Polaris
【君の壊れる音(5)】
お待たせして本当に申し訳ないです;;;;;
恐怖
名前
俺だけの
な感じで。
いってらっしゃいませ。
以下、拍手お礼(該当者様反転推奨)
厨魔女さん
いらっしゃいませ!
閲覧ありがとうございます。
楽しんで頂けて本当に良かったです。
亀の歩みで申し訳ないのですが;;
頑張って書いてゆきます!!
コメントありがとうございました。
「ヨースケ…なんか変クマ」
「は?!な、なんだよそれ…」
開店準備も佳境を極めた店内で
突然のクマからの声がこだまする。
「ぬうう!なーんかおかしいクマよ!なんなの?チミは??」
「いや…だからっ…それはこっちのセリフだっつーの!」
昨夜からの異常な感覚に、
朝の意味不明な涙の意味。
ぐるぐる考えながらも、開店準備を進めていると
クマが不審そうな表情で俺を見て言った。
「なんかおかしいクマ…なんかこうー…よくわからんけど、
とにかくいつものヨースケじゃないクマ!お前は誰だクマーーー!」
「アホか!!ちゃんと俺だろーが!」
「ぬうううう!クマの鼻センサーなめたらあかんぜよ!」
「お前…またそれかよ…」
肩を落とし声を上げる俺。
クマの大げさな動作を呆れた様に見ながらも
おかしいと言われたことには
同意せざるを得ない。
実は昨夜の記憶がほとんどない。
細かく言えば、クマが
河原に迎えに来てくれた以前の記憶がほとんどない。
何かを聞きに、堂島家へ行ったのは
おぼろげに覚えている。
けれど、そこで話した肝心な内容がまるでない。
それどころか、どうやって
堂島家を出たのか、どうやって河原まで辿り着いたのか
まったく覚えていなかった。
どうしたんだ俺は?
俺が考え込んでいると、
クマが再び騒ぎ出した。
「ぬおおお!わかったクマーー!チミはシャドウね!! 」
「は?!」
突然出てきた言葉に
俺は思わず声を上げた。
「んなわけねーだろーが!じゃあ俺の本体はどこなんだよ?!」
「う…ぬうううううううう!そ、それは…クマにもわかんないクマ!」
「……お前…もういい加減にしろよな…」
深い深い脱力感。
クマの突然発言はいつものことではあったけど
今回は俺を深く揺さぶった。
シャドウ?俺が?
んなわけねーだろ。
ただ、誰でもないクマの発言に
俺は考え込んでしまう。
あまりに的を得ない言葉だったが
今の俺には深く突き刺さる。
この気分の悪さと
消えてしまった記憶。
何かが絡み合って思考が定まらない。
俺自身からも答えの出ない問いに
再び意識が鈍く淀んだ。
俺は…悠…の………
悠?なんで???
俺は……
掴めそうな、掴めなさそうな
そんな味の悪い感覚が背中を震えさせた。
「ぬむううう!白状するクマーー!!」
「っ……ちげーって言ってんだろー!」
そうだ、違う、俺は花村陽介だ。
シャドウなんかじゃない。
なのになんでだ?
何があったんだ?
何か大切な何かを忘れているような…
取り戻したいのに、同時に襲ってくるのは
それを拒否する感覚。
「センセイに言いつけてやるクマー!」
「うるせー!ちげーつーの!」
咄嗟に出たのか、クマからの悠の名前に
俺は思ったよりも
大きな声で怒鳴ってしまう。
悠……俺、どうしたんだろう?
クマの声がこだまする中、
俺はさっきの疑問を払拭するべく
この後、堂島の家へと行って見ることにした。
あれ?でも…なんか前にもこんなことあった気がする。
昨日の……夜?……っ…
漠然とした記憶の粉がいくつも降り積もって
俺の視界を霞ませて、体がグラリと揺れた。
「ヨースケ??どーしたクマ??」
「っ……なんだ…これ…っ」
心配そうなクマの声。
それと同時に開店の音楽がかかった。
開店を今か今かと待ちわびたお客の波が
開いた扉から、まるで幻の様に迫ってくる。
「っ………」
「ヨースケ?ヨースケ??あわわあわわわ…」
気持ちが悪い。
吐き気が酷い。
なんだ?これ…??
