Polaris
【太陽と虹の丘】
付き合ってるけど、別々に暮らしてる設定ー
別れ話
俺に釣り合うお前
お前はきっと知らない
菩薩級
な、感じで。
いってらっしゃいませ。
※ちょっと修正しました;;
広くて高い星空を眺める。
広すぎて高すぎる空は
今の俺には少し怖い。
「陽介…もうこれで5度目だけど…」
「う……」
「本気なのか?」
「っ…たりめーだろ!」
この俺の可愛い恋人は5度目の別れ話を俺にしてる。
5度目とくれば、流石の菩薩級も
些かイライラして溜まらない。
「陽介が俺が嫌だっていうなら、素直に別れるけど」
「い、嫌だってんじゃねーんだよ…」
また始まった…
『お前に釣り合う俺になりたい』とか
『お前は俺を甘やかしすぎ』だとか、
そんななんか雲掴むみたいな話し。
予想通りの別れ話の内容に、
俺はやっぱり…些か…ウンザリと
そしてイライラして乱暴に言葉を投げた。
「もうさ…俺、疲れたかも」
「え?悠??」
「俺に釣り合うお前は、この世でどれだけ重要なの?」
「な?!お、おま…」
電話越しにお前が怒る息遣いが聞こえた。
でも今日はソレは無視してお前を問い詰める。
もう何度目だと思ってるんだ?
5度目だ。些か……いや、もうかなり限界だ。
「俺がお前が好きだっていって、
お前に俺の隣に居て欲しいって言ってるのに、
どうして俺に釣り合うお前が必要なんだよ?」
「今のお前が好きだから、だから傍に居て欲しいのに」
「何?俺にどうしろって言うんだよ…お前と別れて死ねって?」
陽介に反論する機会さえ与えず、
とめどなく話し続ける。
泣けって?叫べって?
それともお前がいないことに
発狂すれば許してくれるのか?
風船みたいに千切れ飛んで吹き飛べば満足なのか?
そんな言葉を投げたら、陽介は慌てた様な様子で
声を震わせ返してくる。
「ちちちちち、ちげーって!なななな、なに言ってんだよ!」
「そんなに変わりたいなら変わればいい…」
「え?悠?」
「その為に俺が邪魔ならいい…もう疲れた…」
「ゆ、悠………」
そんなに違う自分に憧れるならなればいいじゃないか。
好きなだけなればいい…それで俺を置いていけばいい。
俺は今のお前が好きなのに。
それで俺が泣いたり・叫んだり・気が狂ったり
果ては千切れ飛んだりしても
お前はお前のなりたいお前になって
俺を置いていけばいいじゃないか。
「違うお前になる為に、俺を切り捨てたいんだろ?ならいい…」
「ち、ちが…」
「何が違うんだよ?だって、お前から言い出したんじゃないか…」
俺が今、泣きそうで、叫びそうで、気が狂いそうで
最悪、無数に千切れ飛んで跡形も無くなりそうだなんて
お前はきっと知らないんだ。
こんなにお前の我儘に振り回されても
それでもそんなお前が俺は好きなんだから
俺も大概どうかしてる。
お前を失うだけで、こんなにも
何もかも全てが無くなる様な
感覚に囚われてる俺はどうかしてる。
こんな俺こそ変わるべきだろうに
俺は今、それこそ心の一欠片だって
変わりたいだなんて
微塵も思わない。
「陽介…俺さ、もう今日は仕事で疲れてるんだよ」
「あ…うん………」
「だからさ、もう寝るから」
「お、おう……え?ね、寝るのか?」
「うん、寝る…だから、お前の気が向いたら
電話して来て…で、俺を起こして」
「は?!な、ななな、なんだそれ?!」
突然の俺からの提案に
陽介がどもりながら叫んだ。
そんな声も今の俺には遠い。
「お前が起こしてくれるまで俺は起きないから」
「は?!え?悠???」
「ずっと寝てるから…そのまま起きないから、永遠に」
「な?!ば、バカか!」
「お前が俺の元に帰って来てくれるまで、俺は起きないから」
起きないからじゃなくて、
きっと起きられないから。
だって、お前がいないこの世に
どれだけの貴重性や重要性を見出せって言うんだ?
もう、疲れた…
怒るのも、泣くのも、叫ぶのも、
感情が千切れたり、恐ろしいまでに
心が揺れ動いたりするのも
お前の為でありたいのに。
菩薩の様にこの手を広げて待つのも
お前の為だけでありたいのに。
「それまでさよなら、陽介」
「…っ……ゆ、悠……」
「………………なんで陽介が泣くんだよ…」
「だ、だって…お前が…」
「知らない…許してやらない…俺は疲れた…」
陽介の涙声が響いて痛い。
お前が別れようって言ったんじゃないか…
泣きたいのは俺なのに。
でも、こうやっていつもほだされて、
俺はお前を受け止めるために
両手を広げていつも待ってるのに。
お前はそのなんだか判らない理由をぶら下げて、
その理由で俺を振り回して、
俺の唯一無二の幸福を奪おうとしてる。
知ってるか?俺が結構短気なんだってこと。
お前が勝手に菩薩級なんて言ってるけど
その実、結構短気で嫉妬深くて、腹黒くて心の狭い
どうしようもない人間なんだ。
それに『仏の顔も三度まで』っていうだろ?
