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【君の壊れる音(13)】

【主人公視点】背後から現れた鳴上のシャドウ。彼の思惑とは…?

※多少ではありますが流血シーンがあります。
苦手な方はどうかご注意下さいませ。

UP遅くてスミマセン;頑張ります;


拍手[1回]








赤く染まった空の下。
陽介が俺の背後に見た姿が誰なのか、
その只ならぬ様子と気配で察した。

「悠のシャドウ……っ」

陽介の声が発せられたのと同時に
勢いよく振り向く。

そこには自分と全く同じ姿があったのだけれど、
自分自身だと思えないほど冷たく笑うその様子に
肩口が震え怖気が走った。

「待ってたよ、陽介……」

その声と存在は不安とか、悪意とか、妬みとか、
この世の嫌なものが全部詰まった様なものの塊で。
立ってるだけで全てを淀ませていくのが分かった。

「陽介逃げろ……!」

恐怖に背中を押されるみたいに陽介に向き直り声を上げた。
それと同時に傍らに置いてあった日本刀を握るため体を起こすと
俺の下腹部を、鋭利な何かが鈍い音を立てつつ突き抜けた。

「が……っ!」
「ゆ、悠!?」

溢れる様に湧き出る液体。
見ると、先程まで使っていた刀が
背後から俺の右下腹部へと刺さっている。

「くっ……ぁ…っ」

傷口を手で押さえると生暖かい感触がする。
海の様に広がるそれは、びちゃびちゃと
癇に障る何とも言えない音を立てながら
俺の目の前で赤い色で波打った。

「悠、大丈夫か!? おい、クマ聞こえるか!? 悠が!」

その場に倒れ込む俺を抱きかかえる陽介。
先程までナビをしてくれていたクマを呼ぶが
なぜだか返事がない。

「くそ、こんな時に何やってんだ! あのクマ!」

赤い空を見上げて何度叫んでも声は聞こえない。
そういえば、先程から何の反応もなかった。
いつもなら五月蠅いくらいに騒いでいるのに……。

「悠! 大丈夫か? ど、どうしたら……っ」

陽介は俺の傷を見たことで背後の存在を完全に失念してしまったのか、
シャドウへと背を向け俺の名前を何度も呼んでいる。

「よ…う…すけ……ダメだ早く……っ」
「悠、聞こえるか!? 俺のこと見えるか!?」
「っ……早く…っ」 

『逃げろ』と叫びたいのに、
出血の為か上手く声を張り上げることが出来ない。

陽介は俺の傷と様子を見て、さらに焦り始めたのか
何度か自らの手の平を観るのだけれど
望んだ姿が浮かび上がって来ないことに苛立って声を上げた。

「悠っ…くそ…! 俺、いま回復使えねー…ジライヤ、出てこいって…っ」

自らのシャドウとの融合を果たした直後だったからか、
陽介はまだ上手くペルソナ能力を召喚出来ないでいるようで
悔しそうに顔を歪ませる。
 
「と、とにかく止血しないと……っ」

陽介は震える手で俺の傷口を塞ごうと手を伸ばす。
だが、その手は別の何者かの手へと絡め取られ、
陽介の体ごとその手を引っ張った。

『ダメだよ』
「え……なに…っ!?」

突然引っ張られて驚いた陽介は、抵抗も出来ずに
その存在の腕の中へと抱きすくめられてしまう。

『ダメだよ、陽介……血で汚れるよ?』

その存在は陽介を羽交い絞めにするように
抱き締めると、そのまま動けないよう拘束した。

「悠のシャドウ…っ…くそ、離せっ…!」

シャドウは足で俺を蹴り飛ばし距離を取らせると、
背後から抱き締めた陽介にすり寄り笑う。

「な、なにやってんだ! 悠っ…早く手当しないと!」
『手当?』

陽介の声を受けたからか、
こちらへと視線を投げると舐める様に俺を見た。
その視線は先程触れた液体によく似た生温い感覚だったから、
脳内が警鐘を鳴らし、俺を焦らせる。

『もう、いいんじゃないか? 放っておいても』
「な!? そんなワケいかねーだろ!!」

ひゅーひゅーと空気が苦しげに漏れるような音を立てて
呼吸を繰り返す俺を見て、シャドウは顔を少し傾げると、
張り付いたような笑顔で俺たちを見て笑う。

『陽介…コレが死んだら泣いてくれる?』
「なにを…っ」
「…ぁ……陽介っ…逃げろ…早くっ」

分からない…本体にこんなことをして。
本当に入れ替わろうとでも言うのだろうか?