なにかを忘れているような…
忘れたい何かと、思い出したい何かが
お互いに擦り合わない。
拒否するような、ぼやけた思考。
怖い…何かが怖い。
張り付いた恐怖に脂汗が出てくる。
心配そうに俺の背中を撫でるクマの背後で
元気の良い声が上がった。
「おーす!花村ーー!どう?仲直り出来た?」
「え?………さ…里中??」
「アンタ、まだケンカ中なの?
あの後、鳴上くんに謝りにいったんじゃ…」
「…っ……謝りに…?…え………俺…っ」
陳列棚の奥から天城と一緒に現れた
里中からの言葉に絶句する。
そうだ…俺…昨日の夜、
悠と話をしようと…
「っ…痛っ……なんだこれっ…」
「ヨースケ?…や、やっぱりおかしいクマ…ヨースケ…っ」
必死になって、引きずり出す様に思い出したのは、
揺れる悠の瞳と何か酷い後悔と恐怖の味。
ガタガタ震える手を必死に動かし
携帯で悠へと連絡を取ろうと服を探ると
いつも持っていたはずの携帯が無い。
じわりじわりと迫ってくる記憶。
「そうだ…落としたんだ…河原で…携帯………っ」
「えええ!大変じゃん!早く探しに行こうよ!あたし達も一緒に…」
「いや…いい…っ」
里中が騒ぎ出して、天城も心配そうに俺を見た。
一方、俺の中身がおかしいことを確信したのか
クマは俺と二人の様子を見比べてオロオロしていた。
何かが抜け落ちたような感覚が酷くて
昨夜の記憶が丸ごと無い。
代わりにあるのは耐え難い恐怖。
俺は一体どうしたんだ…
「悪ぃ!ココ頼む!」
みんなの声が俺を呼び止める中、
エプロンを外してクマへと預けると、
俺はそのまま走り出した。
「あれ?ようすけお兄ちゃん?」
「菜々子ちゃん!悠は…?」
息を切らせて慌てて堂島家へと来た俺に、
菜々子ちゃんは不思議そうにしながらも
扉を開けてくれた。
「ようすけお兄ちゃん、いつのまにおそとでたの?
ずっとお兄ちゃんといっしょにいたはずなのに…」
「え?…ずっと…悠と…一緒…………?」
俺は菜々子ちゃんからのその言葉に
背中にひやりと嫌な予感を感じて階段の上を見た。
何事も無い様な様子の、悠の部屋の扉が見える。
「菜々子ちゃん、俺達がいいって
言うまで上がってきちゃダメだよ?」
「え?ようすけお兄ちゃん?」
目を白黒させる菜々子ちゃんを置いて、
階段を駆け上がる。
ノックもなしに悠の部屋の扉を開けると、
予想もしない光景が広がっていた。
「なんだ…これ…っ」
悠の部屋へと入ると、部屋の中は
まるであのTVの中のように有り得ない世界になっていて、
悠の部屋のソファだけが、広大な世界に
ぽつんと置かれていた。
そしてそのソファには疲れたような表情で
目を閉じたまま動かない悠に、
その傍で寄り添うように座っている
機嫌の良さそうな『オレ』が居た。
『なんだ、やっぱり来ちまったのか…』
「え?なんだよ…これ…お前…まさかっ」
『そう…お前のシャドウだよ』
そう言ってにやりと笑う。
そう…コイツとは一度会っている。
だから判る…コイツは俺のシャドウ。
でも…俺はコイツを受け入れたはずなのに、
どうしてこんなことに?
『お前が受け入れられないものがあるからだろ?』
「え?俺が受け入れられないもの?」
『でも、お前がココに来ちまったってことは、
まだ欠片みたいなものが残ってんのか…』
俺がまるで見当がつかないと言った表情になると
それ自体を予想していたように薄く笑った。
『昨日の夜、お前自身が捨てたものに
何しがみついてんだか…な?悠……』
「え?夜?」
目を閉じたままの悠に
シャドウは上機嫌で話しかける。
夜のこと?
