Polaris
【誰よりも誰よりも君を愛す】
センセイの捏造職業とか妄想がちょろっと
出てきちゃうので、お嫌な方は回れ右ー;;
縛る
息も絶え絶え
指輪のサイズ
な、感じで。
いってらっしゃいませ。
「陽介、縛っていい?」
「は?! な、なんだよ! それ!」
「ん? 陽介?」
きょとんと本当に不思議そうな
顔をして俺を見つめる悠。
その割に、腕だけは俺の腰に回して
ガッチリしっかりホールドしてる。
逃れようにも逃れられない状況の中で
俺の怒りは頂点に達した。
久しぶりに顔見たと思ったら
急にワケわかんないこと言いやがって!
人の気も知らないで、ふざけんな! チクショー!
悠のバカ!バカバカバカー!
・
・
・
そんな怒号を深夜の、しかも悠の部屋で叫べるはずもなく…
俺は悠からのいつも通りの突拍子もない発言に
深い疲労感を感じるだけだった。
ことの発端は数十分前。
俺は悠から渡されていた部屋の合鍵を使って、
深夜、誰もいない部屋へと勝手に上り込んでいた。
主が居ないのは知ってる。
今夜は夜勤だって言ってたし。
それでもなんとなく気配を殺しながら廊下を抜け
慣れた手つきでリビングの照明のスイッチを押した。
相変わらず必要最低限しか物が無い
悠の部屋の状況が浮かび上がった。
家探し?違う違う。
そんなんじゃねーんだ。
社会人になってしばらくして
恋人同士の俺達でも
なかなか会えずにいて。
お互いがお互いに独り暮らしを
満喫しているのも手伝ってか
俺たちの距離とか一緒に過ごす時間とかは
どんどんどんどん無くなって行った。
昨日も約束すっぽかされたばかりだった。
俺、結構楽しみにしてたんですけど…ね…悠さん?
声にならない呟きを
胸のあたりに貯めて唸ると
溜息を誤魔化すみたいに部屋を見回した。
雑誌でも無いか?と。
あいつ、乱読家だから興味のある内容の本なら
なんでも読むから。
そう考えながら部屋を見回すけど
予想とは反して、雑誌や文庫本一冊だって
置いてはいなかった。
しばらく会えていないから
悠が今、どんなことに興味があるのか
知りたかったのに。
うん、ぶっちゃけそれだけなんだけど…。
あと……少しだけあてつけっつーか…そんなのもあったかも。
朝まで待って、驚かせてやろうか?とか。
そんな複雑な色々な考えでぐるぐるするから
気が付いたら、ココ来てたっつーのがホントかも。
それにしてもあまりに何もなさ過ぎて
ココが本当に悠の部屋なのか疑いたくなる程だった。
「こんな…感じだったか? あいつ…」
完全に寝に帰ってるだけって感じ。
出来たらクリスマスくらいは一緒にって
思ってたから、今どんなものに興味があるのか知りたくて。
でも、改めて見回しても
部屋にあるのは俺が勧めて買った家具と
俺と見たカーテンと、そして俺と一緒に買った家電と。
なんか見覚えありまくりの、俺のおススメの生活雑貨が
ポツンポツンとあるべき場所に置かれているだけで。
大事に使われてはいる様だったけど
今の俺には、それらはただ『置かれているだけ』の様に感じてしまうから
なんだか俺自身がココに置き去りにされた気分になった。
「なんか…このままココ、明日にでも引っ越しちまえそうだな…」
俺を置き去りにして…
なんて、自嘲気味に言うと
泣きたくなって胸が詰まった。
それにもしこんなとこ見つかったら
激昂されて、クリスマスどころじゃなくなって
下手したら別れ話とか切り出されそうな気がする。
そ、そりゃ…勝手に入り込んで、勝手に家探ししてりゃあな…
・
・
やややや、ヤバい! ぜっんぜん考えてませんでした!
ど、どうする…つーか、もう入っちゃったし!
ご、ごめんなさい! ごめんなさい!
