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【君の幸せを願う幸せを】

クリスマス主花創作 大学生:同棲編(主人公視点)っす。
クリスマスイヴの夜、帰路へと着いた鳴上が観たものとは…?
ナイーブなセンセイが居ます(苦笑)


スープ

告白

いつから


な、感じで。
いってらっしゃいませ(*´∀`*)ノ


拍手[4回]












大学でゼミだのレポートだの
少しだけ手間取った数日間。

面倒事が終わったのが今日…丁度、クリスマスだったんだけれど
こういう状態だったから特に陽介と約束なんてしていなくて。

今夜もあらかじめ陽介にメールで遅くなる旨は伝えてあったけれど
せっかくのクリスマスに申し訳ない気持ちもあったから
小さなクリスマスケーキを駅前の洋菓子店で買って俺は帰路に着いた。

白い息がはっきりと見え、鼻先から勢いよく立ち昇る程に冷えた空気の中
静かな住宅街にはそぐわない甲高い声が前方から聞こえてくる。

「そんな難しく考えなくても大丈夫だって!
 食事に誘って、もし大丈夫なら
 そのままなし崩しに関係もっちゃえばいいじゃん!」

「え!? そ、そんなの…」

「………」

前を歩く女子大生だろう二人組が
なんだか凄い話をしている。

先程から元気よく際どい話をしてるのがショートカットの子。
引きずられるようにして一緒に歩いているのがロングヘアーの子

どうやらこれからロングの子の意中の相手の部屋へと押しかけて、
告白&彼氏のいる素敵なクリスマスとやらを実行中らしい。

「大丈夫、大丈夫! アンタ可愛いから!」

「え…そうかな? でも、もし恋人とかいたら…」

「そんなの関係ないじゃん! いても奪っちゃえばいいんだよ!
  それに彼、今日は特に予定はないって言ってたんでしょ?」

「う…うん…」

展開される話題についていけないどころか、
なんだか聞いてるこっちがいたたまれなくなる。

関係を持つとか…奪うとか…。

なんとか意識を別の方向へと逸らそうとしていると、
片方の女子から聞き覚えのある名前が出てきた。


「大丈夫だって! 花村くんなら!」


は? 花村? 花村って言ったか?

俺は思わず足を止めた。
花村なんてめずらしい苗字そうそうないはず。
それに先程から同じ方向へと進んでいる…これはもしかして…

「花村陽介くんだっけ? 彼、けっこうイケメンだよねー」

「あ…う、うん…そう…」

「ああ、大丈夫! とったりしないから!」

まずい…本当に『花村陽介』だった。
…非常にまずい…コレはもしかしなくても…。

途端脳内が混乱しはじめた俺を尻目に
二人組は賑やかに話を続けている。


「なんかさ、花村くん押しに弱そうだし!
                強引に押しちゃおうよ!」

「う、うん…」


『強引に』の言葉に少し頭が痛くなる。

あー…そうだな…弱いよな。確かに。
ニカっと笑う笑顔を思い出して少しうらめしくなる。
あれで結構、そういう強引なのに弱いんだよな…陽介は。


「それに流されやすそうだし!」

「そ、そうかな?」


もう一つ出た言葉にガクリと肩を落とす。
あー……うん、流されやすいよな。
うん…確かに。

押しに弱くて・流されやすくて…
なんだか陽介とこういう関係になっている俺が
強引に迫ったみたいで耳が痛い。

決して強引に迫ったとか、なし崩しに…とか
そういうことは…なかったハズ…。
だって陽介が欲しかったんだから仕方ないじゃないか…
……ちょっと待て…なんか、俺の方が疲弊してきたぞ。

気持ちを切り替える為に一つ深呼吸をすると
再度、前の二人組を見た。

それにしても…女子ってこんなにちゃんと色々見てるのか?
少し怖いな…なんだか全部見透かされてしまうみたいだ。

俺も男だから…実のところはこんな、いとも簡単に
全てのパターンを把握されているんだろうか?

