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【ライトニングロッド】

大学生主花:本ばかりに夢中になって
かまってくれない主人公に陽介は面白くなくて……。

原稿息抜きで書いてしまった……((;´△`))
原稿頑張る;サーセン;



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駅前に新しく出来たカフェ。
俺達の待ち合わせによく使うその店。
落ち着いた雰囲気が気に入ったのか、
悠はよくそこを指定してきた。

心地いい風が吹き込んで来て
コーヒーのいい匂いがして、ソファもフカフカで。
天気も晴天で、すっげーデート日和なんだけど……。

俺の恋人は、俺より“本”に夢中みたいです。


「悠ーーーー」
「ん?」
「もうそろそろ行かねーか?」
「ん、あと少しだけ待ってくれ」

再びのワンモア・コール。
今日何度目かも分からない言葉に
俺は脱力した。

「お、おま……さっきからそればっかじゃねーか!」
「ん? んー……」
「ううぅぅ……コイツ……っ」

バカバカ……もういい加減こっち向けって。

そう念じて視線を送るんだけど
悠は夢中で本を読み続けていて。

俺はそんな悠を見てまるで
置き去りにされた様な気分になってしまう。

それと同時にさっきから気になっているのは
周りのお客の視線で……。(特に女性客)

『カッコいいねー』とか『どこの大学かなー』とか
『隣座っちゃう?』とかとか……。

色々面白くない会話が、やけに鮮明に聞こえた。

「くっそーー……っ」
「陽介?」
「いや、なんでもねー……」

女性客が誰を夢中で見ているかなんて分かりきってて、
そして俺はそれも気にいらない。

「俺の……なんだけどな」
「ん?」
「う……な、なんでもねー…」

不思議そうにこちらを見るその仕草も
なんかすげーカッコ良くて。

やっぱ、すげー好きで。

そんな浮ついた気持ちに水をかける様に
『声かけちゃおうか?』なんて再びに黄色い声が
同時に聞こえて来るから益々気に入らなくて唸る。

「もういい……俺、帰る」
「陽介?」
「なんて、嘘……」
「……陽介?」
「嘘だよ……うそうそー…あははー……」
「えっと……ごめん、もう少しだけ待ってくれないか?」
「……うん」

大学生になってお互いに時間が合わなくて、
なんとか時間を作って会ってもこの調子。

もともと高校の時から乱読家だったのは知ってるし、
(とんでもないタイトルの本読んでるの見た事あるし)
本を読むのは別にいいんだ。
そーいう悠も好きだし……。

「もう少し……ね」
「陽介?」

でも、もうちょっとかまってくれてもいいんじゃないか?
さっきから全然こっち見ねーし!
楽しそうに本読んでっし!

「……そんなんばっか」
「ん? 陽介?」
「うん……そんなんばっか、俺ん中って…」

夢中で読み続ける相棒に、焦れて来るどころか
なんか悲しくもなって来ちゃったりしてて。

そんな悠を見続けていたら『俺と本とどっちが大事なんだよ!?』
なーんて、お決まり&カッコ悪い言葉が
俺の喉元まで上がって来てしまっていた。

これ以上ココにいたら、そんなどうしようもないセリフを
本当に言ってしまいそうだ。

「悠ー……本、楽しいか?」
「ああ、楽しいよ?」
「……そっか」

つまりはさ、悠にとって俺は
本より魅力が無いってことじゃねーの?





