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C87:主花R新刊『Lagrangian point』サンプル

PQ前提・主花本
突然の隊列変更で後列になった陽介。
主人公の様子がおかしいことに気がつくが…… 


 
『Lagrangian point』(ラグランジュポイント):400円

※年齢指定本となっておりますので、
頒布時に年齢を確認させて頂くことがあります。
あらかじめご了承下さい。


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「悪い陽介、前線から抜けてくれ」
「え? お、おう……っ」
「あんまり頑張りすぎるな、まだまだ先は長い」
「わ、わかってる……っ」

慣れないダンジョン。
F.O.Eに追いかけまわされるストレス、仕掛けやフェイク
ばかりの回廊に少し疲れてきたころだった。

「陽介の代わりに誰か。陽介は最後尾頼む」
「お、おう……わかった」

突然の隊列変更に、俺の思考は思わず固まる。
鳩が豆鉄砲を食った様とは、このことかもしれない。
「みんな気を付けて、敵もだんだん強くなってるから!」
りせの声に反応する様にお互いに声を掛け合って進む。
俺は突然言い渡された変更に明らかに動揺しつつも
一瞬で表情を取り繕い隊列外、最後尾へと下がった。

「あ、花村くん。こっちに来たんだね」
「お、おう……まぁ、小休止ってヤツ?」

ワザとらしくおとけて見せると、天城と岳羽が笑う。

「結構大変だったでしょ? 前線って」
「え? あ、あぁ…まぁな」

大変? 今までそんなこと感じた事も考えた事も
無かったから、言われて改めて隊列外から前線を見ると
確かに連戦につぐ連戦で休む暇もない様に見えた。

「……あんなでも全然ヘーキだったんだけどな…俺……」
「え? なにが?」
「な、なんでもねーって……ははっ」

今まで前線で気を張っていた所に突然の交代を言い渡され、
驚くのと一緒に降って来た軽い失望感…思わず声が漏れる。

「もしかして、俺って戦力外みたいな?…………」

嫌な言葉が脳裏をよぎるから、それを振り払うみたいに
無心になって回廊を抜けつつ、先頭の悠の表情を盗み見た。
予想通りとゆーか…普段と変わらない姿に苦く呟いてしまう。

「あー…やっぱ、ちょっとショックかも……」

相変わらずの鉄面皮にガッカリする。
更には俺が抜けたはずの前線が、俺がいなくても問題なく
機能している様に見えたことも軽くショックだった。

「いや……ちょっとどころじゃねーかも」
「花村先輩? 何かありましたか?」
「い、いや……なんでもねー……っ」
「なんか元気ないよねー花村」
「そんなことねーよ? ほらほら超―元気!」

不思議そうに覗き込んでくる後列のメンバー。
そうだ、そうだった……ちゃんとコイツら連れてかねーと。
いくら戦闘に参加してなくても、アイツに頼まれてんだから。
後列を俺にたくした相棒は、先頭を颯爽と走り続けていて
こちらを振り向く素振りさえ見せない。
だからだろうか、余計に心がひねくれて行くように思えた。

『腐らない……ちゃんとやる』

そう自分自身に言い聞かせつつ、俺も後を追った。


「そうそう、それでさー」

その後何度かトラップがあっても無事に進めていたせいか、
それともこれまで気を張っていたのが後列に来て一気に気が
緩んでしまったせいもあったのか、女子との会話に花を
咲かせていたら先頭の悠から注意の声がかかった。

「陽介しゃべり過ぎ。後列だからって気を抜きすぎだ……」
「あ……わ、悪ぃ。気をつける……っ」

ん? 悠、なんか機嫌悪い??
滅多に聞けない程の語尾の強さで注意されて、
俺は目を見開いたままビックリして固まってしまう。
すると、そんな俺を注意をした側であるはずの悠も、
俺と同じくその場に固まってしまっていた。

「……はぁ…」
「悠? どした?」
「いや……こっちこそ悪い…」
「は? え? いや、俺が悪いんだし……?」

まるで俺の視線から逃げる様に無言で踵を返す悠。
バツの悪そうなその表情と仕草があまりに不自然だったから、
前後のやり取りを反芻して俺は一つのことに気がついた。
もしかしたら悠の方が無理をしているんじゃないかって。
元々なんでも出来るからみんなが頼りにする。
俺も含めて、寄りかかり過ぎなのかも……。

