Polaris
【この雪を君に捧ぐ】
ネタバレNGな方は回れ右ー;;
か、完全捏造です;;;;;;
雪
面影
覚えている
※病院で肩を~の後のお話;;完全捏造です;;;;;;;
な、感じで。
いってらっしゃいませ。
※少し追記しました;;
「なにやってんだよ…」
「ごめん…」
「俺が分からないとでも思ったのかよ…」
病院の玄関先。
陽介の肩を借りて
ひとしきり泣いてしまった後。
見つかってしまった気まずさに
改めて下を向いた。
問い詰められて、何もいえなくて。
俺は何をどう言ったらいいのか
分からないで喘いだ。
「悠?」
「ごめん…本当にいっぱいいっぱいだった…
そんなこと考えてなかった…」
バレるとかバレないとか
分かるとか分からないとか
本当に何も考えてなかった。
考えられなかったっていうのが
本当だけど。
そんな俺を見透かしたのか、
陽介は少しだけ安心したように
苦笑すると、ぽろりと零す。
「でも、素直に泣いてくれてよかった…」
「陽介?」
「あれで意地でも張られてたら、殴り倒すとこだったんだからな?」
「はは………そんな余裕も無かったよ」
無かったよ。
そんな余裕なんて微塵も。
砂粒ほどの余裕も無かった。
あの時、お前がまるでこの世の全てみたいに現れてくれて、
俺はもう、それだけでどうにもならなくなってしまった。
「逆に来てくれたのが陽介でほっとしてた…」
「悠…」
「お前以外の誰かだったら…
あんなふうになれてなかったかもしれない」
声を上げて泣くなんて。
何年ぶりだろう。
悔しくて、悲しくて。
どうにもならない現実に
俺は震えながら泣いた。
「ありがとう…陽介…そして…ごめん……」
「え?」
「ん…なんかごめん………上手く言えないけど」
「悠…」
嘘をついてごめん。
『大丈夫だ』なんて言ってごめん。
本当は少しだけ分かってたんだ。
お前には気づかれてしまうかもしれないことを。
それでももう、何もかもが限界で。
溢れた感情に抑えなんか効かなかった。
「色々ごめん…で、ありがとう陽介」
そう俺が言うと、陽介が優しく笑ってくれた。
その笑顔が俺をなんとか奮い立たせてくれていることに
今更ながら、嫌と言うほど思い知らされた。
「ありがとう…」
病院のロビー。
玄関先に居た二人。
流石にこのままでは寒いだろうと、
待合室にもなっているロビーへと入った。
深夜で誰も居ないそこで、
何も打ち合わせていないのに
二人同じ様に、外が見える場所にある
ソファへと腰掛けた。
屋内であっても雪の日に吐き出す吐息は
視界を奪うほどに白くて。
立ち上るソレはなぜか
非現実的な様相をしていて
少しだけ怖かった。
俺は絶え間なく降り続く雪を見つめ
息が詰まってしまうんじゃないかと言うほどに
絞る様に声を出した。
「……雪が積もったら、雪だるま作ろうって菜々子と約束してた」
「…………」
先日した約束。
まるでそれは遠い日の思い出の様で。
小さな従妹とした約束は
自分にとっても大切なもので。
それが儚く、意味を成さないものに
なってしまったかのようで悲しい。
思い出として確かに記憶にあるのに、
それすら無くなってしまったかのようで怖い。
「雪が降って…こんなに綺麗に積もっているのに、菜々子が居ない」
「…………」
「菜々子の為みたいに、
こんなに雪は綺麗なのに、菜々子は見られない」
「…………」
堰を切ったように話し続けた。
息をするもの面倒なくらい、
それをずっと話し続けたくて。
「俺は一体何をしてきたんだろう…」
「…………」
「大切な人を守れないなんて、何をしてきたんだろう…」
自分が言った言葉に
俺は打ちのめされて深く沈む。
救い上げて欲しいわけじゃない、
ただ………。
「…………真実を知るため…だろ?」
「陽介…」
救い上げて欲しいわけじゃない…
だけど、お前は俺の腕を無理矢理にでも掴んで
引き上げる。
俺が自分で選べるように
お前が選んだ道を最初に晒して
俺に“どれか”を選ばせてくれる。
「お前が言ったんだ…『何かがおかしい、まだだ』って
だから俺も里中もみんなも納得した…」
「……………」
あの時、必死に言った言葉が
陽介の中でそこまで意味を成していることに
今更ながらに驚いた。
「だから……あの時の自分の決断を疑うな…」
「陽介…」
「あの時のお前の決断が正しかったと証明してみせろ。
俺も協力するから…それこそ俺が出来ることならなんだってする…」
いつもは、お前のゆるぎない視線が
俺を揺らしたり、決断させたり、潤わせたりする。
けれど…その視線が、今日は瞬くことさえ辛いと
見開かれたまま、苦しいと泣いているようだった。
そうか…お前はまた思い出しているんだろうか?
