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【楽園の終わりに】

3月、別れの時期の話ー
またかーみたいでスミマセン;;;



今生の別れ

望んでもかなわない距離

な、感じで。
いってらっしゃいませ。

拍手[1回]












3月も終わりごろ。

学校の屋上で、俺は相棒…
探し人の背中を見て茫然と立ち尽くした。

放課後どこか出掛けよう…そういって
待ち合わせたのに俺は遅れちまって、
屋上にたどり着いた時には
悠は背中を見せて空へ向けて
独りで歌ってた。


その姿に俺は立ち尽くした。

初めて見る歌うその姿は
一年一緒にいたはずの俺にも
一度も見せてはくれていなかった
お前の姿だったから。


ぶっちゃけ決して上手くはなく、
褒められた音程でもないその声に。

俺は呆然と立ち尽くす。

賛美歌? 子守唄? 俺にはなんなのかわからないし、
聞いたことは無いんだけど、
すごく綺麗なフレーズの歌で。


歌詞が英語だから
ちょっと聞き取り辛いと
何を言っているのかわからないんだけど。

お前が歌うその歌は
俺の中のなにもかも全部を
許してくれるみたいな
そんな響きがして。

俺はその場に立ち尽くした。

この時間がいつまでも
終わらないように気配を殺して。





「陽介?」


「あ……終わっちまった」


「え?」


お前がこっちに気づいてしまって
さっきの歌が終わる。

それと同時にお前は笑ってくれるんだけど
このところ感じる、ちょっと不安定な
感触を残して笑うから、俺も一緒に不安になる。


「悠…それなんて歌なんだ?」


「え? ああ……これは」


タイトルを聞いたけど、
やっぱり知らない歌で。

歌詞全部英語だなーとか
俺には無理かもーとか
歌好きなのか? とか
つか、ちょっと下手じゃね? とか
他愛もない会話で誤魔化して。

俺はお前の中の不安定な中身を
見続ける。

いつか晒してくれるんじゃないか? と
期待を込めた眼差しで。

さっき見た、一年間一度もみたこともない
あの姿を見せてくれた今ならきっと。

そんな他力本願な願いをぶら下げて
お前を見続ける。

そして、お前も俺を見た。



「悠…」


「ん?」


お前は俺の視線と会うと、
絞るみたいに目を細めて笑う。

まぶしいものでも見るみたいに俺を見るから
その様子に一瞬置き去りにされた気分になった。

そしてその笑顔を見て俺はなんとなくだけど
ああ、やっぱり晒してはくれねーのか。と
すごく気落ちしてしまって。

歯がガクガク音を立てるほど
うまく歯が噛み合わない自分がなぜか可笑しくて
思っていたよりスゲー落ち込んでしまった自分を
誤魔化すみたいにへらへら笑った。




「悠、笑ってくれよ」


「え?陽介?」


「いいから笑えって…なんでもいいから…」


「どうしたんだ? 陽介」


そう言って、いたわるみたいに俺を見る目が
優しくて綺麗で、なにか深い色を見せるんだけど
それじゃないんだ、悠。

俺が欲しいのはそれじゃない。
違う…全然違う…それじゃない。


「陽介?」


「違う…それじゃねーんだ、悠」


半年前、お前が見せてくれてた様な。
屈託のないあの笑顔が見たい。
別れの影を負わない笑顔が見たい。

まっすぐに俺を見て話してくれた
あの瞳に会いたい。

我儘だって、自分勝手だって分かってる。
それでもあと少しで八十稲羽での時間は終わってしまうのに
お前が笑わない現実の方が辛くて、嫌で仕方ない。

別れてもまた会えるから。
だから今は笑ってほしいのに。

まるで今生の別れみたいに
お前は思ってるんだろ。

お前が八十稲羽を出たら、俺が、俺たちが、薄情にも
全部忘れてお前のいない日々を満喫するとでも?