八十稲羽でのあの日々で、俺がいつも陽介ばかり見ていたこととか、
実はけっこう必死だったとか…もしかして周りの女子には
全部がバレバレだったんじゃないのだろうかと今更に思う。

好物や好きな味付けや、仕草やクセや好きな色。
陽介が願うこと全部が気になって仕方なかった。

だからこそ必死で探して、叶えて、手伝って。
いろいろどころか、けっこう何もかもを全部、陽介で
優先してきたから…もしかしたら本当にバレていたのかもしれない。

もしそうだとしたら、正直かなり恥ずかしいし
結構いたたまれないんだけど…もし俺があの時、
それに気づいていたとしても、
やっぱり陽介ばかりを見てしまうのは止められなかっただろう。

気持ちが向かう先を止める…なんて
出来るわけもないから。

でも…それなら陽介はどうだったんだろう?
押しに弱くて流されやすい…優しくて不器用すぎる
あのガッカリ王子は、いつから俺のことを
見てくれていたんだろう?

いつから特別だ…と、認識してくれていたんだろう。
それは『特別になった』今でも、なぜかとても気になる。

それは未だに俺にとって陽介が別枠だからで、
そして未だに俺が陽介に対しては必死なんだということで…。

いろいろグルグルと堂々巡りでどうしようもないんだけれど、
それでもやっぱりあの笑顔が見たいから、
俺はお前の全部に必死になってしまうんだろう。



感慨深く当時のことを思い出していると
目的のマンションに辿り着いてしまう。

あれよあれよという間にマンション先のアーチを抜けて
ホールに設置してあるエレベーターに着いた。

どうやら階は把握済みの様で、
迷わずエレベーターのボタンを押すと
ショートの子がまた声を上げる。

「それに、アタシが一緒だったら断り辛いかもだよ?」

「え…そ、そんなの」

なんという策士…俺は思わず唸る。

二人きりなら勢いで断られるかもしれないけれど、
第三者がいれば…と、なるほどな。

なんて、感心してる場合じゃないか。

少しだけ気乗りしなさそうなロングの子を元気づける為か
オーバーリアクションで続けるショートの子を見つつ
自らの焦る思考をなんとかしようと試みるんだけど、
考えはまったく定まらない。

そして俺はそのまま、
二人と一緒にエレベーターへと乗り込んでしまった。

まずい…このままじゃ…鉢合わせする。

俺が乗り込むと二人が瞬間的にこちらを見た。
その視線から逃れるみたいに意識を逸らしつつ
二人を改めて盗み見る。

同行した友達(ショートの子)は元気の良さそうなタイプ。
もう一人…告白の本人(ロングの子)は可愛いタイプか…。

改めて見るとロングの方は結構モテそうな子で、
俺から見てもふつうに可愛い子だな…と思った。

今は真っ赤な顔のままうつむいている。
どうやら緊張しているようだ。

彼女の様子を察したのか、ショートの子が盛り上げる様に
さらに声を張り上げた。


「大丈夫だって! 花村くんアンタにけっこう優しかったじゃん?」

「う…うん、そうかな?」

「そうそう! その気が無いならあんな優しくしないって!」


いや…それが陽介なんです…すみません。
なぜか自動的に謝る俺。

隣に立つ俺の方がいたたまれない感じになってくる。

脳内で八十稲羽でのこととか、こっちでの今までのこととか
色々な場面が展開するから、それと同時に俺は苦笑する。

いつだって誰にだって親身だったからこそ
色々誤解されたり嫌な目にあったんだろうけど
それを止めようとしない陽介の姿勢に
俺は目を細めてひそかに微笑んだ。


「だから好きになったんだよな…」

「「え?」」

「あ……すみません、独り言です…」


なんたる失敗。
不審そうに俺を見る二人の視線が痛い…すごく痛い。

咄嗟に、手に持っていた洋菓子店の袋の中から
チラシを取り出すと読むふりをして視線から逃れる。

ご、誤魔化せたか…?