やっぱり俺は何かを…
薄く笑うシャドウが悠の肩を抱き、
俺へと吐き捨てるように言った。
『嫌なことぜーんぶ俺に押し付けて…』
「何を…っ…」
嫌なこと?やっぱり思い出せない…
昨夜からの記憶に何かあるのか。
俺自身からのまるで試すような問いに
何かがフラッシュバックして
目の前の視界を奪った。
湧き上がるような吐き気が襲い、
途端、俺はその場にへたり込む。
「ゲホ…ゲホ…っ」
『ほらほらーダメだってー』
「くそっ…お前!悠は?悠になにしたんだ?!」
『なにも』
怒りを隠せない俺に
シャドウは本当に何もないように言った。
「え?」
『なにもしてないぜ?
ただこうやってずっと一緒に居ただけだ』
「ずっと…?」
『こうやってずっと寄り添って…
だってこれが一番していたいことだったから』
「なにいってんだ…っ…」
まるで舐めるみたいに
シャドウは腕の中の悠に擦り寄った。
『お前だって同じだろ?オレなんだし?』
「っ…なんだよ…それっ」
『時間も間柄も何もかも関係ない…ずっとこうしていたい…』
「意味わかんねーよ!つーか、悠に何したんだって聞いてんだろ!!」
何度も同じことを聞く俺に
シャドウはしびれを切らしたのか、
呆れたように手を振って言った。
『だから何にもしてねーって…眠ってるだけだ
疲れてたみたいだったし?なんなら起こそうか?』
「え?あ、当たり前だ!早く…っ」
俺がそう叫ぶとシャドウは
まるで勝ち誇った様に笑う。
その表情を俺は不振に思いながらも
様子を見守った。
『悠?…起きろよ…ほら』
「ん…………陽介…?」
その声に心臓が跳ね上がった。
それがなぜだか判らない俺は
ただ呆然と見守る。
悠はぼんやりと目を開けると、
未だ焦点は定まっていない様だったが、
自分を抱き抱えていたシャドウへと
当たり前の様に俺の名前を呼んだ。
「陽介……?…っ…俺…目が……っ」
『悠、大丈夫だ…ゆっくり目を開ければいい』
「っ……悠…なんで…っ」
シャドウは覗き込むように
悠を見つめて囁く。
悠もそれに反応して何度も目を擦った。
俺は目の前の出来事に動けなくなる。
そんな俺を尻目にシャドウは
まるで俺自身であるかのように
悠へと振舞った。
『おはよう…悠』
「…陽介…俺は一体……」
「…っ………違う…っ…違う違う違う…っ」
二人の様子に俺は唸る。
喉の奥が枯れて泣きそうになる。
理由は簡単だった
悠が俺じゃないアイツへ
シャドウに向って
俺の名前を呼ぶのがたまらなく嫌だった。
悠が呼んでくれる俺の名前は
俺だけのものなのに…
俺だけの?何がだ?
俺は悠に何を………
欠片の様な、屑ほどしかない
俺の中の何かが反響して叫ぶ。
『悠……』
「陽介……?」
違う…それは俺じゃない…なのに…悠…
なんで俺の名前を呼ぶんだ…なんで…っ
いやだ…それだけは…っ
脳裏に浮かんだ言葉に
俺の全部が混乱した。
「悠……俺は……俺は…っ」
俺は息も出来ないくらい
何もかもを止めたまま、
目の前で展開されるその様子を
ただ呆然と見ていた。
It continues to the next…
長!;;;;;
さてはて…やっとご対面の陽介達です。
ジュネス→堂島家→悠の部屋(TVの中??)
な移動具合でした;;;;(だから長いのか;;)
元々は主題の鳴上くんの葛藤とかを織り交ぜて、
陽介の気持ちの進展を書きたかったのですが…
いやはや;;
ちゃんと終わりに向けて走っておりますので!!;;
これからなんとかかんとか進みますーー;;
楽しんで頂けたら倖い。
次回もお付き合い頂けたら倖い。