Polaris

大丈夫、気づかれてない。

そんなことを毎日何度も繰り返す。
誰よりも傍にいて
誰よりも遠い人。

誰よりも俺を判ってくれる人。

だから本心は告げずに。

「陽介、ここ間違ってる」

「え？嘘？！」

広げた課題に悪戦苦闘。
ちゃんと授業を聞いてないから…。
仕草がいちいち面白くてついつい
ちょっかいを出したくなる。

「陽介、弁当食べるか？」

「お！食う！食う！」

コラ、簡単に釣られたらだめだろう？
そんなんじゃ、心配で目が離せない。
 
 

「悠！行こうぜ！」

「ああ、行こう」

笑って促すお前の姿に、自然と惹かれる。
きっとこの感情は、ないものねだりで出来てる。

俺に無いものをお前が持ってて
お前に無いものを俺が持ってる。

最初に惹かれたのは俺。だからきっと俺の負け。

この気持ちが伝わらなくていい。
こんなものが伝わってしまう方が恐ろしいから。

俺自身が丸裸にされてしまうから。

このままを続けることが出来るなら、
俺はどんなに辛くても笑うことが出来る気がする。

思いを伝えてズタズタにされるより
逃げ回ってでもぬるま湯に浸かり続けたいなんて
とても我儘だと思うけど、
でも嫌なんだよ…お前を失うことだけは。

「陽介」

「悠！」

笑って手を振って、こっちに来てくれる、
そんな姿も写真に写して持ち歩きたいくらい。

お前が笑顔で俺へと歩いて来てくれるなんて
まるで本当に夢みたいだ。

こうして並んで歩ける倖せが
とても惜しい。

あと少し、もう少し。
どうか気づかれませんように。

泣きたいくらいの気持ちが
透けて漏れてしまえばこの夢は崩壊するから。

「いくぜ！相棒！」

背中合わせに感じる鼓動。
放たれた風が全てを切り裂き、もっと先へと駆けてゆく。

ああ、いい風だ…

それを気配で追いながら息を合わせて動く。

この瞬間がすごく好きだった。
何もかもが合わさる瞬間。

生きてる感触に眩暈さえ覚える。
 

「ふうーお疲れさん」

そう言って笑顔で駆け寄って来てくれる。
俺は深呼吸をしながらそれを待っていた。

「何だよ？変な顔して」

「別に……」

少しだけ汗を掻いた様で、
袖の裾で軽く拭っていた。

死線ギリギリ…ホントはそう。
怖くて堪らない時もある。

その線の境界線にお前は立ってて
並んで走ってくれる。

きっとお前も怖いんだろうけど、
一緒に並んで走ってくれる。

“相棒”なんて呼んでくれる。

だから、俺はそれに甘えてしまう。

「陽介はさ…カッコいいよな」

「は？！な、なんだ？！それ？！」

「ずるいな…」

なんかとんでもない言葉を聞いたという風に
そのまま引っくり返ってしまうんじゃないかって位、
驚いて聞き返してくる。

俺はそれがとても可笑しくて、
にやりと笑う。

「さて、行きますか…」

「おい！コラ！」

いつも感じる背中合わせの風は
意気地の無い俺を後押ししてくれて。

いつも俺はそれに甘えてしまう。

きっとお前は知らないだろうけど、
こんな感情もあるんだよ。

ずっと一緒に…なんてとても無理だろうけれど
今は期間限定の永遠を喜ばせてくれ。

「やるな！相棒！」

ニカっと笑うその様子に、
俺も痛いくらいに笑って答えた。

伝えるつもりの無い感情に
俺は振り回されて、煽られる。

きっとこの感情が否定されても
俺はお前を思うんだろう。

もうそれくらい、重症なんだよ。

太陽のようなお前を、とても大切に思う。
だから今は、どうか誰よりも近く、
お前の傍に居させて。

Fin

とゆーわけで片思い前提～
切ない感じで書いたつもりなんですが；；
うむううう；；精進しまス；；；

陽介はベタベタに甘えてくる感覚があるんですが、
主人公は甘えてる感さえ気づかせないくらいがいいなーとか；
（なんだそれ；）
精神的な…とか；；；；；；