Polaris

放課後の教室…疑問に思っていたことを陽介へと聞いてみた。

「陽介って自転車乗るの苦手なのか？」

「は？んなわけねーだろ！知ってんだろ！
　　　　　　俺の華麗なドライビングテクニックを！」

どうやらハンドルを握った手を真似ているのか、
手を左右に動かして得意げに言った。

「ああ、知ってる」

「だろ？」

「自転車ギコギコ言わせながら電柱に突っ込んだのを」

「わー！わー！な、なんで？！なんで知ってんだ？！それ…っ」

「見てました」

俺が笑顔で言うと、
陽介は真っ赤な顔をしてしどろもどろになる。

あの時は名前も知らない間柄だったのに
俺がそれを覚えていたのはそれが転入間もない出来事で、
かなり印象深かったから。

「わ、忘れたげてっ…」

「嫌だ」

「お、おま…っ……」

俺が即答すると、陽介は噛み付かんばかりの表情で詰め寄ってくる。
俺はそれがとても可笑しくて、笑いながらも次の言葉を紡いだ。

「なんか随分経った気がする」

「あー…だなー色々あったしなー」

「早過ぎる…時間が経つのが」

「え？…あー…そうだな…うん…」

一緒にいられる時間は、あとどれくらい残ってるかなんて
数えたくもない位きっと少ない…臆病な俺はそればっかり考えるから、
そればっかりになって心が曇る。

「でも０ってワケじゃねーし…」

「陽介？」

そう、０じゃないけど無限ってわけでもない…分ってる…でも…

「０じゃねーから！」

お前はぐっとまるで視線で駄々をこねるみたいに俺を見た。

「陽介…」

お前がそう言ったら急に心が晴れた。
驚き、目を見開いた俺に陽介は唸る。

「な、なんだよ…」

「いや…びっくりして…」

「だー！悪かったな！ガキみてーで」

「いや…本当にびっくりしただけ」

びっくりした…お前が言うと本当に無限に近い数値を叩き出す気がする。
お前は時間っていう、酷く現実的な有限を無限へと簡単に引っくり返す。
本当の魔術師みたいだ。

「いいな…それ…０じゃない、か…」

お前が言った一言だけで、魔法に掛けられたみたいに俺は笑う。

「ほら、行くぞ相棒！」

俺の表情を見た陽介は照れくさいのか
途端手を引いて早足で歩き出した。
驚いた俺が何処へ？と尋ねると
今気づいた様な表情で虚空を見上げ誤魔化す。

陽介…お前、考えてなかったな？

俺が肩を震わせて笑うと、陽介は顔を真っ赤にするけれど、
それでも繋いだ手は離さないでいてくれた。
それどころか、もっともっと強く繋ぐと、俺へと指差し言った。

「と、とにかく！今日一日、お前と遊び倒す！」

「そうだな…そうしよう」

そうしよう。そう言って、俺は笑う。
お前とこうして過ごせるのは、あと本当に少しだけなんだけど
０なんかじゃないから。

だから、時間の許す限り一緒にいよう。

「陽介、今キスしていいか？」

「お、おま…い、今はダメですー！」

途端真っ赤な表情、俺はそれを見て
また笑う…俺は陽介ばっかりだな。

「そうか…じゃあ、あとで」

お前を手放したくない…
いつか時間が来てもこの手を離したくない。

でもお前ならこの後も、距離を経ても
この手を離さないでいてくれるかもしれない。

それどころか、もっともっと強く
思い出ごと、結び繋いでいてくれるかもしれない…

そんな確証もないことばかりを考えながら、
笑うお前につられて俺も笑った。　

Fin

はなぷちペーパーに書いた
短編？主花創作でしたー。
ピクシブに上げたのにこっちに上げ忘れてた；；
スミマセン；；；；

花村はこう…ぐるぐる考えすぎて上手く伝わんないんだけど
センセイは流石のスキル(笑)で深ーーく分かってくれるんだけど
表情とかあんま変わんないから伝わり辛い…とか萌え。
（はいはい；；）

楽しんで頂けたら幸い。