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【君の壊れる音(12)】

【陽介視点】
鳴上からの告白を受ける陽介。陽介は……。
UP遅くてスミマセン;;;





拍手[1回]








目の前の泣いている様な悠の表情。

俺はまるでそれが遠くの世界の出来事の様に感じて、
それをなんとか掴みたくてさらに目を見開いた。

「ごめん…陽介…っ…本当にごめん…」

でもそれは現実で。
俺は悠からの言葉を反芻し、自分と悠の姿を交互に見る。
それでも置かれている状態が上手く理解出来なくて
俺の思考は更に混乱した。

「ごめん…っ…」
「悠……っ」

何度も何度も謝って、無理に笑う表情にも
俺は自分を取り戻せなくて。

ゆっくりと俺から離れてゆく悠の体を
呆然と見送ってしまう。

「悠…っ…」
「これだけだ…お前にとても言えなくて隠してた…っ」
「待っ……お前…っ」
「お前に…陽介に合わせる顔がない…」
「違う……っ」
「陽介……?」

悠が見せた、壊れる前の様な引きつった笑い。
いつもとはまるで違うその表情に、
気が付くと俺は叫んでいた。

「違う……違う違う違う!!」
「陽介?」
「違う…っ…違うんだ、悠…
 やっと判った…俺、怖かったんだ…お前を失うのが」

話す声が引きつる。
本当のことを、一つ一つ手繰り寄せるみたいに俺はお前に話す。
思い出したことと、突きつけられた現実とが
一緒になってグルグル回って、
頭のてっぺんが殴られた様に痛い。