「悠、ちょっといいか? みんなはこの辺で休憩でー」

そんなことを考えると矢も楯もたまらなくなって、
近くに休憩出来そうな場所を見つけると悠へと手招きする。

「陽介、なんだ?」

休憩場所から少し離れた場所へと悠を連れて来ると、
俺はその正面へとワザとらしく仁王立ちして言った。

「お前、なんか無理してねーか?」
「え? いや……大丈夫だけど? どうして?」
「なんか、さっき機嫌悪そうだったから……
        もしかして疲れてんのかなーって」
「あ……あれは違う……」
「な、なんだよ」

また焦った様な表情で俺から目を逸らしたから、俺はそれが
とても気になってしまって、悠の顔を覗き込む。

「もしかして……俺になんかあんのか?」
「だから違うって、俺のことは気にしなくていいから」

気にしないわけねーだろ! つーか気にするだろフツー!
相手がお前だから尚のこと気になる……なのに、
悠は目を逸らしたままこちらを向いてくれない。
他人行儀な様子に俺は苛立ってしまい反射的に声を上げた。

「な、何が違うんだよ! き、気になるから言って……ふぁ!」

声を上げると、悠は手で俺の口を塞いで耳打ちする。

「……声が大きい。俺達が揉めてたらみんな心配するだろ?」
「お、おう……悪い」

そしてそのまま、『心配してくれるのは有難いけど、大丈夫』
なんて、月並みな言葉と笑顔で俺へと返すから、俺はそれを
全然信用出来なくて眉根を寄せて睨み返す。
それを見た悠は、誤魔化す様にニヤリと笑うと言った。

「じゃあ……する?」
「は!? す、するって……バカ! す、するかぁ!!」
「いや、疲れている時は余計欲しくなるというか……」
「お、おま……チョーシ乗んな、やっぱ疲れてんじゃねーか!」

そう言って悠の額を軽く手の平で叩くと、少し痛がりつつも
嬉しそうに笑って俺の目を覗き込んだ。

「すごい……する? で、わかったんだな。流石、俺の相棒」
「全っ然嬉しくない! ナナメ上に褒めるな! 
        お、おま……わわ、わかるだろ! フツー!」

健康的な男子ですし! 悠と俺は付き合って……って…っ
と、とにかく! 俺がこーんなに心配してんのに、
コイツはコイツで肝心なこと茶化してんのだけは分かった! 

「バカ! 心配してんのに……っ」
「うん……それはごめん。悪かった」
「……悠? ホント大丈夫か?」

再度聞き返すと、悠は視線を伏せ笑う。
そういう表情されると、何も言えなくなるじゃないか。
いつもそうやって無理するから心配なのに。

「悠、ホントにダメな時はちゃんと言えよ?」
「ああ……」
「な、なんなら俺、前線戻っても……っ」
「ダメだ。陽介疲れてるだろ? 無理だけはダメだ」
「そんなの……っ」

まだ今みたいに軽口を叩けている間は大丈夫だろうけど、
知らない間に無理をする相棒が、俺は心配で仕方ない。

「悠、ホント……ちゃんと…っ」
「ああ……大丈夫。陽介こそちゃんと休めよ?」

俺の頭をポンポンと撫で、軽く笑うと前線へと帰っていく。
その背中はやっぱり疲れている様に見えた。

『あんな疲れてんのに、俺……いらないのか。』

そんな子供みたいな呟きを誰にも気づかれない様に落とす。
色々気にかけてくれてるのは嬉しいんだ…けど…。
慣れない相手との方が逆に疲れたりしないんだろうか?