必死に次を考えようと思考を巡らすけれど
未だ止まらない出血のためか、上手く考えが回らない。
シャドウは動揺する陽介へとなだめる様にすり寄ると、
俺の下腹部へと刺さったままの刀を片足で抑える。

『ああ、そうか…これ刺しっぱなしじゃ邪魔だな』

そう言うと鍔をつま先へとひっかけ、後ろへと足を引くその勢いで
俺の腹部から刀を強引に引き抜いた。

「っ…うあぁぁっ!!」
「悠! くそ、離せ! 悠っ……」」

肉が引き裂かれる音がして、一瞬意識が飛ぶ感触がした。
激痛のおかげか、なんとか踏みとどまるが
更なる出血で地面へと突っ伏してしまう。

「ぁ……ぁっ…」
「悠っ!……おま…ざけんなっ……離せ!」
『だから…ダメだよ? 陽介』

シャドウは駆け寄ろうとした陽介を遮りつつ、
足で引っかけた刀を高く蹴り上げると
器用にも柄を手で受け止め構えた。

「陽介……っ…ぁっ…逃げろっ」
『まだ死なないか……』
「悠! 悠……っ」

シャドウは心底嫌そうな表情でこちらを一瞥すると
突っ伏している俺の首筋へと
刃を当てて薄く笑う。

『陽介、コイツ殺していいかな?』
「!?」
「ダメに決まってんだろ! お前っ…正気か!?」

陽介の言葉にも動じない。
逆に嬉しそうに微笑む姿に恐怖を感じた。

『だって、陽介が俺の方へ向いてくれないから……』
「な、何言ってんだよ。お前のこと……す、好きだって言ったじゃんか……っ」
『んー…… ちょっとね、それじゃダメかな……』
「え……?」

何を考えているのか。
欲しているモノに検討がつかない。
俺は動けないまま様子を伺い、思考を巡らせるのだけど
その様子に気が付かれてしまったのか、
シャドウは顔面を歪ませながら笑うと言った。

『んー……じゃあ陽介が俺の言うこと聞いてくれたら、止めてあげるよ?』
「え……」
「ダメだっ……陽介、逃げろ!」
『五月蠅いな、お前』

シャドウは会話へと割り込む俺へと吐き捨てる様な表情で
毒を吐くのけれど、一瞬で顔色を作り替えると微笑みながら言った。

『陽介……俺の言うこと聞いてくれる?』
「……ゆ、悠は?」
『さて、どうしようかな? 全部、陽介の思うがままだよ?』
「……それは…」
「陽介、ダメだ…!」

シャドウはまるで子供の様に、
無邪気な様子で笑いながら問いかけて来る。

『やっぱり、シャドウの俺じゃ…嫌?』
「い、嫌じゃない、嫌とかそーじゃなくて……上手く言えないけど
 でもなんかお前おかしい…なんか違う……何かが引っ掛かって……っ」
「陽介……?」
『…………そうか』

陽介の言葉にシャドウの金色に底光りする瞳が
更にぞっとするような輝きを見せる。

小さくため息を吐くと今度は手に持っていた刀を玩具の様に振り回し
俺の首筋だけじゃなく、体のさまざまな箇所へと
切るフリをして何度も刃を宛がい始めた。

「痛っ……」
「悠! おい、やめろ! やめてくれ…っ」
『やっぱりシャドウは、ここにずっと……』
「え?」

何かにうなされたような表情で
俺を切り付け続けるシャドウ。

その切っ先が皮膚に触れるたびに、
服から除く体の部分が小さな切り傷を作る。

傷のため動けない俺がヒリヒリする痛みに耐えながらうずくまっていると、
耐えられなくなった陽介がシャドウへと向き直り声を上げた。

「もういい……わかったからっ…お前の言うこと聞くから…っ」
「陽介っ…ダメだ……っ」

本気だと陽介は悟ったのか、
シャドウへと懇願する。

「俺、なんでもする……だから悠を殺さないでくれ…っ」
『ん……そうか、それでいい』

シャドウが陽介の言葉に満足そうに微笑むと、
二人の傍に人一人が通れるくらいの
空間のひずみが出来る。

飽きた様子で手に持っていた刀を
茂みの中へと投げ込むと、俺へと吐き捨てる様に言った。

『じゃあ……今度こそ、さよならだな』
「待て! 陽介をどうするつもりだ……っ」
『心配しなくても大丈夫、俺のものにするだけだから』
「なにを……っ」
『もうお前のもとには戻らない…俺のものにするんだ』

嬉しそうに陽介を抱きしめるシャドウ。
動けない陽介はされるがままで、
悲しそうな表情で俺を見た。

「陽介、ダメだ戻れ……行くな…っ」
「悠、すぐ戻る……お、俺がなんとかする…から……だから待ってて…っ」
「陽介……っ」

シャドウは陽介を抱きしめたまま
ひずみへと入っていく。
俺の見つめたままの陽介が
シャドウと共にひずみの中へと消えた瞬間
ひずみは閉じ、空間のゆがみだけが残った。

「陽介……っ…くそ……っ」

痛みと悔しさで、俺は唇を噛みながら呻く。

陽介を連れ去って何をする気なんだ?

最悪のシナリオがいくつも
脳裏をかすめて震えるほどの吐き気が襲って来る。

「ダメだ、考えないと……痛っ……」

未だ溢れて来る血液。

傷口を手で押さえながらまだ完全に閉じていないひずみを見て
何か手段はないかと思案を巡らせるのだけれど、
痛みの為に思考どころか、力さえ入らない。

「くそ……っ…コウリュウか…せめて、何か回復手段を……っ」

そう苦しげに声を出した途端、
俺の手の中で何かが光る。

見覚えのある感覚と高揚感に俺は目を見開いた。

「これは……っ」






to the next…












バタバタしててスミマセン;;
やっとここまできたーー;;;;

楽しんで頂けたら幸い。
次回もお付き合い頂けたら倖い。






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