血の気が引く…そうなったら最悪だ。
想像しただけで頭が重くなる。
帰ろう! そう決心して踵を返した所で
玄関から物凄い音が聞こえてきた。
明らかに何かが倒れこんだ様な音だった。
「え? 悠??」
まさかまさか…と思いつつ
恐る恐る玄関を覗くと
いる筈のない、この部屋の主が
床へと倒れこんでいた。
床へと突っ伏して、息も絶え絶え。
俺は反射的に悠へと駆け寄っていた。
「っ…悠?! だ、大丈夫か?!」
「ぅ…? 陽介? なんで?
ああ…俺、とうとう幻覚を見るようになったのか…」
「ち、ちげーって、本人ですうう! って、
そーじゃねー! だ、大丈夫か?」
救急車呼ぶか?と俺が呼び掛けると
いらないと言って重そうに体を起こした。
どうやら連日の夜勤でフラフラになってしまったから、
今夜は帰れと言われて帰宅したらしい。
見ると、最後に会った時より幾分か痩せていて、
過労なのか、やつれているようにも見える。
「悠? 本当に大丈夫なのか?」
「……多分」
フラフラとしながらも、
不思議そうに俺を見続ける様子は
確実におかしい。
「陽介が…いる…」
「え? あ…あぁ、悪ぃ…勝手に入っちまって」
「いや…いいよ別に、陽介なら……うん…本当に陽介だ…」
「え? いや、ちょ…ちょっと…」
突如として、色々と俺を触り始める悠に
俺は驚いて少しだけ体を離した。
そうすると悠は一瞬悲しそうに眉根を寄せて
空いた手をワシワシと握る動作をする。
そしてその動作が止まった途端、一息に俺へと距離を詰めると
俺自身の聴力を疑う程の、とんでもない言葉を言い放った。
「……陽介、縛っていい?」
「は?! な、なんだよ! それ!」
「ん? 陽介?」
きょとんと本当に不思議そうな
顔をして俺を見つめる悠。
その割に、いつの間にか腕だけは俺の腰に回して
ガッチリしっかりホールドしてる。
縛る? なんだそれ? 意味わかんねーよ!
「お、おま…なんだそれ?!」
「ん? ダメか?」
「だ、ダメとか…そーいうことじゃねーだろ!」
久しぶりにちゃんと会って会話した内容が
こんなことだなんて。
逃れようにも逃れられない状況の中で
そんな卑猥というか、アレというか
ムードも、優しさも、俺の気持ちも…何もかもを無視した
悠からの言葉に、俺の怒りは一気に頂点に達した。
「悠…っ…お前…」
「ん? 陽介? どうしたんだ?」
俺の様子に不思議そうに
小首を傾げる動作をする。
お前本当に分かってねーんだな…。
でも深夜だから叫んだり、大きな声を出すわけにも
いかなくて、俺は唇を噛みしめながら
(最悪、俺の聞き間違いってこともあるだろうから)
再度、悠へと聞いてみた。
「悠、もう一回聞くからな?…っ…今、なんつった?」
「うん、だから…」
やっぱり次に続く言葉は『縛っていい?』で。
俺は(例え俺の無断侵入が理由だったとしても)
久しぶりに会えたのに、喜ぶとか、約束へと謝罪とか、
色々足りない悠との会話に激昂しつつも愕然とする。
こんなにも気持ちが離れてしまったのかと嘆くと、
俺の頭の中をおかしな熱が支配して、それは響くような
音を立てて、熱自身が駆け巡っている様に聞こえた。
なんで…どうして? なんども頭を駆け巡る言葉。
グっと堪えると逆に涙が出てくる。
会えない寂しさは俺だけが感じていたのか?
お前はそんな意味のわかんねー言葉だけで
俺と対話しようとしてるのか?
頭の中で回る熱が噴き出しそうに悲鳴を上げると、
耐えきれなくなった俺は胸に沈んだ声を
一息に吐き出した。
「っ…ふざけんな! 最低だ…っ…久しぶりに会えたのに…
お前にはそんなことばっかりかよ…!!」
「え? …陽介?」
深夜だから叫べない?