でも、話さないと…伝えないと。
俺の中の恐怖を、お前に。



「悠…俺もお前が好きだよ……でも…っ」

突然別れてしまったあの人の面影に
俺はお前を重ねる。

あの時の空虚を俺は一生忘れないだろう。
守りたかったあの人とお前を俺はいつの間にか重ねてた。

でも違うって…気がついたんだ。


俺を導いてくれるその後姿に憧れて、どこにも属さないのにちゃんと
自分の足で立っていられるお前を羨ましく、そして自慢に思った。

いつの間にか違う感情が
俺の中で育っていることにさえ気づかずに。

それどころか俺は必死でお前の後を追っているのに、
肩を並べて歩いている錯覚を起こしてた。

俺の気持ちは、まるで川が海へと流れるみたいに
お前に辿り着いて離れなくなった。

優しいお前は俺の我儘を受け入れてくれたし、
お前の傍は誰と一緒にいる時より心地が良かった。

「お前は優しい……」

決して突き放さないお前に
俺は甘ったれて、依存して……。

その優しさが無期限で俺だけのものだと
愚かな錯覚さえ起こした。

「俺はホント、ダメなんだよ……お前がいないと…っ」
「陽介……」

そしてまた一つ気がついた。
この関係は期限付きのものであると。

「お前はいつかはいなくなっちまうから……っ」

お前はいつか向こうへ帰っちまう…
そしたらこの心地いい居場所はなくなって
俺はまた一人であの夕焼けの道を歩くことになる。

「そしたら、俺はまた置き去りにされる…
       それが怖い…すげー怖くて仕方ない」
「陽介……」


一方的に話して話して、話し続けて。
俺の中身の鬱屈とした内容を
目の前のお前がそのまま受け止めた。

「好きだとか…なんだとか色々言っても、お前はいなくなっちまうから」

「どんなに距離を縮めたって俺を置き去りにして、お前はいなくなるから…っ」

「だったら…こんな気持ち知らない方がいい…」

「もう嫌なんだ…思い出と一緒に置き去りにされるのは」

置き去りにされてお前の面影を引きずったまま、
夕焼けに飲み込まれるみたいに独りで歩いていくのが嫌だった。

「陽介…」
「俺も好きだよ…悠…でも俺はこれはいらない……っ」

張り付いた恐怖の名前がわかった。
俺は怖かっただけだった。
逃げたいだけだった。

酷い話しだ。

お前に拒絶されるのが怖い、でもお前が欲しくて仕方ない。
でも、別離も怖い…怖い怖いってそればっかり考えてた。

お前への気持ちを自覚しそうになると、
シャドウに記憶を押し付けてまで俺は逃げようとした。

お前はちゃんと俺のことを考えていてくれたのに……
もう、どんな顔をしてお前に向いたらいいのかも判らない。

「謝らなきゃいけないのは俺の方だ…ごめん、悠…」



いらないなんて本当は嘘。

だけど、いらないって言わないと、拒絶しないと
俺はお前が欲しくて欲しくて仕方ないから。

置き去りにされるのを承知で、お前を求めてしまいそうだから。

その後の俺の壊れる姿が容易に想像出来て怖い。
甘ったれの俺はきっとボロボロになる。
お前がいないとダメなんだよ、きっと。

「好きだよ、でも……俺は…っ」

再び俺が全てを手放そうとした瞬間、
焼ける様な頭痛と共に何かが聞こえた。

『また逃げるのかよ!?』

そう頭の中で声が響いた。
反響する声が俺をその場に思い留まらせる。

「陽介!? どうした?」
「悠……っ」

目の前の悠の心配そうな瞳と
脳内の反響が俺を繋ぎ止めてくれた。

また道を反れそうになったのか、俺は……。

「うっ……」
「陽介…!?」



途端、打たれる様な痛覚を感じると、
目の前がぼやけ、俺は気を失った。


視界はそのままぼやけ、数秒後に再び焦点を合わせる様に
クリアになったかと思うと、体は真っ黒な空間にいた。

真っ黒な空間の白いアーチの前で、
俺は独りぽつんと立っていた。

アーチの奥に見えた姿は俺のシャドウ。
怒りに湧き立つ視線でこちらを睨むと
噛みつく様に言った。

『あんなにまでして取り戻そうとしたくせに、なんで逃げんだよ!』
「だって……俺は…」

一瞬にして連れて来られた場所。
ここはどこなんだろう? などと考えながらも
呼ばれるみたいにアーチをくぐって入った。

真っ黒な空間の中、白い支柱に支えられた円形の建造物。
白い大理石の様な石で出来た、エクステリアと言うのだろうか?
そこには俺と俺のシャドウの二人しかいない。

『お前……っ』
「だ、だって……」

躊躇する俺をまるで汚いものでも観るみたいに一瞥すると、
泣きそうな表情で俺を睨んだ。

『好きなんだろ! だったらいいじゃんか!』
「でも……っ」

戸惑う俺にシャドウは更に声を上げる。
まるで泣き叫ぶ様にそれは反射して俺へと届いた。

『思い出は消えない! 悠と過ごした時間が消えるわけじゃない……っ』
「そ、それは……っ」

シャドウの言葉に、俺は過ごした時間や交わした約束を思い出す。
思い出そうとした瞬間、まるでそれは溢れる様に甦って来た。
それはそうだ……それは俺にとってかけがえのない時間だったから。

『俺の中にもお前の中にも、思い出ってヤツは残ってる……だからっ』
「……」

俺の中にもシャドウの中にも、残る時間と記憶。
かけがえのない時間といくつもの場面は、
今も俺に優しく語り掛けてくれる。

それは優しくて甘くて、楽しくて。
でも辛さや悲しさも含んでいて…
それはさまざまな感情と思いの濁流の様だった。

分かっていたんだ……だって、それは
まぎれもなく、俺達が寄り添い必死に生きた時間だったから。


「……俺…」

思い出が重たく感じる時もある。
けれど、思い出が背中を押してくれることもあるんだと
俺は忘れてしまっていたのかもしれない。

「ああ、そうだよな……」

きっとこれから何度も間違えそうになる。
俺は凡人だし、悠みたいにカッコよくなんて出来ないし。

努力も悔しさも何もかも全部きっとこれから、
人より何倍もしないとダメなんだろう。

けれど、その日々をを後ろから支えてくれるであろう
思い出や気持ちを全部否定するなんてもっとダメなんだ。

それをしてしまったら、今ここで立ち上がる
力さえ捨ててしまうことになる。

「名前……」
「は?」
「お前の名前……」

シャドウからの突然の問い。
意図を理解出来ず、俺は戸惑いながら返答する。

「な、なに言ってんだよ…お前も俺だし、名前なんて…っ」
「いーから! な・ま・え!」
「は、花村陽介……」

シャドウは苦々しく口を曲げると、
ふと懐かしい様な表情になり子供みたいに笑った。

「なんだよ、ちゃんと言えんじゃん……聞こえねー? 呼んでる声」
「え?」

シャドウが指差したのは、上の方。
それはそれは遠い上空から、
俺の名前を必死に叫んでいる声が聞こえた。
あれは紛れもなく、悠の声で。

「悠……っ」
「すげー呼んでんな……はは、すげーでけー声……」
「ああ……」

起きろとか、目を覚ませとか、ごめんとか。
それこそいつもなら絶対しない様な
余裕も何もかも無くなった、泣き叫ぶような声で。

悠は今出来る限りの声で、必死に
俺の名前を何度も何度も呼んでくれてる。

「悠……」

こんな俺でもまだ呼んでくれていることや
必要としてくれていることが嬉しい。

何度も間違えるバカな俺を、何度でも呼んでくれる。

まだ期待してもいいんだろうか?
お前とのこの後の時間を紡いでいけると。

お前と過ごした時間を支えにして、
独りの時間を耐えることを許してくれるのだろうか?

『どうだよ? まだダメか?』
「俺……」

何度も響く声……悠の声が体中に響いて、
立ち上がる力をくれるのがわかった。

俺は下唇を噛み泣き出しそうな涙腺を堪えると、
シャドウへと笑いかけた。

「悪ぃ……俺、まだ行けそうだ……」







「陽介!? 陽介!?」
「悠?……っ…」

未だ半分ぼやけたままの視界。

「陽介! 良かった、気が付いたのか……っ」
「悠、ごめん……俺…言わなきゃいけないことが……っ」

その場に膝をつき項垂れた俺へと、
悠が心配そうにのぞき込んで来る。

「陽介……?」

ぼやけた視界がはっきりと悠を映した。
俺はすがりつく様にして悠の手を繋ぐ。

「悠、俺……っ」

大事な事を伝える為、声を出そうと
俺が空気を吸った時だった。

「え……!?」
「陽介……? どうした?」

悠の瞳が、必死の形相をした俺を映したのと同時に、
俺はその背後に怖気の走る姿を見た。

「悠……っ…逃げろっ!!」
「え……?」

俺は悠をかばおうと前に出ようとするけれど、
目の前で笑う冷やかな好意への恐怖が
俺をその場に縫い付ける。

「うん……そう、動かない方がいい」

八十神高校の制服を着た長身の体。
無駄のない筋肉に、身のこなし。

いつも隣で頼りにする相棒の姿が
もう一人……その瞳は金色に輝き、
何かに魅入られた様に俺を凝視して笑った。

「悠のシャドウ……っ」

その優しく冷たく笑う姿に体が動かなくなる。

圧倒的な威圧感とその笑みが、
俺の背中を甘く撫でた気がした。

「待ってたよ、陽介……」



to the next…














すごいのんびり更新で申し訳ないとゆーか;
まだあとちょっと;;
頑張ります><。

楽しんで頂けたら幸い。
次回もお付き合い頂けたら倖い。
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