あの人を。
「だから…あの時、俺達を思いとどまらせてくれたお前を疑うな」
「陽介……」
深い後悔の色が見えた。
その淀んだ色が優しいお前を苦しめてる。
「ホントはすげー感謝してるんだ…お前があの時止めてくれたこと」
「陽介…」
「つい、カっとなって…言わなくていいこと言っちまった…」
まるで懺悔みたいに、目を閉じて
下を向いて何度も何度も頷いては
苦しそうに息を吐く。
「取り返しのつかないことしちまうトコだった…っ
ホントは余裕の無いお前の代わりに、
俺が止めなきゃいけなかったんだ」
「………………」
「なのに、完二や直斗まで煽って…バカだ…俺…っ
今になってすげー後悔してんだ…おせーよな…ホント……」
「陽介……」
「ごめん、悠…本当にごめん……」
滲む様に謝罪するお前の様子が
痛々しくて。
座ったソファの冷たさを感じながら、
その痛みを分けてもらおうと
陽介へと寄り掛かった。
でも、伝わってきたのは
痛みじゃなくて、お前からのぬくもりだったから。
俺はそれを返したくて
言い聞かせるように言葉にした。
「………陽介……お前がいてくれて良かった」
「悠?……」
「本当に良かった…お前がいてくれて」
嘘とか慰めなんかじゃない。
本当のこと。
寄り掛かったけれど、お前の痛みを
分けては貰えなかった…だから、
本当のことを話すよ。
お前だけに。
「あの時、陽介は俺の代わりに怒ってくれてるみたいだった…
菜々子が息を止めて…俺は何をどう考えたり
感じたらいいか分からなくて」
ひとつひとつ…俺の深い所にある何か不確かなものを、
俺でさえもよく分からない感情を、
なんとかお前に分かる様に言葉にして伝えた。
「目の前でみんなが泣いていて…おじさんは怒っていて
なのに…俺は目の前のことで頭が真っ白になっていて
……何も考えられなかった」
「悠……」
「泣くことさえ忘れてた…」
悲しくなかったわけじゃない。
怒っていなかったわけなじゃない。
だけど、それこそ息をするのも
忘れてしまうみたいに
俺は目の前の現実を受け入れられないでいて。
「俺は確かに悲しいのに、
どう泣いたらいいか判らなかった。 怒りたいのに、
どうやって、何をどう言ったらいいのか分からなかった」
「……………」
「だから…あの時のお前の言葉が
俺の全部を呼んでくれる…そんな気がしたんだ」
病室に大きく響くお前の声に、
俺は自らの舵を取ることを思い出した。
それまでは立っていたのか
座っていたのか分からないくらいだったのに。
俺はお前の声や息遣いで
生きるということを思い出せた。
「お前が俺の代わりに叫んでくれた…
だから、俺は怒ることや悲しむことや考えることを思い出せた」
「…悠………」
「陽介…お前のおかげだ…」
寄り掛かったそのまま、
視線を窓の外へと漂わせると
雪がまだ降っていた。
「そ、そんな大したことしてねー…」
「それが陽介のいい所だな…」
「な、なんだそれ…」
笑い合いながら、二人寄り添って
そのまま外を眺めた。
降り続く雪が白くて、目に痛い。
菜々子の笑顔みたいで痛い。
あの時、菜々子の面影が見えたのは
きっと菜々子が必死で止めてくれてたんだと
今なら分かる。
あの笑顔を…
もう会えない面影を…
俺はそれを無理矢理にでも、
手繰り寄せたくて仕方ない。
「菜々子は…………」
「悠?」
「……やめよう」
初めて出来た妹の様な存在は
本当に可愛くて。
家に帰ると『おかえりなさい』と
迎えてくれるあの姿に少々戸惑いながらも、
本当はとても嬉しかったのを覚えている。
つたなく握ってくれる手が
とてもやわくて…守りたいと思ったのを覚えている。
美味しそうに俺の作った料理を食べる姿が
嬉しそうで、また作ってやりたくなったのを覚えている。
「悠……言えよ…」
「陽介?」
「いいから…言えよ……何が言いたい?」
「陽介…っ……」
初めて一緒にジュネスに行ったときや、
夏祭りの時の楽しそうに花火を見る横顔や、
みんなでスイカを食べたときや、
一緒にハンバーグを作ったときや、
本当に…色々な菜々子を覚えている。
自分でも驚くくらい、沢山の菜々子を覚えている。
『お兄ちゃん』と呼んでくれるその笑顔と
声と仕草とその存在が、とてもとても愛しかったのを覚えている。
「陽介…っ……菜々子…っ…菜々子は………」
「ああ…分かってる…」
雪はまだ降っていて、
きっと今夜中ずっと降り続いて。
菜々子が望んだ姿へと
街を変えるんだろう。
けれど、菜々子はもう居なくて。
果たせない約束を抱えたまま、
俺は窓の外を見る。
「菜々子は…っ…」
「ああ…」
震える俺の手をいつの間にか
陽介がしっかりと握っていてくれて。
俺は陽介の手の温かさに感謝して、
同じように握り返した。
それでも手の震えは止まらなかったけれど、
俺はその温かさを頼りに、ひとつひとつ言葉を紡いだ。
「菜々子は……」
雪はまだ降っていて、
きっと今夜中ずっと降り続いて。
菜々子が望んだ姿へと
街を変えるんだろう。
あの時の果たせない約束が
まだ俺の胸に篝火の様に小さく燈っていて
その暖かさが少し痛い。
でもそれは確かにあった
大切な記憶の暖かさだから…
俺はそれを感じながら
支えるように寄り添ってくれる
陽介の体温に呼ばれるように目を閉じた。
Fin
すみません;;つい;;;
いや…私、兄妹姉弟とかダメで;;
(SPECで号泣したヤツです;;)
カっとなってやっちゃった…とゆーか;;
と、とりあえず一応、鳴花で;;;;;;
あのまま、朝方近くまで
鳴上くんに花村は付き添っていて
鳴上くんが寝たのを確認したら
病室のベットへを借りて、鳴上くんを寝かせると
一旦帰るみたいな…(苦笑)
菜々子も家族なんで心の支えなんだと思うんですが、
陽介はまた全然違った位置で彼の支えで。
みたいな…(ぼそり)そうであったらいいな…と。
イメージ的には『夢想曲』みたいな…?
※少し追記しました;;
楽しんで頂けたら倖い。