「うわあぁ…サイアク……俺ってサイアク……っ」
「ん?」

なんて……女々しいにも程がある。
でもちょっとくらい向いてくれてもいいと思うんだけど……。

「陽介? どうしたんだ」
「うん……」

先程の俺の声に反応したのか、少しだけこっちを向いてくれて
そんな悠の視線に向かって、俺は反射的に言葉を投げた。

「避雷針になりたい……」
「陽介?」
「う……な、なんでもありません」

避雷針なんて偉く突拍子もない例えなんだけど。
俺はそれくらいお前を惹きつけたい。

あの、目がくらむ様な印象的な雷鳴と閃光が、
誰しも感嘆の声を上げる絶対的な存在が、
俺に向かってまっすぐ迷いなく。

そんなことばかり考える。


「……悠、眼鏡外せよ」
「え? ちょ…陽介?」

俺は半ば強引に悠から眼鏡を奪い去った。
こうなりゃもうヤケだ。

大学生になって視力が落ちたとかで
かけ始めた印象的な黒縁の眼鏡。

別に似合ってないわけじゃない。
悠の少し冷たい様な、
その端正な容姿には逆にそれはピッタリで。

あのテレビの中での日々を思い出し、
ちょっと懐かしくもなる。

けれど、それと同時にあの時よりも俺達の距離が
若干遠い様に感じてしまうのは、俺が欲張りなせいだろうか。

俺はワザとらしく目を釣り上げると、
悠を少し強めに責めてみた。

「あのさ、本読みにきたの? 俺と待ち合わせに来たの? どっち?」
「陽介との待ち合わせに決まってる。本はついで」

そう言いつつ、もう20分はまともに顔を上げてくれてないじゃんか。
さっきも『もう少しだけ待ってくれ』って、
あとどんだけ待てばこっち向くんだっつーの。

「ほら、眼鏡返してくれ」
「い・や・だ! もーいいじゃんか!」
「あと少し、あと少しだけだから……」

そう言って俺の手から眼鏡を奪い取ろうとするから、
俺は咄嗟に身をひるがえすと、体ごとかわしてその手をやり過ごす。

「そんな簡単に渡すか! 遅い!」
「……さすが、最速の男」
「へへーん。遅くなったんじゃありません? 相棒さん?」

上手くかわしたそのままに、俺は悠を睨んだ。
大人げないって分かってんだけど、
俺、目の前にして他に夢中ってどうなんだよ……。

明らかに機嫌の悪い俺を見て、悠は一つ
ため息を吐くと本を一旦閉じて俺へと向き直った。

「はぁ……どうしたんだ、今日は」
「べ、別に……」
「ほら、眼鏡返してくれないと小さい文字が見えない」
「ま、まだ昼間だし。そんな見えなくないだろ!」

ってゆーか、本やめろ! そんなに言うならコレだ!

奪い取った黒縁の眼鏡を返さずに、
眼鏡に追いすがる悠の手を払いのけると
そのまま自分へと装着してみた。

「うぉ……っ…キツー…」
「馬鹿、目が悪くなるぞ」

途端視界に飛び込んで来た景色が
今まで見たこともない景色に変わった。
ぐにゃりと曲がったり、そのまま二重にダブって見えて、
そう思ったらぼんやりしたまま拡大されたり。

この世界をいつも見ているのか。
だったら俺なんてその他大勢なんじゃね?
そりゃ本の方が大事かもな……

「うぅ……またドツボ…」
「陽介?」
「な、なんでもねー!」

でも……。
せめて、もうちょっとこっちに注意を払ってくれるくらいでもいい。
その雷鳴と閃光がこっちを向いてくれるだけでいいのに。



「本が“ついで”なんて、嘘つき……」
「陽介?」

悠の眼鏡をかけたまま、俺は改めて悠へと向き直ると
爆発した様に声を上げた。

「嘘つきじゃんか、俺と本とどっちが……っ」
「嘘はついてない」
「嘘じゃん! 顔上げねーじゃん! さっきから……っ」
「陽介、どうしたんだ……」
「う……だ、だって……お前が……っ」

マズったと思った。
これは人様から見ると、
子供にみたいに不貞腐れてる状態だよな……。

俺が自らの迂闊さに唸るのと同時に悠の手が伸びて来ると、
眼鏡を俺から取り返しつつ言った。

「お前の……陽介の目が悪くなったら困る」
「は? べ、別にお前は困んないじゃんか……っ」
「困る……その目が好きだから、困る」
「は!? ば…お、おま……っ」

周りにいる女性客が耳をそばだてて聞いているのは
分かっていたから、今の会話に焦ってしまった。

慌てて辺りを見回す俺を目の前に、
悠はなんでもない様に続けて言う。

「陽介が好きだから、目が悪くなったら困る」
「だ、だから……そーいうのココでは…っ」
「その目で俺を見ていてくれるのが好きだから、安心して本が読める」
「は??」

何言ってんのかわかんなかった。
安心して本が読める?

なんで??