もう5度目だ…だから今回はダメ。
許さない…だって泣きたいのは俺なんだ。
それをお前は分ってない。
「別れよう…さよなら、陽介」
「ちょ…待て…悠…っ!」
「もう疲れた…もういい…さよなら、陽介」
陽介の次も聞かずに俺はそのまま通話を終了した。
手に持った携帯電話は若干熱くて、
俺の目頭に似た熱を持ってた。
「さよなら…か…」
力尽きるみたいに、ベッドへと寝転んだ。
夜空には月と星と…なんか色々綺麗なものがある。
でも今はそれがとても怖くて仕方ない。
お前がいないから、色々怖くて仕方ない。
「嫌なんだよ…別れたくないのに、
なんでお前は簡単に別れようなんて言うんだ」
なんでそんなこと言えるんだ?
俺はお前が隣にいてくれて
俺に笑いかけてくれるだけでいいのに。
今すぐ電話して来い。
すごい後悔して土下座もので
電話して来い…
いや…ちょっとそれは
カッコ悪すぎるから止めとこうか。
お前も一応、“男の子”だしな。
月明かりに俺はぼんやりとお前を想う。
お前の親友であって、悪友でもあって、
その実、恋人でもあって
そんな関係をずっと続けて。
俺はお前を受け止めることばかり考えて
俺の気持ちをお前に投げてなかったんじゃないか?と
今更思った。
もっとちゃんと…それこそさっきの会話の様に
ストレートに言っておくべきだったのかもしれない。
「でも、さっきのは少し言い過ぎたかも…」
俺が後悔と一緒に溜息を吐き出すと
途端、携帯電話がけたたましく
着信を告げた。
ディスプレイを覗き込むと
やっぱり、陽介で。
でも俺はそれを無視した。
なんだか出たくない。
いや…電話して来いって言ったのは俺だけど…
ちゃんと目を見て話したい。
そんな気分。
言い過ぎた気がするのに、
まだ話したいなんて
俺も大概だ。
それに…こんなに早いのはどうなんだ?陽介…
お前から別れようって言ったんじゃないか。
ちょっとカッコ悪すぎないか?それ…
「陽介らしいというか…なんというか…」
俺は携帯を握り締めながら苦笑する。
その間も何度も何度も何度も、
まるで泣いて・叫んで・発狂して、
このまま破裂するんじゃないかってくらい
着信音が鳴る。
何度見ても着信は陽介からで
俺はそれをぼんやり眺めて呟いた。
「流石にさ…5度目はさ…陽介」
鳴り続ける携帯。
それは陽介が泣いてるみたいに聞こえた。
それだけで、ほだされそうになる気持ちが降る。
ああ…もうどうしようもない。
陽介、お前はまた俺に胸を貸せっていうのか?
鳴り続ける携帯電話に小さくキスをして
俺は祈るみたいに目を閉じる。
外では誰かがタクシーから降りてきて
物凄い勢いで料金の支払いをしている声が聞こえた。
おつりはちゃんと貰っておけよ…
あ…小銭落とした。
その誰かが次は、階段を壊すんじゃないかって
勢いで駆け上がってくる音が聞こえる。
一番上の段で躓くクセ直せ…危ないから…
その誰かが廊下を走る音に、ツルツルとスニーカーが
滑って転びそうになる音が合わさる。
その靴、合ってないんだから止めろって言ったのに…
俺はその音の全ての出元が
あまりにも簡単に予想出来て
ニヤリと一つ悪い笑顔。
渡しておいた合鍵でドアを開けるのに1分。
探さない…探さない…鍵はこの間買った
腰のチェーンに付けたキーケースについてるだろ?
玄関を駆け込んでくるのに、上手く靴が脱げなくて
顔面から転んで・痛くて・唸って50秒
あー…あとで冷やさないとな…それ…
俺のいる部屋まで走りこんでくるのに
引き戸を逆に押して、開けられなくて焦って30秒
『え?鍵掛かってる?!』って、元々鍵なんかついてないだろ…
計:2分20秒
まぁ、時間なんてどうでもいいか…
お前がその扉から入って来た瞬間、
俺はほだされて、全部許してしまう自信がある。
もう心の中では俺の中の菩薩が
お前の為に手を広げて待ってる。
本当…俺も大概だ。
俺が苦笑するのと同時に
扉が開いて、予想通り陽介が走り込んで来る。
泣きながら俺の胸へと
飛び込んで来てとりあえずの平謝りを繰り返す
陽介を受け止めて、包むみたいに抱き締めながら言った。
「で、どうしてくれるんだ?」
陽介は涙で目を腫らしていて、
髪も服もめちゃくちゃで、息も上がってて
見た目も精神的にも
とんでもないことになっているんだけど
俺へと必死の形相で言って来た。
「すすす、好きです!すっげー好きです!
だから、俺と一生一緒にいて下さがぁ…っ!」
「…陽介…………」
なんで噛むんだよ…この期に及んでお前は…
その様子と言葉に俺は笑う。
俺達はきっとどっちもどっちで。
どっちとも、もうどうしようもない。
「悠…っ…その…っ…俺、お前じゃなくちゃダメで…それで…っ」
俺は陽介からの言葉に泣きそうになりながら
叫ぶのを堪えて、気が狂うんじゃないかってくらいの
喜びを噛み締めながら、千切れ飛びそうなくらいの
幸せを感じて言った。
「お前となら喜んで」
Fin
某所で某御方にご紹介頂いた楽曲イメージの
創作でしたーーーーーーー
お目汚し大変申し訳ない;;
(しかも一回全部消えてるし;;;;)
鳴上くんは陽介好きすぎるといいv
陽介はもっと頑張ろうって無駄に息巻いて
空回りな感じで、鳴上くん困らせたらいいv
そんな 鳴→→←←花な、鳴花が好きv
(どやかましい;;)
楽しんで頂けたら倖い。