「いや、みんな俺よりすげーのは知ってんだけどさ……」

八高のメンバーに加え、月高メンバーも驚くほどに強い。
だから……俺一人が抜けたくらいでどうにかなる
ワケもないことくらい分かってたんだけど。

「ちゃんと休めよ……か」

お前の為だったらちょっと無理するくらいヘーキなのに。
俺、すげー頑張っちゃうのに……なんて、そんな
気恥ずかしいけれどホントの言葉をとうとう言えないまま、
俺は後列へと戻って行った。




「うわっ……わああっ!」
「陽介!?」

先程のやり取りからぼんやり歩いていたせいか、
視界の中に突如現れたエスカレーターに足を取られた。
床は思っていない方向へと俺の体を運び進ませると、
そのまま仲間とは逆方向へと転がってしまう。

「え、うそ!? ちょ……いってぇっー」

勢いよく転がったせいか、一気に隊列と引き離される。
もう何が何だか、さっきから踏んだり蹴ったりだっつーの!
軽い痛みと視界の回転に翻弄されてうずくまっていると、
背後に不気味な視線を感じ振り向いた。
そこにはF.O.E……俺は反射的に声を上げる。

「え、F.O.E!?」
「陽介……逃げろっ!」

離れた場所で混乱する仲間の声と、叫ぶような
悠の声を聞いた途端俺は立ち上がった。

「一人でなんとか逃げるから、別の地点で落ち合おう!」
「待て、陽介! ダメだ、そっちは!」
「大丈夫、心配すんなって!」

ミスった! でも悠にこれ以上の負担はかけられない。
きっと大丈夫、ずっと一緒に進んで来たんだし。
悠の声を背後に聴きながら俺は駆け出した……でも。

「あ、あれ? ここは……っ」

駆け出した通路……別? 別の地点ってどこだっけ?
おぼろげに覚えていたはずだった道順は、混乱の為か
一瞬で彼方へと遠ざかる。

「えっと……この先…………うわぁっつ…また来たっ!」

再び背後へと迫るF.O.E。
俺はF.O.Eから逃げる為に必死に走り続けるんだけれど、
闇雲に走り回ってしまっているせいか、気がつくと見覚え
どころか全く見たこともない通路へ出てしまう。

「お、落ち着け、落ち着け……た、多分ここを

曲がったら通路…って、あれ!?」
ある筈の通路がない…その途端覚えていたはずの道順は
彼方どころか、真っ白に消え去ってしまっていた。

「マジか……っ」

もう仲間たちの姿は完全に見えなくなっていて、
ナビの風花の声も、距離が遠いせいだろうか全く聞こえない。

「ここ、どこだ……?」

呼吸が急く様に浅く早く繰り返すから、俺は動けなくなる。
次の通路を探せばいいのにそれすら出来なくて、
広大な迷路を眼前に、俺は完全にパニックになってしまったのだった。

「落ち着け、落ち着け……っ」

心臓の音がすごく五月蠅くて、嫌な予感が背中を舐めてきて、
ガンガンと後頭部を打ち付ける様な警鐘が鳴り響く。
このままここに独りきりで閉じ込められる可能性とか、
最悪ここのシャドウにやられるとか、
そんな最悪のことばかりが次々に浮かんでは消える。

「俺、どうすれば……っ…ゆ……っ」

一瞬脳裏に浮かんだ名前を呼ぼうとしたけれど、
俺はなぜだかぐっとそれを堪えた。

「自分一人で……なんとかしねーと…っ」

胸に詰まった息を吐き出し顔を上げ前を見ると、
気が遠くなるくらいに眼前いっぱいに広がる迷宮。
きっとみんな心配して待ってる、早く戻らなきゃ。





俺はガクガクと震える膝に力を入れ、
次を考えようと額の汗を拭った。

「マップは……そっかアイツが持ってたか……」

アイツはこんな広大な迷宮で先頭に立ってやってたのか。
一緒に見ていたはずの道順は、相変わらず全く思い出せない。
逆にいつも追いかけるばかりのあの背中を思い出してしまい、
やるせなくなり唇を噛むと下を向きため息を吐いた。