「すっげー期待外れだっつーの…」


バカにすんなっつーの…どうやったって忘れられるはずがない。
もしこの後、たったの一度だって再会出来なくたって
俺はお前を忘れない。


「…ごめん、陽介」


「え? ち、ちが…そーじゃなくて……その…っ」


違う意味で伝わった言葉に反応して
絞るように眉間に皺を寄せるお前が見えた。
そんなお前を見て、俺は焦って言葉を探すけど
俺の中には上手い言葉が見当たらない。


「ちげーんだ…そうじゃねー…ごめん、俺の方がごめん」


「陽介…」


しゃがみこんで両手で顔を覆うと
後悔と一緒に唸った。

駄々こねるみたいに地団駄を踏んで。
ガキみたくカッコ悪く。
無様でどうしようもなく。

何度も何度も、お前に助けられてばかりで。
感謝してるのに、大切だと思っているのに。
俺はこんな一番大切な時に、
上手い言葉さえ見つけてやることが出来ない。

お前が向こうで揺るぎ無くいられる為の
確かな何かでありたいのに。


「なんかもう…俺、サイテー…」


「陽介………」


あの時…鮫川でお前に抱きしめられた時に
緩んだ涙腺が未だに緩んだままだったみたいで
俺の中で言葉が詰まった途端、じわりと視界が滲む。

あの時は良かった…
なんて、バカな考えばかり浮かぶ。
やっぱり俺ってサイテーだ…。




「っ……って…なに?うわ…っ?!」


ぐっとこらえるために目を閉じると
弾かれるみたいに押し倒された。

反射的に撥ね退けようと両手で悠の胸を押すんだけど、
退いてくれる気配なんかなかった。


「ちょ…ゆ……っ」


よく分らないまま、たじろいでいると
貪るみたいにキスされる。

息も出来なくて、背中のコンクリートが冷たくて
いい思い出とやらには、どうひっくり返ったって
なりはしないキスの感触に俺は喘いだ。


「待…っ…悠っ……」


もがけばもがくほど、抑えつけられて
気絶するんじゃないかってくらい
深く求められる。

そのうち俺が苦しさに震えだすと、
我に返ったみたいに悠が俺から
離れていった。

ようやく離された唇と体が
呼吸をしたくて軽く咳き込む。




「陽介…ごめん、笑えない」


悠は未だ咳き込む俺を見て言った。
泣いてるみたいな声だった。
見たこともない色の瞳だった。

陽が強いせいか、お前の影が色濃くて
表情はよく見えないんだけど
聞こえた声と見えた瞳の色が
今のお前のホントの様だったから
俺は笑ってくれるよりもなぜだか数倍嬉しくて、
お前の代わりに俺が笑った。



「いい…俺、それでいいから…」


「陽介…」


そういって心配そうに覗き込む
お前の胸へと抱きついた。
お前の匂いは心地いい。
ずっとこうしていたい…俺そればっかだな。


「ごめん、悠」


「俺が…謝ったほうがいい気がするけど……」


「へ??」


「……無理矢理で…ごめん………陽介」


俺が素っ頓狂な声を上げて目を丸くすると、
悠はまたまぶしいものでも見るみたいに
俺を見るんだけど、さっきとは全然違って
なんだかとても嬉しそうに見えた。


「陽介、心配かけてごめん」


「ち、ちが…」


ごめん、悠。
謝るのは俺の方。
我儘ばかりでごめん。
頼ってばかりでごめん。

忘れない…俺は絶対忘れないから。

初めて握手をしたあの道を。
駆け抜けた迷路を。
背中合わせで感じた鼓動を。
殴り合った河原を。
心が通った日を。
頬を寄せ合ってぬくもりを感じた数分間を。
隠れるようにキスをしたあの瞬間を。

今日のこの出来事も、なにもかも。
全部覚えているから。




「ゆ、悠さん…き、キスしていいです…かね?」


「……そこで噛むのか…陽介は」


「い、いいだろーー!」


噛みまくる俺の様子をみて
お前は噴出しながらも
許可を出してくれた。

近づく体温に俺は目を閉じる。
お前の匂いはやっぱり心地いい。

これはきっと楽園の匂い。
甘くて切なくて。

香水みたいに、いっそむせ返るくらい
薫り高ければ良かったのに。
お前の匂いは心地が良くて
夢みたいでふわふわする。

離れがたくて泣きたくなる。



「離れたくねー…ずっとこのまま…っ」


「陽介…」




でもこの楽園は、もうすぐ終わる。

花で飾り立てた様な
夢のような日々は
お前っていう記憶だけを残して終わる。

本当に楽園みたいだった。

隣を見ればお前がいて
俺が一番好きな笑顔で笑ってくれる。
手を伸ばせばお前がいて、
俺の手を握り返して一緒に走ってくれる。

そんな楽園はもうすぐ終わる。







「悠…この間の歌、歌ってくんねーか?」


最後の日。
駅へと送る道すがら、
悠へと最後の我儘を言った。
俺からの言葉に悠はビックリした
ような表情を一瞬したけど
途端ニヤリと悪い笑顔を作った。

お前はそうやって、
また俺の我儘を許してくれる。

そして誰にも気づかれないように
俺へと寄り添うと、お互いの小指を絡め
囁くように歌ってくれた。

改めて聞いても、やっぱり決して上手くはなく、
褒められた音程でもないのに。

それは俺を捕えて離さない。




「俺、それ覚えて帰りてーから…だから…」


讃美歌? 子守唄? なんだっていい…
駅に着くまで何度も歌って。

俺もその歌を覚えて、
お前がいない日に歌おうと思う。

お前がいなくて耐えられない日に
空に向かって歌おうと思う。

今生の別れになんか絶対にさせないから。
絶対に会いに行くから。

だから、歌って。
俺も歌うから。
どんな声よりも高らかに。


「俺も歌うから…ずっと」


もう明日から
隣を見てもお前はいないから、
手を伸ばしてもお前には届かないから。

ぬくもりもキスも
望んでもかなわない距離だから。


「うん…聞いてるよ、陽介の声をずっと」


だから、俺は歌う。
何度も、何度でも。

お前が欲しいって何度も歌う。



「そろそろ…だな」


「ああ、行こうか…」


忘れないって何度も歌う。
会いに行くからって何度も歌うから。
好きだって何度も何度も…
何度も、何度でも。

俺は歌うから。

遠い遠い地で生きる、
お前の耳に届くように。



Fin












 

なんか立て続けにお別れな話しでスミマセン;
ちょっとだけTV版のセリフと合わせてみました。
(ちょっとだけですが;;;;)

イメージ的には「Tell Your World」(ぜひ英語で(苦笑)
なんですけど…うーん;;未熟で申し訳ない;;;;

お別れに関しては結構、陽介の方がグルグル考えるタチだろうなーとか。
で、独りでドツボにはまり込むタイプだなーとか(苦笑)

センセイの行動力なら、
陽介より先に会いに行っちゃいそうですが(笑)

楽しんで頂けたら幸い。
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