違う…本当は悲しくて
胸が詰まって声が出なかっただけ。
だから一息に吐き出した気持ちが漏れ出ると、
俺の言葉は止まらなくて、悠を罵倒するみたいな
言葉ばかりが口から飛び出た。
泣きたくないのに、
俺の目からは涙が溢れて止まらない。
どうして? なんで? って
お前を責める言葉ばかり浮かぶ俺が嫌で。
でも責めずにはいられなくて。
俺から離れていってるかもしれない
悠の気持ちを目に見えて晒されたみたいで
悲しくて仕方ない。
俺は反射的に悠の胸を拳で叩くと
深夜であるのに泣きながら喚いた。
「っ…ふざけんな…バカ! バカバカバカ!
もうお前なんか知るか!」
「よ、陽介?」
「くんな! さわるな! ヘンタイ!」
「え? あ! ……あぁ…ごめん…本当にごめん…陽介…
俺、全然頭働いてなかったみたいだ…」
「そんなん知るか! って…え? ゆ、悠?」
悠はそう言うと、くしゃくしゃと
自らの前髪を掻きむしって、自分自身に
イラついてるみたいな様子で唸ると
俺には聞こえ辛いけれど
しっかりとした口調で呟いた。
「……縛っていい? 陽介を」
「い、いや…だから…悠…」
お前、俺の話聞いてたか?
俺がこんなに必死になっているのに
お前にはもうそんなことも
どうでもいいのかよ?
脱力する気持ちと体をなんとか
保ちつつも視線だけはどうしても
睨んでしまうから、俺はそれを隠せないままぐっと
拳を握って唇を噛み締めた。
俺が色々な感情に振り回されているのに気づいていないのか、
悠は熱にうなされたような状態でフラフラしながらも
俺の手を取って、手の甲へと触れるくらいのキスすると
祈るように言った。
「俺が買って来る指輪で、陽介を縛ってもいい?」
「は?……え?」
は? え?
い、いまなんつった??
指輪? え?
途端、大混乱に陥る俺の頭の中をさらに混乱させる
悠からの言葉が、流れ込む様にいくつも叩き込まれる。
「うん、俺が買ってくるから…どんなのがいい?」
「ちょ…悠? えっと…ゆ、指輪って…」
「それで、それを陽介の左手の薬指とかに、はめてもらってもいい?」
「くく、薬指…?」
俺が目を白黒させて聞いていると、
悠は『婚約指輪的な感じで…』って、
またすごいこと言う。
それはなんかうわ言みたいな口調なんだけど
視線だけは俺をしっかりと見つめてて。
その要求は今まで貰ったどんな言葉よりも
俺をここへと縫い付けたから、俺はお前から目が離せない。
こんな風に言われたのは、いつぐらい前だろう?
沸き立つ感情に、俺の鼓動は五月蠅いくらい鳴り響いた。
そんな大変なことになっている俺を目の前にしても
悠からの言葉は止まることを知らない。
「クリスマス…近いし、俺が買ってくるから」
「俺たちはそうそう外で…とかって難しいし」
「それに陽介、こういうの恥ずかしがるだろうし…」
「俺が指輪買ってくるから…だから、俺の指輪で陽介を縛っていい?」
「それに、クリスマスだけは絶対に空けておくから
俺が陽介の好きな料理たくさん作るから…お前のために全部空けるから」
「だから、俺が陽介のクリスマスを独占していい?」
そして、その後何度も
ごめんごめんって謝罪の言葉を繰り返す。
いつもの寡黙さがひっくり返ってしまったかのように
悠は湧き出すみたいに話し続けた。
それは俺が知ってる、一番余裕のない時の悠で。
そんな顔にさせているのは
誰でもない俺で。
でも、それが今はなんだか嬉しくて。
どうしよう? どうしよう? と
そればかり考える。
「ば、バカ…そんなの…っ」
何を言ってるんだろう?
独占? 縛る? なんで?
