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【戀音ライナーノーツ】

主花で初デート話:陽介視点
初デートに向かう陽介と主人公は?
2013年スパーク8で無料配布したコピー本です。

狙った獲物

ゲームセンター

ベタ惚れ

な、感じで。
いってらっしゃいませ(*´∀`*)ノ



拍手[6回]













狙った獲物が取れたのは、たったの一度だけ。
いつも目の前を通り過ぎていく。
手が届かなかったり相手にされなかったり…だから
いつも気がつくと飛び出してしまうのかもしれない。
俺が狙った獲物へと。

「ぬああ!」

「陽介、もういいだろ? これ取れないって」

「むうう! まだまだ!」

沖奈駅前のゲームセンター。
俺はギャラリーが取り囲む中、必死の形相で
クレーンゲームの筐体(きょうたい)へと向かい何度目かのトライ。
でもなかなか目的のぬいぐるみは取れなくて、そんな俺と
周りの様子を見た悠は一つ溜息を吐くと言った。

「…大体、陽介は考えないで手を出し過ぎなんだよ」

「ぐぐぐ…じ、じゃあ…悠! お前やってみろよ!」

珍しく自信なさげに視線だけで返してくるから、
俺は『テキトーに』とか『やるだけやってみろ』的な
ことを言って、半ば強制的に悠を筐体(きょうたい)へと向かわせた。

「あんまりやったとこないんだけど…お前がそう言うなら…」

やっぱり自信が無いようで。ブツブツと返してくる。
自信がないなんて珍しいっつーか、いつもならやる気だけは
満々で『全力で頑張らせてもらう!』とか言いそうなのに…。

周りでなぜだか黄色い声援が飛び交う中、渋々向かう筐体(きょうたい)。
長い指で掴んだ硬貨を二枚、投入口へと音を立てて入れると、
流れる様な動きでスティックを握り、操作し始める。

そして…十秒も掛からないうちに、目的の獲物が開口部へと
落ち、筐体(きょうたい)が賑やかな効果音を立て設置されたLEDライトが
『おめでとう!』の電子音声と共に七色に光った。

盛大な拍手と共に去るギャラリー、残ったの俺達二人だけ。

― 捕獲完了 ―


「……ごめん、捕れた」

「なんでぇぇぇ?! は、早過ぎんだろー?!」

途端叫んだ俺を見て、あまりにも簡単に獲得してしまった
ことに気づいたのか、悠はなんだか申し訳ない様な表情を
しつつ獲物を取り出すと、うやうやしく俺へと差し出した。

「陽介へ、プレゼントです」

「ば、バカ…いらん!!」

「え? 欲しかったんじゃないのか?」

俺が反射的に拒否ると、悠は驚いた様に動きを止めた。
それを見た瞬間『しまった!』と内心舌打ちするんだけど
俺の中身の様子を知ってか知らずか、悠は次の獲物を探して
視線だけ動かすと俺へと聞いてきた。

「そうか、これじゃダメか…じゃあ、次は何が欲しいんだ?」

「え?…欲しいもの? え、えっと…」

別に何も欲しくない、しいて言えばお前との時間…みたいな。
そんなコトを考える自分に気づいてまた自分へと舌打ちする。


悠とこういう関係になって、しばらく経った放課後。
お互いに時間の余裕も無いまま過ごしていたけれど
たまには…ってことになって沖奈までの短距離ツーリングと
称して、その…初デートってのに挑戦してみた。

でも悠にはあえてその件には触れずに来ていて、
『新しいゲームが稼働したから付き合え!』なんて
言い訳みたいな理由で連れ出していた。

もちろん俺としては初デートのつもりなんだけど、
初デートだ! って息巻いて、変な空気になったら嫌だし。
つーか…実際は、どうしたらいいのか、全く分かんねーし…。

「陽介、どうした?」

「え? あ、ああ…つ、次! えっと…ほら、あの格闘ゲーム!」

「ああ、あれか…」

盗み見る横顔はいつもと変わりなくて、ちょっと悔しい。
ちょっとくらいはさ、緊張とかして下さいよ…悠さん。

そんな俺が情けなさに唸ると、悠はいつもと同じ仕草で
俺へと笑いかけるから逆に俺の方が緊張でうつむいてしまう。

やっと二人だけで出掛けられた嬉しさがなんだかこそばゆい。
そりゃさ、いつもみんなとっていうのも悪くないんだけど、
やっと俺の…になったんだから、ちょっとくらいは
独り占めさせてくれてもいいと思うんだ。
相棒の周りにはいつも誰かがいるから……。

でも、そんなガキみたいなことを考えて忙しい中、
呼び出していたなんてとても言えなかったから俺は本人にも内緒で、
お前を独り占めってのを満喫中。

なんか少しズルい気もするけど……ちょっと位いいよな?

