた花村が一気に捲くし立てようとするけど
結局はしどろもどろになってしまい
最後には声が萎んで行く。

 


「だ、だから…お、お前の3時間を俺に下さいー…的な………」


「…………殴りたい」


「は?!な、なんで?!」


「頼むから殴らせろ…その後、押し倒す」


「い、意味わかんねーし!!」

 

もう、なんなんだ…俺をここまで揺らせて
その上、そんな可愛いコト言って。

嬉しいのか、悲しいのか
怒っているのか、なんだかよく分からなくなってきた。

とりあえずこの可愛い相棒は
僅かな時間でも俺を独り占めしたいと
思ってくれてたということなんだろうけど。

そのずさんな計画に振り回された
俺の気持ちはどうなるんだ?

 


「……この変態」


「な?!なんでだよ!!」


「じゃあ、ヘタレ?」


「ち、ちが…いや………あながち外れてないかも…ってオイ!」


花村が盛大に突っ込むと
鳴上は崩れるみたいに笑った。


どうやら先程、苗字で呼んだのは
久しぶりの再会で緊張してしまい、
つい出てしまったとのこと。

ああ…もう本当に食べてしまいたい。

そんな声が頭の中でこだまする。

花村に聞こえるくらい大きく溜息を吐くと、
鳴上は苦笑しながら言った。

 

「なんでお前はいつも無駄な抵抗をするんだ?」


「む、無駄とか言うな!久しぶりでちょっと緊張したら…」


「紛らわしすぎるし…」


「う…な…なんか気恥ずかしくて…」


俯いて真っ赤に茹る花村を見て
満足そうに微笑む鳴上。

その視線に気づいたのか、
花村が不貞腐れて言い返してきた。


「な、なんだよ…楽しそうじゃんか………」


「うん。楽しいよ?……で、3時間二人だけで何するんだ?」


「え?!…ええと……………お、お前は何したい?」


「やっぱりヘタレだな…」


やっぱり考えてなかったか、と言うような表情で
眉間に皺を寄せ呟く。

 

「だ、だってさ…」


「んー…そうだな…じゃあ…」


「え?う、うん…??」

 

花村の泳ぐ視線を一つの言葉で絡め取ると、
鳴上は笑って言った。

 

「とりあえず名前呼んで?」


「ば、バカ…………そんなの当たり前だ」


「ん……だな」


嬉しい気持ちが降るっていうのは
こういうことなんだろうな。

もう、有り得ないくらい安堵している自分に
苦笑してしまうけど、こんなのも悪くない。

 

「悠、どこ行きたい?」


「陽介が好きな場所でいいよ」


「そうか…じゃあ…」


これからもきっとお前のその
迂闊さに振り回されたり
俺の一方的な考えで逆に
お前を振り回したりするんだろうけど
きっとそんなのも大事な思い出になるんだろう。

そういうのも全部ひっくるめて
きっとお前となら楽しいだろうから。

 

「じゃあ……………ジュ…ジュネスで!」


「陽介…お前…それしかないのか?」

 

結局、ジュネス…まぁ、それもいいか。

予想通りの展開に笑ってしまうけど
それもまた楽しいから。

 


「ジュネスか………菜々子、呼ぼうかな…」


「い、いや…あの…二人きり…」


「菜々子…元気かな………」


「い、今くらいは二人きりでお願いしますっ!!」

 

 

とりあえず。

この3時間はお前をどう
困らせてやろうかと色々と考えているから。

だから少しだけ覚悟しておけよ。


Fin

 

 

 

 





間違いなく仕返しされます(笑)

逃げてーーー陽介ーー!(笑)

なかなか纏まらなくて
右往左往したらこんなんなった文章でした;;


楽しんで頂けたら倖い。
 

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