すると心地よい電子音と共にエレベーターが止まり、
緩やかなふわりとした風を立てて扉が開くと、
二人の意識がそちらへと向いた。

「あ…ほら、着いたよ!」

「あ…うん…」

ショートの子の到着の声に
思考は中断されて一瞬ビクリとする。

どうやらロングの子も同じだったようで
肩を小さく震わせつつ返事をするのが見えた。

俺の方は日頃のポーカーフェイスの賜物か
なんとか気づかれずに済んだ様だ。

先に彼女たちを降ろし、様子を見ながら自分も降りると、
廊下を逆側へと進み、俺達の部屋の玄関が
ギリギリ見える場所で待機した。

壁へとピタリと張り付いて、息を殺して様子を見る。
なんだか悪いコトでもしているみたいだ…

廊下は暗いせいか、俺の姿は見えない様で
彼女たちはそのまま玄関前へと足を進めた。

「こんばんはー!」

「こ、こんばんは…」

チャイムを鳴らし一呼吸置いた所で、
わざと元気の良さそうな声で挨拶するショートの子。
ロングの子は萎縮して、それにつられるみたいに挨拶する。

重たい扉はそれと間髪入れずに開かれ、
キョトンとした様子の陽介が
相手も確認しないまま出て来るのが見えた。

陽介…お前は…なんですぐ開けるんだよ…
いつも相手の確認だけはしろって言ってるのに…。

俺が日頃の様子を思い出し頭を抱えつつ独りごちていると、
陽介はチャイムの相手が俺だと勘違いしていたのか
違う相手がいたことに驚いた様に目を丸くして言った。

「悠…じゃない…え? えっと…ゴメン、誰だっけ?」


さすがガッカリ王子。

クリスマスの夜に、しかも女の子がだ。
何か用事があって来ただろうに、
ソレに向かって誰だっけ? って…

痛恨の一撃過ぎて、俺から見ても気の毒なくらいだ。



「や、やだなー! おなじゼミじゃない!」

「あ、う、うん…花村くんとは話したことは一回くらいしかないけど…」

「ば、バカ! アンタまでそんなのいま言わないの!」

「で、でも…」

「いやいや、ちげーって…」

「「え?」」

陽介の言葉に二人が顔を見合わせて驚くと
言った本人は不思議そうにまばたきをしつつ
ショートの子へと言った。

「俺が知らないのはそっちのよく喋ってるショートカットのキミの方
 そっちのロングの子は同じゼミの…この間入ってきた子だよね?」

「あ、はい! い、いつも親切にして下さってありがとうございます!」

「いいって、入ったばっかでなんにもわかんねーだろうし」

ニカっと笑って小首を傾げる。
ああ、なんて可愛い…人懐っこい犬みたい…いや、そうじゃなくて。

というか…なんかすごく見たことのある光景だ。

そうか…俺はこうやって落とされたのか。いやいや、そうじゃなくて。
コミュが発生しなくて良かった…いやいや、だからそうじゃなくて。

俺がどうでもいいことにブツブツ文句を言っていると
陽介がいつもの笑顔で二人へと問いかけた。

「で、今日はなんの用で来たんだ?」

「う…えっと…」

おい…こら、ちょっと待て…陽介。
お前…ここまで来て分からないのか? その言葉か?
ガッカリのガッカリたる所以か?

クリスマスに女の子が頬染めながら
夜に訪ねてくるなんてひとつしかないだろ?