そんな浮ついた感情を振り払うみたいに俺が筐体(きょうたい)を指差し
『せっかくだし対戦しようぜ! 悠はどのキャラにする?』
なんて我ながら不自然に誘うんだけど悠は嫌がる様でもなく
ただうなずくと、迷わず目的の筐体(きょうたい)へと歩き出した。

あれ? なんか悠ちょっとおかしくねーか?
いつもと少しだけ違う様子に唸るけど、俺は決定的な違いを
見つけらないまま…今度は逆に悠の方が俺を視線で促した。

「じゃあ、俺はこの日本刀持ってるキャラクターで」

「なんだよ…悠、こっちでもそれかよ~ダメだなー」

「陽介だって、クナイ持ってるキャラクターじゃないか」

俺が浮ついた感じで進める会話に、少し違和感を持ったのか、
悠が形のいい眉をしかめるとこちらを見返してくるから
俺は誤魔化すみたいに苦笑いしつつ答える。

「ま、まぁな…ほら、始めるぞ!」

空気や感覚がいつもと違う…やっぱりなんだか変な感じだ。
再度おかしさを感じたが、やはり俺は核心が持てないまま…
筐体(きょうたい)へと硬貨を入れ二人向かい合って座る。
その途端、悠に近寄る人影が悠の肩を叩いたのが見えた。

「あのーすみませんーー」

「なにか?」

八高の女子生徒だったんだけど、筐体(きょうたい)のせいで
俺が見えていない様で…相棒に耳打ちするように近寄っていて、
その様子だけで心中穏やかでない俺が必死で聞き耳を立てていると
愛らしい高めの声で相棒へと話し掛けるのが聞こえて来た。

「あの、もしかして一人ですか?
        良かったらあっちに友達いるんで一緒に~」

「いえ、連れがいるので」

「でもでも! ちょっとだけでもいいんで!」

「え? ち、ちょっと腕を…っ」

断ったハズの悠の腕を女子が取ると、指差した場所へと
強引に連れ去ろうと腕を引っ張る。
その光景に俺は弾かれた様に立ち上がると、女子へと叫んだ。

「おい! 連れがいるっつってんだろ…っ」

「陽介…」

「悠…っ…だって俺…」

俺が声を上げた途端、その女子は驚いた表情をして平謝り
すると、そのままどこかへと消えてしまった。

残ったのはいたたまれない気持ちの俺と、茫然とした表情で立ち上がり、
そのままこちらを見ている悠で。

俺は恥ずかしさとか悔しさとか色々な感情に泣きそうになる。

「あ、あはは…これがホントの『逆ナン』クマねセンセイ…」

「……助かったよ、陽介が声掛けてくれなきゃ
               強引に連れてかれる所だった」

ワザとらしく笑う俺を気遣ったのか悠が詫びてくるんだけど、
同時に余裕な表情の悠は見て、俺は反射的に毒づいた。

「あははは…お、お前はいいよなーモテるし!」

「は? なんだそれ…それを言うなら陽介だって」

「すっげーすっげーモテるし! 老若男女誰彼かまわず!
            お、俺なんかいらねーんじゃねーの?」

「陽介…?」

俺が狙った獲物が取れたのは、たったの一度だけ。
いつも目の前を通り過ぎていく。

手が届かなかったり、相手にされなかったり…そして、
もう二度と会うことさえも出来なくなってしまったり。

だからいつも気がつくと飛び出してしまうのかもしれない、
欲しくて欲しくて仕方ない、俺が狙った獲物へと。

「…ごめん、悠…デカい声出しちまって…っ」

だって、俺が狙って獲得できた獲物はお前だけだったから。
だからこんなにも、後先考えずに必死になって
お前との関係をより深く構築したいのかもしれない。

お前が好きで欲しくて仕方ないから俺だけのものにしたくて。
たとえばそれがツーリングだったり、こうやって一緒にいる
時間だったりするんだけど…お前は、ソレ分かってんのか?

「お、俺…ちゃんとお前好きだぞ?」

「うん? どうした? ちゃんと知ってるよ?」

「う、うん…だよな…はは…」

『知ってる』なんてカンタンに言うな。
俺がお前のことどれだけ考えてるかなんて、知らないだろ。

こんなに俺ばかりがベタ惚れ状態みたいで、
それがガツガツしてみっともなく思えて…苦い感傷にグラグラしてしまう。

「だから陽介は、さっき声上げてくれたんじゃないのか?」

「う…そそそ、そーだけどさ……」

そうだけど、確かにそうなんだけど。
考えるほど上手く次が続かないから唸りながらうつむくと、
悠が俺の手を取り、柔らかく指を絡めて繋いでくれる。

「え…っ…悠?」

「ん? 嫌か?」

「べ、別に嫌ってわけじゃねーけど、ちょっとハズい…かも」

「そうか…じゃあ……」

離されてしまう? 俺が慌てて繋ぎ直そうと指を動かすと、
そんな俺の心を読んだみたいに悠はさらに指を強く絡め、
繋いだままの状態で筐体(きょうたい)の裏手へと俺を連れて行った。

