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【魔術師の不在】


風邪っぴき

笑顔


みたいな。
いってらっしゃいませ。

※少し追記しました。

拍手[4回]














「いいって!判ったから!寝てりゃ治るから!」


そう言って、母親を仕事に向わせた。
いったいいくつだと思ってんだ?


風邪ひいたって言ったって
こんなの寝てりゃ治るだろ。


数年ぶりにひいた風邪。
いつもなら体力だけで誤魔化すのに
どうやらこのごろ忙しかったせいもあるのか
体力で乗り切れず、罹ってしまった。

といったって、風邪だ風邪。
きちんと医者にも行ったし、
それ用の薬も貰って来た。

あとは栄養取って休むだけ。
ただそれだけでいいんだ。

たまの休日、必要だろ?


そう思いつつ携帯の液晶画面を見た。
風邪をひいて休む旨のメールを
朝一で悠には入れておいた。


今、みんなは何をしているんだろう?
授業を真面目に受けているであろう
あの面影に思いを馳せる。


登校したら登校したで、
授業うぜぇなーとかダリーなーとか思うのに。


ホント、ちょっと会えないだけで贅沢に出来てる。

 

「バカか、俺は………」


そう考えているウチに
少しだけウトウトと睡魔が襲ってきた。
そのまま身を任せてみるけれど
熱のせいもあってか、少しだけ眠ると
すぐに目が覚めてしまう。


それを何度も繰り返して、退屈もMAXになってきたころ、
階下からトントンと軽めの音を立てて
階段を上がってくる音が聞こえた。

母親の帰宅を予想した俺は、
聞こえるようにその存在に言った。

 


「お昼は、うどんがいいですーーーーーー」


「そうか…うどんか、いいかも…」


「へ?!悠?!」


予想した母親の姿ではなく、
先程まで追っていた面影の本人が現れて
俺はベットに寝そべったまま
すっとんきょうな声を上げた。

 

「な、なんで???????」


「授業、サボってみた」

 

綺麗な顔してにっこり微笑む。
言った内容は学生の本分からかけ離れ過ぎていたけれど。

つーか、笑顔で言うな!笑顔で!!

あまりのことに問いただしてみると、
気になって(マジで)サボって
様子を見にきたら、家の前で俺の母親に会って
鍵を渡されたとのこと。

イケメンならいいのか…あの母親は…

 

 

「空…綺麗だな。」


「あ?あ、ああ…そうだな」


いつの間にかちょこんと
俺が寝ているベッドの傍らに座って、
窓から見える空を見て言った。

外はきっと寒いのだろう。
つんとした空気が窓の内側からも
予想出来て少しだけ寒さを感じた。


そんな中、悠が一つ
何か呟くように言った。

 

「今日さ…陽介がいなくて困った」


「は?なんでだ?」


困ることなんて無いはずだ。
逆に授業中面倒見てもらってんのは…
不服だけど俺の方だろ?

 

「…………………とにかく困ったんだ」


「いや…だから…なんでだよ」


「困った…すごく困った」


「あのなーーーだから!何を困ったんだっつーの!」

 

なかなか出てこない理由に
痺れを切らした俺が叫ぶと、
まるで心外とばかりに悠が視線を返す。

こちらをちらりと見る仕草が、
なんだか妙に猫っぽくてビックリした。


「いや…いいよ…別に」


「だーかーらー!」


「ほらほら、寝てないと治らないから」


「おい!コラ!話題変えんな!」


起き上がった俺を宥めるようにベットへと
押し込めると、布団を丁寧に掛けた。

 

「陽介…俺、今日はここに居ていいかな?」


「ば、バカ!菜々子ちゃんどうすんだよ?」


「ん………だよな」

 

落とすようにそう返してきた。
低く落とすように。

コイツはこういうクセがある。
何かを言いながら、他のことを考えてる。

たまにその中身がわかる時もあるけれど、
なぜかいつも上手く隠されてしまう。

それがいつも、たまらなく悔しくて仕方ない。

なぁ、話せよ?相棒。

 

 

 


「俺、帰るよ…陽介が困るだろうし」


「え?べつに俺は…」


困らない。
ずっと帰らなくたって
きっと困らない。

なんで“俺が困る”なんて出てくるんだ?
ほら、やっぱり別のことを考えてる。


 


「ちょ、ちょっと待て…」


「何?陽介?」


立ち上がるその姿を追うように、
俺は悠の制服の裾を掴んで引き止めた。

 


「…………………おおおおお…俺が寝るまでいろ!」


「は?」


「お、俺が寝るまで!わ、判るか?」


何を言われたかイマイチ理解出来ない悠が、
目を白黒させてこちらを見ている。

判らない…俺自身も判らない…
何言ってんの?マジ大丈夫?俺…

それってつまりさ…

 

 

 

「………それって“添い寝”って言う…」


「い、言わない!俺が寝るまでの番!!」

 

考えていたことを先に言われて
目に見えて慌てる俺。

一気に体温が上がったのか
少しクラクラしてきた。

俺の様子を観て、悠は噴出した。
 

「っ………」


「わ、笑うなーーー!」


「…陽介は本当に面白いよ」


ふと優しい顔になって笑う。
その笑みに俺はなぜだか
目をそらしてしまう。


「おおおお、俺が寝たら帰っていいから!」


「判った、鍵はポストに入れておくから」


再度クスリと笑うと、俺の傍に座りなおして、
俺の布団をきっちり直して、
跳ねたままの俺の髪の毛を撫でると
崩れるように笑った。


ああ…そうだ…コレ
すごく嬉しそうってヤツだ。

コイツはいつも大体が判りにくいけれど、
今のはきっとそういう類のもの。

そして、俺はその顔がすっごい好きだってこと。
ずっと観ていたい…そんな気さえする。

 


「おやすみ…陽介」


「ああ…」


他じゃ滅多に見せてくれないような
笑顔で見送ってくれたから
俺はなぜがとても穏やかな気持ちになった。

最後に俺の手に触れて上から優しく包んでくれた。
俺もそれに釣られて握り返す。
暖かい感触に一気に睡魔が襲ってきた。


「おやすみ、悠」


 








暫くして目を覚ますと、窓の外には大きな満月。
それに照らされるように俺達は
寄り添って眠っていた。

 

ああ、もう夜なのか。


お互いの体温が暖かくて気持ちがいい…

 

って………え?俺達????