俺がお前を逃したくなくて
仕方ないのに。
お前は何を焦ってるんだよ。
会えなくてごめん…仕事が…って。
わかる…わかってる。
ホントは全部分かってた、俺だって仕事してるし。
どうにもならない時は絶対あるから。
でも、言い訳をする素振りさえも見せないで
自分が悪いって謝り続ける悠をみて
俺は自分のカッコ悪さに辟易してしまう。
ごめん、悠…俺ってやっぱバカだな。
我儘言ってただけだった。ガキみてー…サイテーだ、俺。
そんなことが頭に浮かんだ俺が凹んでいると、
悠は一つ決心をしたように視線を合わせると俺へと告げた。
「だからさ、陽介…今日から俺と一緒に暮らそう」
「は?! え? き、今日から? 一緒に? う、うそ…」
「嘘じゃない…掃除も洗濯も…ゲホ…家事は全部俺がするから…っ」
「ちょ…悠…っ…お、おい…」
咳き込む姿に慌てて背中をさすった。
なんかもう、息も絶え絶え。
なのに要求すげーー…。
今度は俺でさえも見たこともないくらい、
余裕のなくなった悠が俺に懇願する。
「だから一緒に暮らそう? もう離れてるのダメだ…俺」
「だ、だから…ちょっと待てって…」
「俺はこんな仕事の状態だし、絶対間違いなく確実に
お前を寂しくさせるんだろうけど、もう離れているのは嫌なんだ」
「悠…あ、あのさ…」
「深夜、家に帰って、もしもお前が起きていなくても
お前の気配があるだけでいいんだ…だから頼むから…」
なんかもう『陽介無し、もうダメ・陽介無し、もう死ぬ』みたいな
ギリギリのカウントダウンみたいな姿で。
そんな悠の懇願する姿に、俺は何も言えなくなる。
家事? 掃除? 気配?
そんなフラフラな様子で
お前は一体何言ってんだよ。
そんなカウントダウンの前に、
もうとっくにお前のものなのに。
すげー嬉しくて仕方ない。
お前が俺を求めてくれることが嬉しくて、
俺は今、お前の顔さえちゃんと見ることが出来ない。
「悠……お前、全然分かってねー…」
「え? ……あ…そ、そうか」
嬉しさで真っ赤になった俺がそれを悟られたくなくて
俯きながら言うと、弾かれたみたいな様子で
俺の手を離した悠が悔いるみたいに呟いた。
「そうか…ダメだよな…俺じゃ……」
「え?! ち、ちが…」
「うん…そうだな…俺じゃ…」
俺じゃダメだよな…なんて言って
みるみるうちにメタメタになっていく悠。
両手で顔を覆うと、この世の終わりみたいな声色で
溜息と一緒に唸るのが聞こえた。
「だーー! 違う! 違うっつーの! 最後まで聞けぇぇー!」
「え? 違うのか?」
「ちげーっつーの! だだだ、ダメだなんて一言も言ってねーだろ!」
俺はそんな、何処から来るのかまったく分からん
盛大なる勘違いを正そうと、悠の前頭部を勢いよく叩いた。
「っ…痛……よ、陽介?」
お前じゃダメ? んなわけねー。
お前じゃなけりゃ、誰ならいいんだよ。
つーか、恋人の贔屓目だったとしても
お前以上のヤツなんてお目にかかったことなんてない。
お前以上のヤツなんて、きっとこの後の人生でも
一人だっていない…それくらいお前はすげーから。
それくらい俺は、お前が好きだから。
「ホント…お前は…っ…バカっつーか…」
「陽介?」
違う、ホントは俺がバカ。
きっと一番のバカ。
勝手に不安になって、勝手に押しかけて。
それで、勝手に嬉しくなってる。
俺が一番バカだった…ごめん、悠。
今の俺にはお前だけでいい、
お前だけが欲しいのに。
お前だからってダメなワケあるわけがない。
逆にお前じゃないとダメな理由ならある。
だって、俺がお前を欲しいんだ。
誰よりも、何よりも。
「だ、だから…その…」
「うん…」
いま、お前を欲しがっているのは俺で、
だからこんな深夜にお前の家に押しかけて
お前に愚痴ってわめいて…それで…
なのに…俺はなぜか、悠にプロポーズされてる。
ダメなワケねーだろ。
俺は今、一番欲しい言葉を貰えてる。
どうしよう…悠…俺いま、すげー嬉しい。
「そんなの嫌だなんて、俺が言うわけねー…」
だから、どうか縛って。
お前の好きな形でいい。
指輪でも独占欲でも気配でも。
お前の好きな様に俺を縛って独占して。
それで俺にもお前を縛らせて独占させて。
先に言っとくけど
きっと俺の方がタチが悪いだろうから
どうか覚悟してろよ?