「ここなら誰もいない」

「え…お、おう……?」

薄暗い裏手は二人だけの空間みたいで、そんな中で触れた
悠の指先から感じる熱に俺は驚く。

俺の手はもちろん今のことで汗ばんでいるんだけど、
気が付くと悠の手も俺と一緒なんじゃないかってくらい
汗ばんでいて、更に俺の指先よりも数段高い熱を持っていた。

「悠、もしかして…ちょっと緊張とかしてねーか?」

「……ご想像にお任せします。」

「だー! ちゃんと言え! わわ、わかんねーし!」

「……緊張してる。初デートだしな…
          いくら俺だって緊張くらいするよ?」

「う…おう…って、おま…初デートって自覚あったのか?!」

「まぁ…それはそれは…陽介が必死の形相で誘ってくるし? 
           あんな顔されたら俺だって意識するな」

「な?! ば…そ、それは…」

なんだよバレてたのか…俺が真っ赤になって顔を上げると
逆に悠は小さく溜息を吐いて目を伏せた。

「はぁ…でも、なんか失敗したかもな……」

「は? 失敗? な、なんだよそれ…っ」

失敗? もしかして今日の俺に呆れてもう嫌になったとか?

よく聞く、初デートで別れちまうカップルとか? わー!
嫌だ、ダメ、ゼッタイ! ダメダメ! ワンモア頼んます!

そんな大混乱の俺を尻目に悠はポツリとこぼす様に白状した。

「…いいトコ見せたくて、頑張ろうと思ったんだけど…」

「は? いいトコ?? だ、誰に???」

「もちろん、陽介に」

「は? ばっ…そそ、そーいうのは…もっと違う誰かに…っ」

「誰に?」

「え? 悠???」

なんだか少しだけ語尾を強くして悠が俺へと詰め寄ってくる。
怒ったような表情に俺は驚いて一歩下がるんだけど、
そんな俺の様子にも構わずに、悠は再度聞いてきた。

「陽介以外の誰に、いいトコ見せろって言うんだ?」

「え……ええっと…ええええ?! お、俺か?!」

「だから…お前以外、誰がいるんだよ…」

俺が声を上げると悠は今度こそ呆れた様な声を出すんだけど、
何かを考えたのか目を閉じると、深く息を吸って答えた。

「緊張もしてるし、お前にいいトコも見せたくて俺なりに
     頑張ってるんだけど…良くなかったか? 今日のコレ……」

「そ、それは…」

「もう、俺と出掛けるの嫌になったか?」

「そ、そんなことねー…っ」

そんなことあるわけない。

お前を独り占めしたくて、こんな風になってる俺がお前が
俺の為に頑張ってくれたって聞いて、嬉しくないわけが無い。

そんな嬉しさでいっぱいいっぱいになっていると、悠が顔を
近づけてくるのが見えて、咄嗟に俺はガードしてしまった。

「…陽介、避けたな?」

「だだ、だって! げ、ゲーセンで初チューとかってヤだし!」

「陽介……それって、何て乙女?」

「お、乙女じゃねー! つーか、男に乙女ってなんだ?!」

「はいはい、可愛い…じゃなくて、カッコいいよー陽介―」

「取ってつけたように言うな!」

「本当だよ…じゃなきゃ、こんなに焦ってないしな…」

「へ? 悠???」

「あー…そうだな、じゃあ帰ろうか? 八十稲羽に
            帰れば陽介を独り占め出来るしな」

「え? お、おう……?」

どうやら今度は俺が『独り占め』される番のようで。

悠が俺を独り占め…悠からのその言葉はなんだか俺が想像
していたのとは違って、俺のよりそれは数段、物騒な予感で。
そんな予感に俺が考え込んでいると、悠は目を細めて笑う。

「とりあえず、今夜は陽介の好きなメニューにするからな」

「……お、おう…た、楽しみにしています…」


今日の成果と予定は、『初デート』に『初チュー』に。
そんでもって『初お泊り』とかって…え? 早くね? えぇ?



「陽介、本当早く帰ろう…もういいよ、ここ…」

「なんだよ、急に疲れた顔して…」

悠はその言葉に脱力し唸ると、今度は斜めに傾きつつ言った

「陽介に声かけようとしてる女子追い払うの大変だったし…」

「は? な、なんか言ったか? 悠」

「……いいえ、なんでもありません」

俺が狙った獲物が取れたのは一度だけ…なんだけど…
こんな素直じゃない俺だから俺がお前にベタ惚れなんだってことに、
お前がちゃんと気づくのはきっともっと先のことで。

逆にお前が俺にベタ惚れだって、俺がちゃんと気づくのは…



「早く帰って、陽介独り占めを満喫しようと思います」



多分、この後すぐだと思う…。           





Fin

















出来たら個人誌!とか思ってたら
全然間に合わず;;大急ぎでコピー本!ってなってしまった作品;

意外とセンセイも頑張ってんだよ!
顔に出ないけどさ…(笑)みたいな。

でも陽介は結構コロコロ表情が変わるんですが、
実のところ隠すのはうまいんだろーなって思うんですよ。
劇中見てるとホントそう思う…(苦笑)
あのストレスぱねええええええええ!!ってなった(笑)

私だったら『うおおおおおおおお!!』とか言いつつ
ゴロゴロ転がる…(なにしたいんだお前は;;;;)

そんな二人がお互いドキドキしながら
デートしてくれたらこの上ない幸せvvvvv

楽しんで頂けたら幸い。
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