見ると、ベッドに寝ている俺の傍らで
帰ったはずの悠が添い寝をするように眠っていた。

時間は24時近く。

どうやら両親はまだ帰って来ていない様だった。

 


「お、おい…悠?」


肩を揺らすと、月が雲間から顔を出すように
柔らかく目を覚ましてこちらを見た。

 

「な、なんでお前が寝てんだ?」


「…………………」


「悠?」

 

ぼんやりと俺の顔を見て
不思議そうにする。

つーか、俺が不思議だっつーの。

暫く考えるような仕草をした後、
何か合点がいったかのような表情をすると、
俺に向って苦笑しつつ答えた。

 

 

「帰るの忘れてた…」


「は?!」


「陽介の体温が気持ちよくて、帰るの忘れてた」


「……っ…おま……」

 

もう…何を言ったらいいか…

 

「はは…陽介、面白い顔だな」


「面白いってゆーな!」

 

病人に向って面白いとはなんだ!
まったく…。

良く見ると、俺の手を
悠の手が包むように握っていて
ずっと手を繋いでいてくれたんだと今更気づいた。

 


「お前いいのかよ?こんな時間まで」


「一応連絡はしておいたから…」


「そ、そっか…」


未だ繋がれた手が、柔らかくて
暖かくて切ない。
離れがたい…そんな言葉が浮かんだ。

 

「ん?また添い寝する?」


「ば、バカ!いるか!」


「だって“俺が寝るまで”でしょ?」


「……………」

 

そう言ってまた笑う。
その笑顔に俺は弱いんだ。
狙ってんのかよ…ホント…
俺が困るだろ。

 

 

「なぁ…悠」


「ん?」


「何が困ったんだ?」


「え?ああ……そのこと…」

 

ふと思い出す。
俺が居なくて困ったなんて、
何か用事があったのか。


「蒸し返すなよ…」


「うっせー気になったんだよ!」


少しだけ厄介だという表情。
珍しくてもっと聞いてみたくなる。

困ったことか…そうか、だからここに来たとか??
いや…さすがにそれはないだろ……

 

「お前が困ってんなら俺、手伝うからさ!何に困ってんだ?」


大事な相棒の一大事だ。
俺が手を貸さなくてどうする!

もし少ししか力になれなくても
俺は俺が出来ることをお前に
最大限にしたいから。



「本当に分からないのか?」


「分かんねーから聞いてるんだろ!なあ」



どうか隠さないで話して欲しい。
笑って誤魔化したら、俺、怒るからな?

俺が真剣な面持ちで
そんなことを悠に言ったら
悠は目を見開いて俺を見て、小さく溜息を吐くと
今度は甘く笑って答えてくれた。

 

 

「陽介がいなくて、寂しかった…みたいな?」


「え?」


「寂しくてすごい困った」


「え?」


「じゃ、責任取ってくれるよな?」


「え?」


投げられた言葉と急展開に
俺はパニックを起こした。

あれ?夢でも観てるんですかね?
俺は…俺が居なくて寂しい?え??


「だめだな…陽介は…」


俺の様子を察したのか、仕方ないなという表情で
苦笑すると目を細めて握ったままの手を見た。

え?だめ?何が?

その言葉が俺の中でぐちゃぐちゃに混じって
さらに大混乱。

どうしよう?今度は俺が嬉しくて仕方ない。

お前が俺が居ないことを少しでも気に掛けてくれたなんて
それだけで何かとても満たされるような気分になる。

だめだ…俺きっと真っ赤になってるハズだ…。

 

俺の思考は混迷を深め、そうこうしているウチに
悠は楽しそうにテンションアップして来ていた。

 

「このまま、また添い寝していいか?」


「え?ち、違う…えっ?なに??」


「“寝るまで番”?」


「も、もう間に合ってますっ!」


あまりの急展開に俺は宥めようと、
手を突き出すと悠はその手をぐっと握って
さらに笑顔で返してくる。

 

「風邪ってうつすと治るって言うし」


「迷信だ!!」


俺は思わず叫んだ。
さっきまでの甘い笑顔が
とても危険な笑顔に変わってきた。

捕食される…なんとなくそう思った。

 

 

「どうしよう?陽介…俺、朝帰りになるかも」


「もう、お前帰れーーーー!」


風邪のせいで枯れた喉が
カラカラと絡み声はほとんど出なかったけれど
嬉しさと気恥ずかしさとが相まって
俺は真っ赤になりながらもそう叫んだ。

 

Fin

 











長っ!!;;
すみません;;;

あとでちょっと書き直すやも;;

<追記>
ちょっとだけ追記しました。
つーか、うどん食べさせんの忘れてた(笑)
鈍感花村くんみたいな…(苦笑)

楽しんで頂けたら倖い。
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