「えっと……ごめん、意味わかんなかった」
「陽介の傍だと安心してるからこうなる」
「は?…いや、だから意味わかんねーって」
「ん? 嫌だった?」
「ち、ちげーって……そ、そーいうのは……っ」

なんだそれ…俺のおかげで安心してるなら、
安心の源をもっとかまいなさい……。

「ち、超ハズい……っ」
「はは……ごめん」
「う……いいですケド」

『だったらもっとかまって』…なんて、
そんなことが言えるはずもなく。

どーせ、からかい半分だろうと、俺はワザと
眉間にしわを寄せると悠を睨み付ける。
そんな俺を見て悠は苦笑すると、今度は目を伏せて言った。

「陽介の傍だとなんか安心してるみたいだ」
「そ、そうか……?」
「ああ、安心して本を読んでる。お前の傍が心地よくて」
「っ……そ、そーいうのって…」
「うん、陽介の傍が一番いい……お前の傍が一番好きだ」

幸せそうに笑ってこちらを見る仕草に
なんか負けた気がして仕方がない。

そーいうのって、俺以外だと
全然アレってことでいいのかな?



「ゆ、悠さん? 念のため聞くけど……お、俺と本とどっちが大事?」
「そりゃ勿論、陽介が大事」
「……そ、そーですか」

真っ直ぐ向いてちゃんと言ってくれた。

迷わず真っ直ぐ俺に向かって来た雷鳴と閃光に、
俺の全部はくらくらして大変なことになる。

「お、俺は……」
「ん?」
「俺は、お前とお前の料理なら、お前の方が好き……」
「……料理??」

なにそれ? 俺! ダイジョーブ!?
料理ってなに? それってどういう比べ方??

「あ…………い、今の無し! マジでごめん、意味わかんねーよな…ははっ」

自分の言葉のバリエーションの無さに頭を抱えつつも、
茹でられた様に熱を持っていく頬を持て余して下を向いた。

そんな俺の後頭部目がけて
フっと笑った様な声が聞こえて来たから
反射的に顔を上げると笑った悠と目が合った。

「そうか、そっちかー…それは予想してなかったなー…」
「ば、バカにしてんのか…お前は…っ」

悠は破顔しつつも嬉しそうにニヤニヤするから
俺は悔しくなって声を上げる。

すると悠はいつも通りのニヤリとした笑みに、
優しく染み込むみたいに、すごく幸せそうな笑みを加えて言った。

「いや……それって両方“俺”だなって」
「なっ……!?」
「俺って愛されてるなーー……」
「うううぅぅ……」

お前の雷鳴と閃光は真っ直ぐ迷いなく
俺へと飛んできて、俺を射抜いて虜にする。

両方どころか、全部お前だっつーの!
くっそおぉぉーーー!


「陽介? どうした、大丈夫か?」

反応の無い俺を心配したのか、心配そうに顔を覗き込んでくる悠。

その視線から逃げるみたいに、真っ赤に染まっているであろう
顔面をぐっと下へと向けると俺は言った。

「そ、そーだよ! 全部お前だっつーの!」
「陽介……」

悠の雷鳴と閃光に茹でられたみたいに熱を持っていた頬が
更に熱くなって、その熱が脳内まで伝わると
俺は衝動的に立ち上がり叫んだ。

「うわあああ! ハズいーー! もういいーー! 俺、ホント帰る!」
「ごめん、ごめん……行こう、今度こそ」

そう言って追いかけて来る悠の声からも
逃げるみたいに早足で出口を目指し
勢いよく出口の扉を開ける。

すると、街路樹がオレンジ色に染まった姿が
視界いっぱいに広がった。

「すげー! きれいだな……」
「ああ、俺の好きな色だ」
「な、なんだそれ……」

いつの間に追いついたのか、背後に立った悠へと振り向くと
俺は口を尖らせて言う。

「い、いいか? 今日はもう本無しだかんな!」
「うん、今日はもう本は無し。今日これからの俺は“陽介専用”で」
「う……お、おう…」

オレンジ色に染まった並木道。
俺達は他愛もない話をしながら歩き始めた。

「じゃ、俺も……今日これからは“お前専用”で」


Fin















ホントはこれと対になる作品があったんですが
こっちが先に仕上がっちゃった…みたいな;;;;;
ふわっと書きたくなってしまったので;;;

楽しんで頂けたら幸い。
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