そんな感じのことを言ったら
悠は一旦はやっぱりきょとんとした表情をしたんだけど
その後、ニヤリといつもの笑み。
「そんなの嫌だなんて、俺が言うわけないだろ」
『陽介なら何されてもいいよ…
でもきっと、俺の方がその数倍タチが悪いよ』
なんて、そんな嬉しいことを囁くから
俺は嬉しくてニヤニヤして。
だから、縛られてやることにした。
お前の為と、俺の為に。
「く、クリスマス…楽しみにしてるから…」
「分かった…陽介が好きなものをたくさん作るから」
指輪のサイズは? とか
デザインは?とか、引っ越しは? とか
色々ちょっと気が早いのと、些か気恥ずかし過ぎて
俺は上手く伝えられないのに、
そんなつたない言葉を悠はひとつひとつ
聞いて頷いてくれた。
「ゆ、悠…気が早ぇーって…」
「陽介の気が変わらないうちにと思って」
「か、変わるワケねーだろ!」
クリスマスとか、指輪とか
一緒に暮らすとか。
寂しくさせるとか、家事とか、
そんな色々ななんとやら。
そんな言葉も、もちろん嬉しいんだけど。
だけど俺は深夜にお前の家に押しかけて
愚痴って、わめいて、ウダウダしてる…
こんなみっともない俺でも
未だ懲りずにずっとずっと、
求めて続けてくれていたんだと、
知ることが出来たことが嬉しくて。
縛られてやる?
俺はバカか…もうずっとお前にだけ縛られてる。
逃れるつもりもないから。
だから、どうか縛って。
お前の全部で。
安堵した俺が泣きそうになるのを堪えようと
グっと目を閉じると、ふわりと浮く感覚がして
なぜか背中が床へと着いた。
「う、うお?! な、なに?! アレ? 悠??」
「ごめん…陽介……先に謝っとく…」
「は? え? 何を??」
気が付くと、俺の体は床へと押し付けられていて、
悠はそんな俺へと圧し掛かる体勢。
こ、これはやっぱりどうーみても…アレですよね?
俺が状況と結果を直結させた直後、
悠は艶のある笑顔で俺に謝罪してきた。
「……うん、色々ごめん…手加減できない」
「えぇ?! ちょ…ちょっと……お、おま…体調悪いんじゃ…っ」
「陽介に会えたから治った…だから今度はこっち」
そういった表情から見えたのは、
やっぱりどうして全く全然余裕のない悠で。
覆いかぶさる様に
近づいてくる悠の気配に
俺は反射的に目を閉じた。
「あっ……そうだ…陽介、指輪のサイズは?」
「ちょ…いま…っ無理だろ…っ」
「分かった…じゃあ、あとで」
そう囁かれたのがこの日最後の
ちゃんとした記憶で。
次の日の朝、いつの間にかベッドへと
連れてこられていた俺が、ベッドの中で悠に
指輪のサイズを測られていたことを知るのは
悠が笑顔で再度ちゃんとプロポーズしてくれた
クリスマス当日になる。
「お、おま…医者の給料三か月分って……やり過ぎだろーー!」
「やるからには全力を出すよ、俺は」
ニヤリと笑って『幸せにするから』って笑ったその仕草に
今度こそ完全に捕えられた、縛られたと、
内心喜ぶ俺も、色々どうして大概だと思う。
Fin
クリスマス主花でしたー
あははは…ねつ造ーねつ造ー;;;
色々足りないとか、色々違うとか
こう…気になるとこはあるにしろ
とりあえずは間に合ったかな…と;;;
楽しんで頂けたら幸い。