俺があまりのことに驚いているとショートの子が
ロングの子を肘でつついて促した。


「この子がね、花村くんに話があるんだって…ほら、早く!」

「あ、あのあの…っ…わ、わたしと…
          …わたしと…つつ、付き合って下さい!」

勢いに押されたのか、ロングの子が
予想したよりも早く告白した。

あまりに速い展開…彼女からの言葉に俺の方が
絶句して止まってしまう。

どうしよう…もし…陽介がOKしたら…

そんな言葉が脳裏をかすめた。
だってなんの保証もないから…俺達の、この関係には。

ふらりと軽い眩暈がして足がもつれるけれど
それでもなんとか体を支えつつ、俺は三人の様子を見た。


「俺と…??」

「そう! この子、花村くんの優しいとこが
              好きなんだって。ね、どうかな?」

「え…えと…悠じゃなくて俺…」

「ゆう? って、どなたですか?」

「あ…いや、なんでもない……そうか、俺か…」


苦笑いする陽介と、不思議そうにそれを見上げる二人。

一方、俺の方はどうしよう…って、そればかり考えていて。

俺は未だかつてない程、鼓動が早くなっていて。
呼吸は荒く、同時に軽い吐き気を覚えた。

本当の所、今すぐあの場へと出て行って
彼女たちを追い払いたい衝動に駆られているんだけど
膝がガクガク震えて動けない。

どうしよう、どうしよう…って
そればっかり浮かんでは消える。

だから、ずっと俺の脳内は
どうしよう、どうしようってそればっかりで。

それと一緒に祈ることしかできなかった。

どうか彼女がフラれますように…なんて
酷いことを祈るしか出来なかった。

俺はなんて酷い男なんだろう。



俺がそんなどうしようもない状態で佇んでいる中、
陽介は目を伏せ、小さく笑うとロングの子へと言った。

「俺さ、いまスープ作っててさ」

そう言って一転顔を上げると宙を見る。
なんだろう? 珍しく歯切れが悪い。

「えー? ホント? お料理出来る男性って凄いね!
   食べてみたいー! ね、アンタもそう思うでしょ?」

「う、うん…素敵ですね、お料理出来るなんて」

「ああ…いや、そーじゃなくて…スープなんて、すげーカンタンだし」

褒められ慣れてないのか、
陽介は頭をかきながら苦笑い。

そうしてひとつ何かを思い出すみたいに
懐かしい表情をすると、柔らかく笑って言った。

「いつもさ、すげー美味いメシ食わしてくれるヤツがいてさ、
               今日はそいつの為に作ってんだ」

「え? そ、そうなの??」

「か、彼女さんですか?」

「え…いやー…『彼女』じゃねーんだけど…一緒に住んでて…」

「同棲…してらっしゃるんですか?」

「うん、まぁ…そんなとこ」

柔らかく照れ臭そうに笑う表情に
俺はぼんやりとそれを見て、途端切なくなる。


「で、今日は忙しくて遅くなるってメール貰ったんだけど、
  それならたまには俺が…って、そいつの為に作っててさ」

「いっつもすげー美味いんだ。そいつが俺のために作ってくれるメシ。
高校生の時から俺の好物とか、好きな味付けとか全部覚えてくれてて」

「だから俺いつも嬉しくてさ…いつか俺もそいつが喜ぶようなメシ、
作ってやれたらって思ってて…でも俺、料理あんま上手くなくて
                         失敗ばっかなんだ」

「それでも…もし、それに一生かかったんだとしても、
                それでもいいから作ってやりたくて」

まくし立て話す姿と、その内容に、
俺はまた動けなくなる。

今度は嬉しくて動けない。

いつの間にか膝の震えは止まっていて
どうしよう…なんて、そんな言葉は掻き消えてしまっていて。

いま俺の中は、陽介が発した言葉で満たされている。

『一生かけて、作ってやりたい。』
なんて、それは俺が一番欲しい言葉で。
でも、臆病な俺からはきっと一生言えないだろう言葉で。

高校生の時から…なんていつから気づいていたんだ?
昨日? 今日? それとももっと前から?

俺がお前の好物をなんとか見つけ出して
必死で作っている姿を、お前もまっすぐ見ていてくれたのなら
こんなに嬉しいことはない。




「だから、ゴメン。悪ぃケド…そういうことだから」

「あ…はい…」

「え、えっと…じゃあ、失礼しますっ!!」

「うん、ごめんな…」

陽介はそう言うと、申し訳なさそうで、泣きそうな表情になる。

ロングの子はその表情にグっと何か言いたげな様にするけど、
結局は何も言わずにショートの子に手を引かれながら玄関を離れた。

俺はその様子を見ていてもたってもいられなくなって、
思わず今にも泣き出しそうな陽介の元へと駆け出してしまう。
本当に何も考えないまま進んでしまったから、
交差する廊下へと出ると、ロングの子とぶつかった。

「っ…」

「あ、すみません…っ」

しまった…と思ったけれど足を止めることが出来なくて
すれ違いざまにロングの子と目が合った。

俺が何とも言えない気持ちで衝動的に目を伏せると、
廊下の向こうで陽介が俺を見つけたのか、
ワザと元気そうな声で俺の名前を呼んだ。

「っ…悠、おかえり!」

俺の姿を見つけた陽介にはどうやら彼女たちの姿が
見えなくなっている様で、玄関扉の前で
満面の笑みと共に俺を出迎えてくれていた。

「陽介…」

俺は思わず名前を呼んでしまい、しまったと口をつぐむんだけど
時すでに遅しで…はっと気がつき振り向くと
未だエレベーターに乗り込んでいなかった
ロングの子と再度目が合い、お互いにその場に止まってしまう。

