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【夢で逢えたら】

八十稲羽祭4での無料配布本UPー。
わ、忘れないうちに…(;´△`)

初夢

三割増し

理想

な、感じで。
いってらっしゃいませ。




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一富士、二鷹、三茄子(いちふじ・にたか・さんなすび)
四扇、五煙草、六座頭(しおうぎ・ごたばこ・ろくざとう)

初夢にこれらを見られれば、その年は安寧だとかなんとか。
そんな古い言い伝えがこんな口論になろうとは…。

「陽介、一体何をされたんだ!?」
「だー! ななな、なんもされてねーって!」
「じゃあ、なんでそんなに顔が赤いんだ?」
「こ、これは…とにかく! なんもされてねーって」
「問題ないなら、何があったのか教えてくれたっていいじゃないか」
「そ、それは…っ」

新年新春初喧嘩。

俺は 陽介へと普段は有り得ない程の剣幕で詰め寄った。
だが、俺の尋常じゃない様子を見ても
頑として答えようとしない陽介。
その頬はとても赤くて、それが俺は気に入らないから
衝動的に声を荒げてしまう。


初夢の話になって、吉兆を示す夢の話になった。

一富士、二鷹、三茄子(いちふじ・にたか・さんなすび)
四扇、五煙草、六座頭(しおうぎ・ごたばこ・ろくざとう)

初夢にこれらを見られれば、その年は安寧だとかなんとか…。
『爆睡してて夢自体観られなかった! ワンモア!』と、
騒ぐ陽介に俺は言った。

「初夢って一月一日から一月二日にかけてだぞ?」
「へ? 一月一日から一月二日? それなら見たかも…」
「見たのか? どんな夢だった?」
「う…えっと……」

そういうときょとんとした表情の陽介が、
俺を凝視するとそのままぽつりと言った。

「……お前が出てきた」
「え? 俺が陽介の夢に?」
「あ…うん……」

そのまま黙って下を向いてしまう陽介。
珍しい様子に俺が顔を覗き込むと、陽介の頬は今まで
見たことも無いくらいに赤く染まっていて。
俺はそんな顔をさせている本人が俺だったとしても
それは俺自身ではないから…そんな意味の分からない嫉妬に
俺は衝動的に陽介を問い詰めてしまった。

「何かされたのか?」
「な…なにも…っ…されて…ない…っ」
「…されたんだな?」
「ち、違…っ」
「何された? 夢の中の俺に」

俺が自然と語気を強めて言うと、嫉妬した心が漏れ出て
しまったのか今度は陽介が俺の様子に声を上げる。

「お、おま…バカか!? 夢の中の自分に嫉妬してどーすんだよ!」
「…何をされたんだ?」
「悠…? なんでそんな…」
「だって、夢の中って欲求がダイレクトに出るだろ?
      だから陽介の欲求とかして欲しいこととか聞きたくて」
「ば…バカ! そ、そんなん…っ」
「ん? もしかして…あまり良くなかった…とか?」
「ち、違…そんなこと…っ…そんなこと…ない」

そう言って再び真っ赤になってうつむいてしまうから、
その仕草に俺の頭の中で何かがプツンと切れた音がした。

「ちょっと待て…陽介、本当に夢の中で何されたんだ?」
「な、なんだっていーじゃんか…っ」
「よくない」

俺にしてほしいこととか、
望むこととかあったら言って欲しい。
陽介は意外と遠慮深くて、肝心の所は隠そうとするから。
俺がもう一度ちゃんと陽介の目を見ると促すと
陽介は俺の目を見てまた頬を染め渋々次を続けた。

「う…だから…っ…その…っ」
「ああ…」
「お、お前が…っ…」
「うん…」
「ゆ、悠が……俺…っ」
「……」

夢の中の俺…一体何をしたんだ?
人のあずかり知らぬところで勝手な真似を…。

恥ずかしがる可愛い様子に本当は喜ぶべきなんだろうけど、
俺の頭の中は何かおぼろげな怒りに支配されつつあって。
ぐらぐらとする思考を一旦止め、なんとか理性を保とうと
すると、陽介はまるで最後のトドメとばかりに言った。

「すげー…良かった…」
「っ……」

もうダメだ。もう無理だ。
俺のあずかり知らぬ所で、
まさかの無体が行われていようとは。

俺の脳内の沸点が一気に限界まで達して
焦りが怒りに転換しようとしたころ
顔を上げた陽介がキラキラ輝く瞳で答えた。

「ダンジョンの中で、すげーカッコよくて…!」
「…え? ………は?」
「俺だけのヒーローみたいな…っ…そーいう感じで戦ってて…!」
「えっと………陽介?」
「いつもの日本刀とか超ーカッコよく振ってて!
      もうなんか、こう! とにかくすげーんだって!」
「え…あぁ…そう……それは良かった…」


すみませんでした。
本当にすみませんでした。
陽介の天然ピュアっぷりを忘れていました。

俺の脳内はすでに(夢の中の俺が陽介に働いたであろう
無体を想像して)目に痛いくらいの色で埋め尽くされて
いるのに、そんな可愛い答えを貰ったら
一体どうしたいいのか。

「陽介…その……」
「ほ、ホントカッコよかったんだって! お前がすげーキラキラしてて…っ」
「あー…うん…それは嬉しいな……あはは…」

思わず生返事した俺に不服だったのか、
今度は陽介の方が俺へと詰め寄って来た。

「マジだって! すげー颯爽としてんだって!」
「……そんなのいつも見てるだろ?」

なんだか悔しくて、俺が思わず言い返す。
正直、あんまりな自惚れた返しだと思うけれど。
すると俺からの悔し紛れのその言葉に、陽介は両手で
握りこぶしを作って反論してきた。