「俺、なにやってんだろ……っ」

どうにもならない愚痴をこぼして泣きそうになる。
だが次の瞬間、背後に異質な気配を感じると、
ヒヤリとした冷たさに後押しされる様に振り返った。

「っ……さっきのF.O.E……!」

自分の声がそう叫んだのを聞いたのとほぼ同時に、
俺は強い衝撃と共に床に叩きつけられてしまう。

「あぅっ……」

悲鳴も上げられないまま、焼かれる様な痛みが駆け巡った。
床へと突っ伏し口を開けると、肺が嫌な音を立てて呼吸する。
あれだけの衝撃を食らってまだ生きていることに安堵しつつ
立ち上がれない程の痛みに、自らの迂闊さを今更に痛感した。

「…くそっ…一瞬でコレかよ………っ」

火炎の攻撃だったのか、喉が焼かれるみたいに痛い。
握った苦無で反撃しようにも使い慣れた武器がいつもより
数倍重く感じて、持ち上げることも出来なかった。

「く……力っ…入んねえ……っ」

戦うどころか、逃げることも防ぐことも出来ない。
これはいよいよヤバいか? と、俺がぼんやりと何かを
覚悟した瞬間、遠くの方で高い女性の声が響いた。


「リーダーいました、花村くんを発見! あっ…F.O.E!」
「陽介……っ!」
「悠……っ」

立ち上がるどころか動くことも出来ないまま、霞んだ視界の
中で俺の名前を呼ぶ悠を見つけると必死に名前を呼んだ。












「この後、このまま 〟こ~ぼ~〝 までデートってことで」
「はぁ??」

突然告げられた言葉に俺が思わず素っ頓狂な声を上げると、
悠はニヤリと笑って耳打ちする様に近寄って言った。

「誰かさんのせいで買ったばかりの九十八式軍刀、折れたし」
「う! す、すみません……」

そうだった、さっきの戦闘で剣が折れてしまったのだった。
根元から折れてしまった刀を見て、悠は目を細めて笑う。

「久々に、二人きりでショッピングってことで」
「お、おう! 行ってやろうじゃん…っ」

俺が上擦る声で了解をするから悠はそれが面白かったのか
いつも通りニヤリと笑いつつ立ち上がると、まるで流れる
様な仕草で俺へと手を差し出して来る。

「へ?? 手? 悠?」
「エスコート、ダメ?」
「お、おま……バカか……っ」

笑顔で差し出された手を見て反射的に赤面するけれど、
意を決すると差し出されたその手を取りまっすぐ悠を見た。
「こ~ぼ~までだとあっという間だから、少しだけ遠回り」
楽しそうな様子の悠…予想通り、指先の冷たいその手は
俺が触れると指を絡めてしっかりと繋いで来る。

「お、おう……」

教室を出て歩き始めると、文化祭の風景を横目に通り過ぎた。
手を繋いで文化祭を回るなんて、現実世界じゃ到底出来ない。
嬉しいのと恥かしいのとで動揺する俺へと悠は声をかけた。

「陽介、俺さ……」
「う? お、おう?」
「……すごい緊張してる、どうしよう?」

目の前にはニヤリと笑う悠…嘘つけ! 全然フツーじゃん!
その言葉と様子に俺は呆れ、悠へと口を尖らせながら聞いた。

「悠? あ、あのさ……ホントに緊張してんのか?」
「緊張してる。多分、相手が陽介だからだな……」
「う、嘘つけ……っ…お前はまたそーやって……っ」

また俺をからかって…そんな疑いの目で悠を見ると、
繋いだその手が少しだけ汗ばんでいるのに気がついた。

「ん? なんだ、陽介?」
「い、いや…なんでもねー…っ」

バカ…表情筋、仕事しろ……俺は悠に聞こえない様に呟く。
お前はホントわかりづれー…でも、こんな風に俺だけに
無防備に心を晒してくれるのはとても嬉しいし、
俺もこんな風なるのは、やっぱお前だけなんだと改めて自覚する。

「悠……俺も緊張してるかも……っ」
「そうか……一緒だな」

確か、こ~ぼ~まではここを曲がってもうちょっと行った先。
迷宮みたいに入り組んではいないし、距離も長くはない。
だからこそ、もうちょっと長く、もう少しだけ時間が
ゆっくり進みますように……なんて、俺は願ってしまう。









と、こんな感じで行きます。
何卒よしなに。
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