「ゆう…さん?」

「………」

俺は何も言えないまま彼女の視線へと
詫びる様に目を伏せると、そのまま陽介の元へと急いだ。





「寒かったろ? 早く入れって…わ、わわ…ちょ…悠、どした?」

「なんでもない…っ」

陽介の腕を掴んで強引に玄関内へと入ると、
まるで彼女たちから陽介を隠す様にして扉を閉めた。

「悠?」

「なんでもない…」

陽介だけはダメなんだ。
譲れないからゴメンって何度も心の中で謝るんだけど、
俺を選んでくれたことの方が嬉しくてどうしようもない。

俺はやっぱり酷いヤツなんだろう。


「ど、どした? 悠? お前、顔真っ赤じゃんか!」

「うん…」

「悠? なんか嫌なことでもあったのか?」

「いや…逆」

「は??」

俺の言葉に陽介が不思議そうに声を上げた。
大混乱の俺はどうやって表現したらいいのか分からず
持前の言霊級もどこかへ行ってしまい黙りこくってしまう。

話し出す様子のない俺を見て陽介は
眉をヘの字に曲げ、呼吸を荒くすると言った。

「……俺には言えねーのか?」

「え? 違っ…」

「だって…お前、変じゃんか…」

「それは…」

上手く言葉に出来なさそうだったけれど
俺は苦笑いしつつ言った。


「……スープを作ってくれてるみたいで…俺のために…」

「おう、そうそう! って…へ? なんでお前それ知って…」

俺がそう告げると陽介は嬉しそうに乗ってくるけれど
はたと気が付いたのか、暫くの沈黙の後、
目を見開きつつ声を上げた。

「お、おま…聞いてたのか!?」

「…うん…ごめん、聞いてた」

「ど、どこから!? どこまで!?」

「…最初から最後まで」

「うそぉぉぉぉぉ!? は、恥ずかしい…っ」

途端、フローリングの床に突っ伏して
じたばたする陽介をみて俺は笑う。


「俺は嬉しい」

「は?」

「うん、俺は嬉しい。ありがとう、陽介」

「う…どういたしまして」


真っ赤な顔をしつつ
くれた言葉はやっぱり嬉しくて。

俺やっぱり、きっと物凄く酷いヤツなんだろう。

愛らしい女の子がクリスマスに失恋したっていうのに、
俺が嬉しいから嬉しいなんて…本当に俺は度し難く
誰よりも酷いヤツなんだろうけれど。

「陽介、小さいけどケーキ買って来たんだ」

「おお! マジか!?」

でも本当に譲れないから。

この笑顔と一緒にいられる権利を
持てているうちは絶対に誰にも譲る気はないから。

だから酷いヤツでも、なんでもいい。

「ただいま、陽介…メリークリスマス」

お前の傍が俺の幸せ。
だからどうか、いつまでも
俺の傍がお前の幸せでありますように。






一大告白&大失恋から数分後、エレベーター内で
友人が恐る恐る聞いてくる。

「ね、ねえ…もしかして今アンタがすれ違った人って
 さっきの例の人? どんな人だった? 背高かったみたいだけど?」

「え…えっと…」

どうやら友人からは彼の人の姿は見えていなかったようだ。

部屋の中へと消えてしまったその姿と、
申し訳なさそうに詫びてくる綺麗な灰色の瞳を思い浮かべ
ぼんやりとしたまま言った。


「すごく…綺麗な人だったよ」

「あーー…そっか…アンタ、可愛い系だもんね…
          綺麗系が好きなのかー花村くん」

バツが悪そうに苦笑いする友達は
気遣ってくれているようで、私の背中をバンバンと
痛いくらいに叩くとワザとらしく笑った。

「よし、今夜は飲もう! アタシが奢るから!」

「あ…う、うん…」

そんな気遣いに感謝しつつ
部屋に消えた面影を再度思い出すと
ボソリと呟いてしまった。

「うん…すごく綺麗な………男の人だった」

「え? なんか言った?」

「う、ううん…なんでもない」

目を伏せて笑うと、丁度エレベーターが到着し
私は誤魔化すように歩き出す。

せっかくのクリスマスなのに…
きっちり失恋してしまった自分に苦笑しつつ
『女同士も楽しいよね』って、隣にいる心配性の友達に笑いかけた。

今はまだ『どうかお幸せに』って言うには、
無理な笑顔で取り繕うしか出来ないけれど。

いつか面と向かって『お幸せに』って
彼へと自然な笑顔で言える自分になっている様に願いつつ。

視線で詫びてくれた、あの綺麗な人へと呟いた。

「……スープおいしいですよ、きっと」


Fin











またまたギリギリUPー!
うおーーー!!!バタバタしながら書いているので
後日ちょっと直すやも;;;;ひいい;;;;

2013.12.25 ちょっと修正スミマセン;;

冬コミの新刊がシリアスだったので
今回はちょっとはっちゃけた…みたいな(苦笑)

楽しんで頂けたら幸い。
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とりあえず、色々ダメな人。

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