「バカ! いつもの三割増しくらいだったんだって!」
「………三割増し…」

夢の中の俺が陽介に大絶賛されている。
それは俺のはずなんだけど、
やっぱりなぜだかとても面白くない。
例えるならば、恋人が自分に良く似たアイドルに夢中みたいな…
そんな感じか? ああ…そんな感じ…多分、そんな気がする。

「すげーカッコよかった…そっか…アレが俺の初夢かー」
「………」

陽介の頭上…ものすごく盛大に花が飛んでいるのが見えた。
今年良いことありそうだなー…とかニコニコ笑って俺を見る。
一方、俺は憮然としたまま…
嬉しそうなのは何よりなんだけれど、
俺にとってはやっぱりなんだかどうしても面白くない。

「ん? どした、悠」
「三割増し…そうか…なら、いまの俺は三割減か?」
「は!? なな、なんでそーなんだよ!」
「三割増しなんだろ? カッコよかったんだろ? それは良かったな…」
「な、なんで怒ってんだよ、褒めてんじゃんかー!」
「………」

確かに褒められてはいるんだけど、
それは本当の俺じゃないから大人げなく
不貞腐れてしまうのは仕方のないことで。

「だって、それは陽介が作り上げた理想の俺で、
 つまりは今の俺に満足してないってことじゃないのか?」
「は? ままま、満足って…え?」
「そうか…俺、足りないのか…」

もうなんか、色々と我慢の限界だ。
これはもう、遠回しのお誘いと感じる方がいいだろう。
そんな脳内言い訳を繰り広げつつ、
俺は陽介へとにじり寄り、グっと体を引き寄せた。

「お、おい…ちょっ…こ、コラ! ま、真昼間から何考えて…っ」
「陽介のこと考えてます」
「ば、バカか…っ」

陽介は真っ赤な顔で悔しそうに唸るんだけど、
その手はしっかりと俺の袖を掴んでいて。

それがOKのサインだと
俺は取ったのでニヤリと笑って覆いかぶさった。


     ・
     ・
     ・

「という、初夢を見ました」
「悠…これ…確か前にもやったよな?」
「さて…なんのことやら…筆者に聞いて下さい」

俺はニヤリとワザとらしく笑うと、
コーヒーを淹れていた手を再び動かした。
その背後でなんだか不満そうな陽介の気配がしたから
俺が少し驚いて振り向くと陽介と目が合った。

「陽介……?」
「なんだそれ…なんかヒデーじゃん…っ」
「あー…いやー…陽介がピュア過ぎて大変だったよ?」
「ちげーって、そーじゃねー! そそ、その後どうなったんだよ…っ」
「え?」
「だ、だから…その後…夢の中の俺と…っ」
「………」

真っ赤な顔して想像した内容に自ら恥ずかしそうにする陽介。
俺はビックリな返答と、目の前で繰り広げられる
珍しい陽介からの可愛い嫉妬に思わず笑ってしまった。

「ば…バカ! 笑うなああぁ!」
「夢の中の自分に嫉妬してどうするんだ? 陽介」
「そそ、それはお前だろーが!」
「いやいや…」

そういってまた笑った俺が余程不満だったのか、
陽介は詰め寄り胸倉を掴んだ。

「え…陽介…っ」
「っ…」

俺が突然のことに動けないでいると
真っ赤な顔した陽介が、俺の右の頬へ目がけてキスをした。
チュって、それはそれは可愛らしい音を立てて。

「ここ、こうやって俺とキスとかしたか?」
「……いや」

まさかの陽介からのキスに、
今度は俺の方が言葉に詰まってしまって。
きっといま、俺の頬は陽介に負けないくらい
赤く染まっているんだろうと容易に想像がついた。

「違う…全然違う…」
「じ、じゃぁ…どうやって…っ」

自分からのキスが余程恥ずかしかったのか、
なんだか必死の形相の陽介が顔を上げて俺を見つめる。

違うと言われて『不足だ』と取ったのだろう。
悔しそうに唇を噛みしめる仕草が可愛いくて仕方ない。

「知りたい?」
「う…うん…っ」

俺はそれを見てまた笑うけど、
それは自分で言うのもアレだけれど
すごく幸せに笑っていたんだと思う。

「こうやってキスしたよ」
「ふぇ…っ」

そう言って、俺は真っ赤な顔した陽介にキスをして。
陽介から感じる体温を匂いに笑う。
初夢で逢えるのももちろん良いけれど、
こうやって俺が予想もつかないことをしてくれる
本物の方が数段いいに決まってる。

「ちょ…悠、待…っ」
「こっちの陽介の方が三割増しですごくいいよ」
「ば、バカ…っ…」

そのまま陽介へと覆いかぶさった俺の耳に聞こえて来たのは
沈んだソファの音と、陽介の息遣いと俺を呼ぶ声で。
俺はそれに理性とか日常に必要なモノ
全部を持っていかれてしまって、初夢とか、その日の予定
とか正直どうでもよくなってしまった。

そしてそのまま陽介に夢中になって朝を迎えてしまったから
それ以外のことは、ほとんど何も覚えていない。

「お前は…っ…こ、今年は…ま、まずは我慢を憶えなさい…!」
「はいはい」

翌朝部屋に響く、陽介からのお叱りに俺はニヤリと笑った。

新年新春初…なんとやら。
俺は笑いながら、また今年もこんな風に可愛いヤキモチを
妬いてくれるお前と、笑って過ごせることを祈ってた。


Fin









とゆーわけで、無料配布本話UPでした。

来て頂けた方へのおみやげ的な本~。
初夢でいちゃいちゃさせようとしたら
見事失敗した例です(達観)

……orz

楽しんで頂けたら幸い。









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